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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

美しすぎる底辺・YOSHIOくんは友達に流される。

作者: 藤間 咲来

こちらは短すぎる短編ですが、人は一番怖いんだよね。と思いながら書いたものです。

数分の間、楽しんで頂けると幸いです。

「もう疲れた・・・」

YOSHIOは思った。

それもこれも友達に仕組まれた罠だとも知らずに、それまでの彼女を傷つけるだけ傷つけて、あたかも自分は悲劇のヒーローですと言わんばかりの、悲壮感たっぷりに「恋人同士」と言う舞台を降りる。


しかしそれは偽り。

古くからの友人が用意したレールに乗り、自分を正当化して逃げて回った結果、個人で会話をしてこなかったゆえのツケが回ってきたのだ。


一番の被害は誰でもない。彼女である。


しかしそれを保身にしか走れないYOHIOは理解できない。

友人はほくそ笑んだ。


「YOSHIO、もういいじゃん?俺がいるしもう女の子なんて見ないで・・・」


YOHIOは女癖が悪かった。

海外の美しすぎる美少年アーティストとして日本に上陸したはいいけれど、結局は実力不足。

鳴かず飛ばずで努力も踏ん張りもせずに、おめおめと自国へ帰り、事務所の社長もしてみたけれど技量が足りず。


それは当然の事。

今まで蝶よ花よとめでられ踏みとどまりそこから頑張る事を学ばなかった人生は、天才と言われているうちはいいが、認められるには大きなレーベルに所属したならば、まずは売り込みが成功するまでレーベルの意思に従うべきだった。


従えば成功した先で自由な活動が待っていたのにも関わらず、1/3も実らぬうちに大きなチャンスを袖にした。


その性根は腐りきっており、日本での活動中にはアイドルなど自分が気に入った女性をつまんでは、毎日の荒れた性生活にもYOHIOと言う人物がどんな人だったのか現れていた。


もはや日本に女あさりに来ただけである。


それを友人の律……通称りっちゃんはずっと見守って影から支えていた。


最初、本気の彼女を作った時は衝撃を受けた。

決して誠実ではなかったYOHIO。

今までの食い散らかして来た女性関係とは真逆の、一途で健気な姿を見ると律はとてつもない絶望感に毎日浸った。


それが好転したのはいつだったか。


その彼女がよもや自分にYOSHIOへの相談を持ち掛けるのだ。


「こうした方が断然かわいらしくてYOSHIOも惚れ直すよ」


何気なくYOSHIOが嫌がる事をあたかも正しいかのように、半分嫉みで嘘ついて言ってみれば、彼女はそれをそのまま実行した。


彼女は紛れもなく人を信じやすい、純粋無垢で、YOHIOの荒れた女性関係に多大なる澄んだ空気を持ち込んだ、正しく素敵な恋人だった。


律は自分が男だと言う事を今までは憎んだことは無かったが、それはその場限りの女性あさりだと知っていたからだ。

この彼女は違う。

これではYOSHIOも本気になるのは当然の事だ。


律は焦った。

YOHIOに彼女の行動についてを少し事実と捻じ曲げて報告し、自分がそう示唆したなど思われないように気を付けて2割程の真実を織り込みながら、言葉巧みに彼女の評価を落とし始める作戦を開始した。


YOSHIOも純粋な人間だ。

良くも悪くも全て周りの人間の言葉を100%信じてしまう結果、彼女への疑心が生まれた。

彼女の行動が悪い結果を生み、律の8割虚言の追情報で悪い印象が上乗せされ、彼女がそこに気が付いて弁解しようとした時には時すでに遅く。


YOSHIOの心が彼女から離れ切った後だった。


「YOSHIO、もう女の子は充分じゃない?やっぱり一緒に居るべきは君の気持ちを真に理解できる俺とか家族なんだって。」


少しでもいい。

自分を見てほしい。

必死になりふり構わずYOSHIOを手に入れる為に頑張った自分を、自分で褒めてやりたい。


この、真っ白な肌に美しい顔と純粋な心は、自分が持って初めて輝くのだ。


そう信じて疑わない律は背中に回されたYOSHIOの手に心地よさを感じる。


「りっちゃん……リツ…もう、誰を信じていいか誰を疑えばいいかわからない。でも……君だけは僕の味方だって…信じてるから……」

「ああ……当然だよ。俺がYOSHIOに悪い事、今までしたことあった?」

「ん……ない。ない…いつも助けられてばかりだよ…ありがとう…一番大事な友達だ」

「……ね、YOSHIO?一番の友達も良いんだけどさ、俺、こんなにいつも疲れて弱るYOSHIOを見ていられないよ。決められた期間で仕事を成功させないととか、家族を思う気持ちはわかっているからさ……

そんな全部をひっくるめて俺が支えるから恋人にしてくんない?」

「えっ……」


驚いて顔を合わせた瞬間、優しくじんわりと労わる様に柔らかい口付けがYOSHIOの唇に降って来た。


静かに交し合えば、ほろりと一筋の涙がYOHIOの頬を流れる。


律の作戦は成功した。

純粋無垢な彼女には申し訳ないけれど、YOSHIOの心を夢中にさせたのが悪かったと、相手が悪かったのだと思って割り切ってくれると良い。


そして今後も弁解しようとして余計にYOSHIOに嫌われると良い。


コイツは絶対に渡さない。






御閲覧頂きありがとうございました。

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