第43話 先輩が殺された理由
第参話 異世界
「ここが異世界か.....」
日本とは明らかに違う風景。いかにもファンタジーって感じだ。
「何をすればいいんだろう?ただ、過ごせばいいのかな?」
そういえば生活費はどうするんだろう。どうやって生きていくんだろう。わからないことが多く、とりあえず、誰かに聞いてみることにした。
~
え~、遅れました。すいません。何でもします。(絶対何も要望とか来ないし。大丈夫だろ。)
「そんなことは絶対に賛成しない。そんな.....非人道的な行為はな.....」
俺は、怒りを込めて訴えた。
「非人道的?何を言っているんだ?死にたいと思っている奴に死場を提供するのが?笑わせるなよ。箏ノ葉。死にたいと思っている奴に無理やり自分考えを押し付け、生かす。その方が俺はよっぽど非人道的だと思うがな。
人は生きることが幸せなのではない。生きようとすることが幸せなんだ。それをお前は学ばなかったのか?生きる理由がない奴は、生きているのが苦痛なんだよ」
生きるのが苦痛か.....
「生きていると何かいいことがあるかもしれないだろう?死んでしまえば何も起きない。何も変わらないんだよ。水守、そう思わないか?」
「だから、それが自分の考えを押し付けているということなんだよ。生きていればいいことがある?それはいつだ?」
「.....いつかだ」
いついいことがあるなんてわからない。だから、生き続けるんだ。
「いつか.....そんな曖昧な時期で、本当に起きるかどうかわからないいいことを待てと?滅茶苦茶だろう」
「何か起こるかもしれないだろ」
そんな淡い期待ぐらい持ったっていいじゃないか。
「確かに何か起こるかもしれない。ただ、必ず起こるということではない。違うか?」
「.....違わない」
こいつと、水森と話すのは苦手だ。最終的に丸め込まれてしまう。そして、そんなすぐに丸め込まれてしまう自分が嫌いだった。まあ、そんな事を思っていても何も変わらないのだが.....言い返すことくらいあってもいいだろう。
「けど、政府が自殺する場所を提供。というよりも、殺すのはおかしいと思うんだが?それだと、まるで自殺を推奨しているみたいじゃないか。」
こいつが、提案、企画し進めているのは対抗薬を販売し、それを購入した人が望めば、死場を与えるというものだった。俺は、そもそも対抗薬を販売すること自体に反対だったが、資源がない今、それは仕方のないことと割り切り諦めた。
「自殺を推奨か.....本当にお前は感がいいな。その通りだよ。自殺を推奨をしている。人口を減らすためにな」
ただしそれは販売だけだ。対抗薬は死ぬためのものじゃない。
.....それよりも、
「人口を減らすため。と言ったか?」
「.....あぁ、そう言ったが?」
俺の聞き間違いではなかったようだった。
「どうしてそんなことをするんだ!?」
「それは、簡単なことだろう?よく考えてみろ。わかるだろう?」
まったくわからないな?わかりたくもないな!?そんな事?
「わからないか.....じゃあ、答えてやるよ。その理由を.....」
ゴクリ.....と、そんな音が鳴りそうな感じで息を呑んだ。
「食糧の問題がなくなることで、餓死する人は前に比べてすごい数減るだろう。するとどうだ?病気による死亡が無くなっている今の死因は何になる?」
俺は、困惑しながら答える。
「.....寿命。もしくは、交通事故による即死」
妥当だろう。と、そう答えてから、あることに気づく。
「何か気づいたようだな」
「あぁ、人口が増え続けてしまう。そういうことだろう?」
「その通りだ。土地に余裕がなくなるのは火を見るよりも明らかだ。そんななか、生きる希望を失い、ただ生きているだけのやつに与える土地なんて無くなるんだ。今のうちに手を打ったって問題ないだろう?」
問題しかないだろう。だって、それは.....
「その場しのぎにしかなっていない。そんなことをしても大して変わらない。どうせ土地がなくなるのには変わりないんだよ」
この世界、地球には土地に限りがある。そして、そんな事をしても人が溢れるのを少し遅らせることしかできないのだ。すぐまた問題を抱えることになってしまう。
「時間を稼ぐことの何が悪いんだ?それで稼いだ時間で何か対策で切るかもしれないだろう?」
「それは、お前がさっき否定した、何かあるかもしれないという希望的観測だ。確実性はほぼゼロなんだよ。そんな事のために人を殺すのか?」
「何もしないよりはましだろ」
「少しの希望しかないものに人の命を懸けるのか.....そんなのだったら何もしない方がましだよ」
こんな話し合いをしていてもキリがない。そう思って、部屋を出ていこうとした。
「どこに行くんだ?まだ、話は終わっていないだろう?」
水守に止められた。
「いや、終わりだ。俺は意見を変える気はない。それは、もちろんお前もだろう?このまま話していてもキリがないんだよ」
水守は、自分の意見は絶対に変えず、押し通すタイプだ。それを今まで付き合ってきた中でそのことは学んでいる。こいつの意見を変えることは不可能だと。
そこで考えた。どうすれば、押し通されずに逃げることができるか。それは、話し合いに応じないことである。応じなければ押し通されることは絶対になくなる。そして、水守は一人で実行できるほどの権力を持ってはいなかった。
「まあ、待てよ。人の話は最後まで聞くものだぜ?」
まだ、話があるのか.....そう思ったが、極力顔に出さないように応じた。聞くだけと決めて。
「俺は、意見を変えることは絶対にない。そのことをお前はよく知っているだろう?そして、最近逃げて、俺の話に応じない。そこでだ、俺はどうすればお前が話し合いに応じるか、俺の意見をすぐに受け入れるかを必死に考えた.....」
実は、この話し合いに応じないのは、初めてではなかったのだ。そして、最近何もないと思えばそういうことだったのか.....
「ほぉ、それで考えたものは?」
感情を殺しそう問う。内心焦っているのがばれないように。
「人質だよ。お前には一人の仲のいい優秀な後輩がいるみたいじゃないか?」
後輩.....あっ、幻都のことか。今では幻都の方が賢いし、実績も残しているんだよな。だから、後輩と言えるのだろうか。
「まあ、いるな。それがどうかしたのか?」
「そこでだ、お前が俺の意見を受け入れないのならば、俺はそいつを殺す」
「はぁ!?お前、自分が何を言っているのか分かっているのか?」
それこそ、非人道的な行為ではないか。
「もちろんわかっているさ。人質がいれば、お前はこれを無視できなくなる。それで?話し合いに応じる気になったか?」
俺に、拒否権なんてないんだよな.....
「分かった。っで、何をする気なんだ?本当にあれを実行するのか?」
愚問とでも言うように即答で答える。
「当たり前だろう?」
俺も、知らない人の命よりも、知り合いの命の方が大事だと思う。そんな、クソみたいな人間なのだ、結局.....
「そうか.....もういいよ、協力してやる。っで、俺は何をすればいい?」
「そうだな.....お前には死んでもらう。実験として」
「はぁ!?」
マジかよ.....自分の命か、幻都の命.....
「さあ、どうする。後輩を見捨てるか、自分を捨てるか」
もちろん死ぬのは怖い。けど、幻都はこれから絶対に必要になる人材だ。こんなところで死なせるわけにはいかない。そんなことは分かりきっている。
「いいよ。俺が死んでやる」
自己犠牲か.....それも悪くないかもしれない。最後としては.....
「そうか。それなら、少し来てくれ」
「ちょっと待ってくれないか」
「いいぜ。遺言でも言っておくんだな」
幻都に、メールを送ろう。内容は簡潔に短く、一言で。
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『幻都、ごめんな』
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義理妹には、心配を掛けたくない。だから、あえて何も言わない。
「ありがとう。もういいぜ」
そうして、俺は一瞬で痛みを感じることなく、この世を去った。
感想やアドバイスを頂けると幸いです。




