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俺の愛するスマホがメタモルフォーゼして、女の子として世界の真理とやらを語り始めた  作者: とかふな
第1章 朝起きたら女の子がぐーすか隣で寝ていた。
9/13

第9話 セックスできないじゃん

 食堂の食券売り場前に到着した。が、ユーキはまだだ。

 こういうときどうするんだっけ。

 あ、

 そうだ、

 ケータイいじって待ってるんだったよなあ。。

 サンの方を向く。

「音楽でも聴くかい?」

  こいつ、本当俺のことわかってるなあ。

「ああ、オススメのやつを頼む」

 行きつけのバーのマスターと会話してる気分だ(行ったことはない)。やってみたかったんだよな、これ。


「はい、じゃあこれ」

 サンが何か手渡してきた。

 これは…

「イヤホン?」

「イヤホン」

「何でこれが要るの?」

「何で要らないの?」

「え、さっきみたく脳にダイレクトに…なんか、出来ないのかよ」俺はまるで未来人になったかのようなつもりで言ってみた。

「あーそういうこと? あのね、聴覚にはね、視覚みたいなスイッチング技術はまだ確立されてないから。というか、確立されないと思うわ」

 なんでだよ。

「聴覚は空気が直に鼓膜、そしてその先の耳小骨を震わせて信号にしているの。物理的に外からの刺激をシャットアウトしないと、外からの音は脳に聞こえてしまうわ」

 そっか。

「まあ、外部刺激があったとしても、本来の聴覚神経回路をオフにして、外部通信に切り替えちゃってもいいんだろうけど、そんなことできるようにしたら、街歩いてて危ない、って声が多いわけ。音が聞こえずに車にぶつかったり、とか、逆に運転してる人がそんなことしてたら危ないでしょ?」

 まあ、そうか。

「だから聴覚スイッチングは当分無理ね。技術的にも、法的にも。イヤホンとの無線通信で我慢してよ」

「また規制か?」ぶすっと答える。

「規制じゃないわ。そもそも商業化されてないから、規制もされてない。でも、敵からの音波攻撃に対抗するため、一部の国の軍隊では研究されてるとか、されてないとか」

 なんだか急に慣れた技術が出てきて、少しつまらなく思う自分がいた。不思議なものだ。


 しばらくして、ユーキが現れた。

 っておい!

 おいおいおい!

 隣の超可愛い美少女は誰だよ!!

 お前こんな彼女いたっけ!!!


 俺は女の子を視界のセンターに、ユーキを最左端に据えながら、真っ先に問うた。

「え、ユーキ、この人は?」

「あれ、初対面だっけ?リンちゃん」

「リンです。よろしくお願いします」

 あ、なんか、かしこまった感じだ。

「あ、よろしくね」そして、俺は疑問を口にする。「えっと…彼女?」

「は?」ユーキは目をまん丸にして俺を見た。

「いや、彼女かって聞いたんだけど、、」

「お前何言ってんだよ。携帯だよ」

 こいつもか。

 ついに、2人目の携帯電話を見つけた。

 いや、2台目?

 「あー、そ、そうなんだ。。。」

 俺は拍子抜けしてしまったが、その反面、話が切り出しやすくなった、と思った。

 リンちゃん。俺にとって2例目なのだが、すでにキャラが結構違うのだな、と思った。持ち主の好みだろうか?

「そ、そのことなんだけど、」

「なんだよ」

「みんな、女の子の携帯持ってるもんかな?」

「いや、みんなってことはないと思うけど。。。まあ、最近はアメリカでの生産が増えてるらしいから、価格は下がってるんじゃねーの。政府間交渉で、時限的にここ3年は関税も5%下がってるしな」

 関税とか知らねえよ…経済学部の俺より経済に詳しいな、こいつ。


「てか、お前も持ってるわけじゃん?」

「ま、まあな…」

 今日使い始めたって、感じだが。

「他に、どんな携帯があるのかな?」

「ん?どうした?」

「いや、携帯産業にちょっと興味持ってさ」

 俺は適当な嘘をついた。

「ユーキさん」

 リンちゃんが割って入った。

「ナナミ様からLINEが参りましたが」

「ん、なになに」

 ユーキはこっちを見ているんだが、何やら考えことをしている。おそらく、脳内視界でナナミって子とLINEのやり取りをしているんだろう。

「ナナミって誰だよ」

「ん?ああ、えーと、彼女」

 え?

「お前彼女いんの?」俺は素っ頓狂な声を上げた。

「彼女ぐらいいたっていいじゃないか」

「いやいや、こんな可愛い子が隣にずっといるというのに」

 俺はリンちゃんに向かって、意味のないアピールをした。正直、嫉妬半分だ。

「携帯持ったら、彼女持てない、なんて弁法はないだろう」

 ユーキのもっともな反駁だ。頭の良いやつに議論をけしかけるのは得策ではない。

「いや、でも、彼女も嫉妬しないわけ?こんな子が隣にいて」

「お前なあ」呆れた風にユーキが言う。

「携帯に嫉妬する子なんていねーよ」

 そういうものか? ただ、リンちゃん、マジで女優みたく目鼻が整ってて、黒髪ロングの清楚な子で、この子を隣に常にはべらせるユーキから愛情を受けられるか不安にならないものだろうか。

 俺はわからぬ女心を必死に臆測した。

「ふふ、私はユーキさんの携帯ですから。ナナミ様とは全然違いますよ」リンちゃんが謙遜した。可愛い。

「いや、でも、俺は可愛い子が一人いればいいと思うんだけど…」

 誰に対してかわからないが、俺は何となく純愛をアピールしてみた。が、ユースケが即座打ち消しに来た。

「彼女は彼女で必要だよ」

「何で?」

「だって、端末じゃ…」

「端末じゃ…?」

「セックスできないじゃん」

 は?何だって?

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