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俺の愛するスマホがメタモルフォーゼして、女の子として世界の真理とやらを語り始めた  作者: とかふな
第1章 朝起きたら女の子がぐーすか隣で寝ていた。
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第4話 さっきから俺はオウム状態

 夢にしては奇怪な夢と付き合わされて3時間ほど。

 喉も渇いてきたので、コンビニに行くことにした。

 「じゃ、わたしも行くね」

 え?

 「いや、お前は部屋にいろよ」

 「は? 携帯持って出かけないの?」

 それもそうだが。

 「持って、っていうかお前がついてくるわけだろ?」

 部屋から女の子と2人で出かけて、コンビニで買い物して、2人で帰ってくる。

 なんか、

 なんか俺大人になったなあ。

 面映ゆい。

 でも、なんだか思ってたのと違う。

 面倒ごとは嫌いなので、俺はやんわりと同行を拒否する。

 「何言ってのさ。持ってないと不安になるくせに。はい、早く行くよ」

 サンに促されるまま、俺はサンダルをひっかけてコンビニに向かった。


 「おい、サン」

 「何よ、おい、って。エラそーに」

 あ、いや…

 「ご、ごめん。サン様」

 「わかればよろしい」

 傲岸な携帯だ。

 「他の人たちの携帯ってどうなってるわけ?」

 俺としては、全携帯が人型化しちまって、世の中は2人組の人たちが闊歩してる……なんて事態も少し想定していたんだが、外を歩いてみるとそうでもない。

 「ハハ、ウケる」

 ウケねーよ。

 「そんなの、勝手に設定してるに決まってんじゃん。ある人はカバンが携帯だし、ある人は時計だし、ある人は洋服だよ」

 「は?」

 「は?」

 「そんなことできんの?」

 「何でできないの?」

 サンは、なんでお空は上にあるの?と小さい子に聞かれたお母さんみたいな顔を見せた。

 でも、

 できないだろ、常識的に考えて。

 「いや、スティーブ・ジョブズとか、もっと携帯の形にこだわってたと思うぞ。片手で操作できるように、とか、美しいように、とか……」

 「あんたねえ、そんなの工業製品だからでしょ?」

 「コーギョー、、、」

 「物体化して、指を動かすからそうやって形が問題になるんじゃない。今こうやって脳とダイレクトに通信してるんだから、形なんてどうだっていいのよ。別に。君って、前時代的。そのうち、ありをりはべり、いまそかり、って喋りだすんじゃないかしら」

 そんなに古かねーよ。

 「そんな自由なのかよ。じゃあ、お前、例えば割り…」

 「お前、ヤメロ」

 女の子に睨まれると心が折れる。

 「はい、サン様」

 「よろしい」

 「例えば、割り箸に化体したりもできるわけ?」

 「あんたがインストールして、クラウドに保存してる私のログデータと同期させてくれればね。割り箸だからって間違えて捨てないでよね」

 捨てねえよ。

 「でも、割り箸はなんだか窮屈そうでやだなー。記憶チップも大して積めないじゃない。あと、電池容量が少なそう。ってか充電回数やばいよね。それに食事のときに使われたら汚れるし、それでアンテナに影響出て通信品質に影響が出るじゃん。さいあくー。まあ、持ち運びは楽かも知れないけどさ……」

 サンは勝手にぼやいている。

 「そんな…なんでも携帯になるわけ?」

 「まあ、物体にはそれぞれ固有振動があるから。その振動を生かす形で電源を生成して、通信するわけ。もちろん向き、不向きはあるけど大抵のものはいけるんじゃないかしら」

 あ、そう…


 相変わらずよく咀嚼できないので、俺は会話をやめにした。

 コンビニはもうそこだ。


 …

 ……


 いや、

 まてよ。

 待て待て待て。

 俺はここで超重大な疑問にぶち当たった。


 物体にインストールして、データを同期して携帯として使う?

 てことは…


 「サン、」

 「何?」

 「その身体……誰のだ?」


 サンはキョトンとした顔でこちらを見つめた。

 キョトンとしたいのは俺の方だ。割と長めに尺を取ってキョトンとさせてもらいたい。


 「誰の、ってわたしのに決まってんじゃん」

 「いや、お前は携帯じゃないか。もし携帯機能をアンインストールしたらどうなるの?」

 「そりゃ、無理だね」

 「さっきの話からすると、無理じゃなさそうだろ」

 「いやいや、規制があるからさ」

 「規制?」

 「人体に携帯をインストールした場合は、裁判所に申し立てしないと脱接続アンインストールできないの」

 「裁判所?」

 「あ、てかそもそも人体へのインストール自体、情報通信産業省の完全監督下で行われるものだし」

 「情報通信産業省?」

 さっきから俺はオウム状態だ…。

 「そもそもの話として、携帯通信用人体ヒューマノイドは政府の管理の下独占供給だけどね。国の厳格な審査をパスして、特別に免許を与えられた特別認可法人人体設計研究所。これが日本だと全国に3箇所あって、そこが作ってるわ。で、そこで生産された人体は、携帯通信機能の教育工場インストールファクトリーに直接運ばれるから」

 「どうやって?」

 「どうやって? 質問の意味がわからない」

 「どうやって人体を作るのさ」

 「細胞分裂させればできるじゃない」

 あ!学校の生物で習ったやつだー……ってならねーな、これ。

 どうも、こいつの話はわからん。

 「昔はもっと自由だったんだけどね。記憶チップ自体はどんどん小型化されて…スクリーンの大きさは後頭葉映写技術ニューロダイレクトヴィジョンが開発されて以降問題にならなくなって…要は電源が確保できるものなら、何でも携帯電話になれる時代があったの」

 はあ…

 「でも、そうすると、アフリカとか東南アジアから女の子を買って来て、携帯機能をインストールする人たちが現れたわ」

 「え?」

 「だから、生身の、つまり人間から生まれた人間を携帯にしちゃったってことよ」

 「えええ?」

 「人間の欲望ってのはキリがないのよ。で、その人身売買を止めるために開発されたのが、人体栽培技術」

 「栽培…」

 「でもその後、過剰な生産を抑制するため、国際基準ができて、その後各国で即効立法がされたわ。だから、今はどの国でも、人体の生産、供給は国が一元化して、流通ルートは全て掌握することになっているわ。そして、加盟国同士の相互監察」

 「監察?」

 「まあ、昔は栽培された人体が兵器利用されていたから。それを防ぐため、国家間で手打ちしたの」

 「…。なんか、戦場は無人化するとかなら、聞いたことがあるけど…」

 「だって、無人機より壊しづらいじゃない。無人機と違って、通信越しに狙撃した相手が、やっぱり人間を殺しちゃったと思って、PTSDになるケースが多かったわ」

俺は唖然とした。俺の知ってる世界史と随分違う。

 「正確には、『戦場に投入されたことがある』と言われている、ね」

 「…」

 「まあ、国家機密として運用されていたから、今でも正確な情報が開示されているわけではないわ…」

 コンビニ駐車場のアスファルトが、嫌なほどに暑さを照り返していた。

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