発見
【第九章】発見
相変わらずトゥナーに降り積もる雪は多く少し暗くなると視界さえままならなくなるような日々が続いていた。そうは言っても、町へといかない訳にもいかずラースとラチカは必要な買い物を済ませる為、トゥナーの町へと来ていた。町では掲示板がありそこで町の動向や国の情報などを知ることが出来た。今回の情報は、このデンマークの周りの国々がある生き物を探し回っているということだった。
≪その生き物は国を転々として、災いをもたらし、雪を振らせ続ける恐ろしい生き物。
それを捕まえたものには金貨20枚の報奨金を出す≫
そう書かれていた。
「フン。雪を降り積もらす生き物ってどんな生き物だ。生き物にそんな非物理的な事が出来るわけがないだろ。」
と、ラースは笑いながらその記事をばかにした。ラースは現実主義者だったので、目で見たことしか信じないし、不可思議なことに対しては、笑い話にしかしなかった。それを一緒にみていたラチカも一緒に笑った。
町には綺麗に置きならべられた石の道がまたトゥナーの町の雰囲気を醸しだすかのようだった。町の人たちは馬車を走らせとても忙しそうに活気ずく様子が毎日流れていた。
そんな時、その道を渡ろうとした子どもが道で足を滑らせてしまった。もちろん馬車が行きかうところでだ。馬車は急に止まることが出来ず子どもへと向かった。
ラチカは迷わず子どもを助けるため道に飛び出した!それを見ていたラースが飛び出したラチカを止めようと手を伸ばすが、届かなかった。ラチカはそのまま走り寄り、子どもを抱きしめるが、馬車はそのまま直進してくる。ラチカは目をつぶり子どもを自分の体で守った。
ガガガガガーーグァシャーン!
物凄い音が町中に響き渡った。だが、間一髪馬車はラチカたちの横を急激に曲がりよけて建物にそのまま突っ込んだのだ。
ラチカは子どもの顔を見ながら回りが大丈夫なのを確認して
「ハァー・・・よかったわね。助かったのよ」
と、声をかけている時、ラースは走り寄り子どもを抱えているラチカの腕をすごい形相で掴み道から離しラチカに向かって怒鳴った。
「お前何をしてるんだ・・・!その子どもどころかお前まで轢かれるところだったぞ!」
ラースはラチカが本当に無事なのを知り、言葉とは裏腹にラチカを知らず知らずのうちに抱きしめた。心からラースは恐怖を感じた。抱きしめているラチカはちゃんと無事でちゃんと動いている。自分のラチカに対する気持ちを認めていなかったがラチカを失うことへの恐怖がこれほどとは思ってもいなかった。いつの間にかラチカはラースの心の中で大きな存在へと変わっていたのだった。ラチカの笑顔は荒んでいた心に染みわたり何かを思い出させてくれるようだった。ラチカの笑顔をみて抱きしめながらラースは自然と口から言葉がもれた。
「もうこんなことはするな。おれの前からいなくなるな・・・」
ラースの目はとても真剣に見えた。そんなラースにラチカは小さな声で言った。
「うれしい・・・」
町の人々がすごい衝撃音を聞き集まって来ていた。人々の注目は建物に突っ込んでいた馬車で、どんどん野次馬が増えて馬車と建物をを囲んだ。
そんな中、抱きしめ合う二人を見ていたのはニコラスと一人の見知らぬ男性だった。物凄い衝撃音でニコラスは学校から出てきていたのだ。
馬車とラチカがぶつかりそうになる場所の道には、まるで電車のレールのような馬車と同じ幅の氷が2列カーブするかのように残されていたのだった――――
【第九章】完