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ニコラスの想い

 【第七章】ニコラスの想い


 ラチカはこの数カ月、二人の兄弟に囲まれて今までにないほど幸せを感じていた。それは、ニコラスが相変わらず優しい紳士でいつもラチカを気にかけてくれたし、ラースも冷たい目でラチカを見ていたのが最近はどことなしか、前とはちがう家族を見るかのような眼差しを感じる時が時折あったからだ。

 ニコラスも美しいのにとても気さくで明るいラチカに自然と心惹こころひかれていた。いままでの辛い出来ごともラチカの笑顔が今のまま、ずっとそばで見て暮らせたらどんなに幸せだろうと考えていた。


 そんなニコラスが早朝ラチカを優しく起こして眠たそうに目をこするラチカにコートを着せて馬車に乗せ走らせた。


 「ねー。どこにいくつもりなの ?!」


と、ラチカが聞くが


 「内緒だよ」


と、笑顔でわらいかけるニコラスにラチカもニコっと笑いコートを深く被った。揺れる馬車を不思議そうにしているラチカと二人30分ほど走らせたあと二人で丘を歩いた。その先にあったのはデンマークの山々の澄みきった空気が広がった大自然だった。その日は雲ひとつないほどの蒼天で、少しづつ空は明るくなり遠くの山から綺麗な朝日あさひが顔を出し始めそれを見たラチカは


「うわぁー!」


と、驚きとてもうれしそうな顔で朝日を眺めたのだった。

 そんなラチカをニコラスは横目で見ていた。どんな大自然よりどんな綺麗なものよりもラチカの喜んだ顔をみるとニコラスの胸はギュっと苦しくなる思いで満たされるのだった。


 「ラチカ。僕はね。君を初めて見た時、この世界にこれだけ綺麗な女性がいるのだとはじめて知ったんだよ。両親を亡くしたばかりの僕とラース兄さんは強がってはいてもやっぱり寂しい思いをしていたんだ。そんな中、君の存在、君の明るさに僕たちはどれだけ励まされて来たのか分らないよ。これからも一緒にいてほしいと思ってる。そして、僕は君のことを愛してるんだ。僕だけを好きでいてくれないかい?」


 ニコラスは、心の想いをラチカに打ち明けた。そして、優しい雰囲気でラチカの言葉を待った。ラチカは朝日を見ながら少し黙ったままだったが、ゆっくりと話し始めた。


 「わたし嬉しいよ。いままで国を追い出されるように生きてきたこの身にこれだけ幸せなことがあっていいのかって本当に思ってるぐらいなの。今もニコラスにここへ連れてきてもらっていつでも見れたはずの朝日がこんなにも綺麗だなんて初めて知ったの。このトゥナーでは幸せな気持ちにしかなったことがないよ。でも、今のこの幸せが変化するのが少し怖い気がして、もうすこしこのままの三人でいること出来ないかな ?」


 それを聞いた、ニコラスは優しくうなずいた。


 笑顔で朝日を見るラチカは綺麗だったが、ニコラスは朝日の光のせいかラチカのほほが光ったように見えた。あれは涙だったのだろうか・・・


 二人は朝日を見終わり、邸宅へ戻ると玄関先にラースが立っていた。たぶん二人がいないので心配を少ししていたのだろう。二人の姿を見るとほっとしたような雰囲気で


 「こんな朝早くに、朝日あさひでも見に行ってたのか ?」


と、ラースは聞いた。

「はい」


と、ラチカは笑顔で答えたが、ラースにはラチカの笑顔が、どうしてか淋しげに映った。


「大丈夫か?」


と、ラースはラチカに声をかけた。ラチカはいつもの笑顔で


「すっごく綺麗だったんだから、今度はラースも一緒にみようね」


と、答えた。


 ラースもそう答えるラチカにそれ以上、何もいうわけでもなく三人はいつもの生活をはじめた。

 【第七章】完 


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