ラースの想い
【第六章】ラースの想い
ラースは馬小屋で馬車の準備をすませ、自分の研究に使う為の材料を買いに行こうとしていると停まっていた馬車にラチカが乗り込みラースの隣へ座った。
「!?・・・おい。お荷物はいらないんだ。降りろよ・・・」
片目を少し細めてラチカを見るラースに向かって
「ずーっと屋敷にいるのは退屈なの。たまには町にも行きたいから連れて行って」
ラースの邪魔だと言いたげな雰囲気を何とも思わずに受け流すラチカを見てあきらめたかのようにラースは馬車を走らせた。
「町に行きたいなら、ニコラスといけばよかっただろ」
「ううん。たまにはあなたとゆっくり話もしたかったの。こんな美女が一緒について行ってくれるなんて嬉しいでしょ」
と、不満気なラースをニヤニアわらいながらラチカは勝ち誇ったような顔で言うので、またラースは呆れて、あらぬ方向を見て気持ちを紛らわせた。
二人は町の買いものを終わらせその帰り道、ニコラスの学校の前を通りそうになったのでラチカがニコラスの様子を見たいと言いだして、馬車を
「停めろ!」
とラチカはラースに命令した。
それ聞いたラースはラチカの耳元で大きな声で
「はい!了解です!ラチカ様!」
と、返事を返したので、その声の大きさの驚きと耳がジンジンして、両手で耳をふさいでラチカは馬車の上でふさぎこんだ。今度はラースがしてやったりと勝ち誇る。
二人はニコラスに気付かれないよう窓の外から教室をのぞき込み中の様子を窺った。ラチカはこどもたちに優しく教えているニコラスを見てとても心が温かくなったような気がして、隣にいるラースの顔を見た。ラースはどこかしら淋しそうな雰囲気で教室を見ながら
「あいつはさ。本当は医者になりにコペンハーゲンにいく予定だったんだ。でも、あいつはバカな奴でさ。この町のこどもたちは医者どころか普通の勉強すらできない現状に見て見ぬふりが出来なかったんだろうな・・・結局この町に残って今はこうやって子どもたちに勉強をおしえてるんだよ」
と、いうラースの顔はとても愛情深く見えた。ラースはラースの方法で弟のニコラスをずっと両親の分まで見守っていてニコラスは子どもたちの為、ラースはそんなニコラスの為にこの町で留まっているのだと知ると、どうしてか自然とラチカの目から涙がこぼれた。
ラースがふとラチカを見ると涙を流していたので
「!?・・・お前、急になに泣いてるんだ ?」
と、ラースは聞いた
「ううん。何でもないよ。大丈夫」
と、ラチカは二人の想いを内に答えるのだった。
「お前ってほんと訳のわからない奴だよな。毎回俺は、お前に驚かされるよ・・・」
と、理由を深く聞くこともなくラチカにハンカチを投げるように手渡した。ラチカは目を少し赤くしながら微笑んだ。
【第六章】完