三人
【第五章】三人
とても気持ちのいい朝に、ニコラスは玄関を出て、両手を大きく背伸びをしてあくびをするのをラチカは隠れて、狙い定めたように手で固めた雪を投げた。すると気持ちよさそうに目をつぶっていたニコラスの顔にみごと命中した。ニコラスの顔に雪がついたまま3秒ほど時が止まったり、そんなニコラスを見てラチカは
「キャハハハ」
と、大笑いをした。そして、急にニコラスは雪が付いたままニカっと笑うが目は笑わずに足元にある雪をすくいあげてラチカに向かって
「ガァーーーー!」
と、言いながら反撃を開始した。ふたりは豪邸の玄関先で大笑いしながら馬鹿騒ぎを朝からはじめたのだ。また、ラチカが思いっきりニコラスへ雪を投げると馬鹿騒ぎをしている二人を見にきた真面目なラースの顔にちょうど当り、ラースも顔に雪をつけたまま、ニコラスと同じように3秒止まった。今度は三人の時間が止まったのだ。そーっと、ラチカとニコラスは一緒に顔を見合せながら逃げて行った。ラースが静かに顔の雪を払い二人を鋭く睨みつけたがふたりの姿はすでになかった。ラチカとニコラスは隠れて笑った。
ラチカはとても器用な子で亡くなった母上の機材を使い二人の兄弟の為に赤い温かいお揃いの服を作りプレゼントした。
「はい。どうぞ。この赤色の服なら真っ白な雪世界でもちゃんと目立つでしょ?これで安全よ」
と、ラチカは嬉しそうに二人に渡した。
ニコラスはラチカからもらった服を喜んですぐに着て
「すごい暖かいよ。ラチカ。本当にありがとう」
と、言って着ながらその服をまじまじと見て感心するのだった。でも、ラースは
「おいおい。こんな真っ赤な服なんて着れるか ?!普通。おれは目立ちたくないんだ。こんな目立つ服きれるかよ」
と、言いながら服をソファーに捨てるように置くいたのをラチカが見ると急に
「えーーん」
と、しゃがみこみ泣きだしてしまった。
驚いたニコラスがラチカに近づいて励まそうとするとラチカの肩は笑っていた。そして、立ちあがって笑いながら指をした。その指の方向にはニコラスがラチカへ近づくと同時にラチカが泣いて驚いて赤い服をすぐに着ていたラースがいた。それを見たニコラスもプっと笑った。
「ば・・・ばかやろう!!」
と、言ってラースは恥ずかしさと怒りで顔がその服と同じぐらい赤くなりながらスタスタと早歩きで他の部屋へ行ってしまった。その姿をみてラチカとニコラスは大笑いをした。
【第五章】完