新しい風
【第四章】新しい風
ラチカという女性の話を聞くのはとても楽しかった。好奇心にいたっては兄弟同じように持っていてラチカのように色々な国を旅する事を羨ましく思ったのでした。ラチカは日本の北海道というところから国を発ってモンゴル・ロシア・ベラルーシー・ドイツと渡ってきたという。それぞれの国の話を聞くたびに特にニコラスは心を躍らせ輝いたような目で聞き入っていた。そんなニコラスを見るとラチカはとても楽しそうに笑いながら話さずにはおれなかったのです。そして、そんな笑顔がとても綺麗で、ニコラスはラチカから目をそらしてしまう事が時々ありました。
二人の近くでラースは、どんな時も冷めたような目で話をウィスキーを飲みながらソファーに座り聞いていました。
ニコラスはラチカにずっといてほしいと思い次に旅に出るまでの間はここに留まるように話した。ラチカもニコラスと無口ではあるが時折、優しい目をみせるラースに好意とまではいかないが、もう少し一緒にいたいと思いその言葉に甘え、小さくうなずいた。
三人で暮らし始めて毎晩のようにニコラスは優しく話をしてくれる。食事は当時の生活としては豪華な食事をふるまってもらい甘えるばかりではいけないとおもい家事などをラチカは手伝った。
「君はお客さんなんだから家事はしなくていいんだよ」
と、ニコラスは話したがラチカは申し訳なさそうに言いかえした。
「いいえ。そういうわけにはいきません。どうか手伝いだけはさせてください。」
それをきいてラースが横から
「そうだな。居候が何もせずに居れると思ってないだけ、君はまともだよ。まーせいぜい頑張ってくれよ。」
とても皮肉な感じでラチカに笑いながら言うと、ラチカはラースの顔をみながら何の裏もない素直なとても優しい笑顔で
「はい」
とだけ答えた。ラースはそんな笑顔を向けられて笑っていた顔が濁り――フン!――と言いながらラチカを睨みつけ別の場所へといってしまった。
そんな兄を見てニコラスは、またか、しょうがないなーという顔でラチカに呆れた顔をみせながら軽く両手を横にあげた。ラチカも理解して頬笑みながら小さくうなずいた。
ラースは人とうより女性に対して偏見のようなものを抱いていたので、ラチカの笑顔をみせられて何故なのか苛立ちを覚え昼からお酒を飲むのだった。
しかし、弟のニコラスはラチカの顔や身形は母とはまったく違っていたのに、何故かラチカの笑顔をみると死んだ母を思い出してしまうのでした。兄のラースも同じように感じたのかもしれないとニコラスは少し考えた。
【第四章】完