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 【第二章】影


 時は流れ、二人の兄弟は、立派な青年へと成長を遂げていました。弟のニコラスは医者になることを夢にしていたのですが、貧しい子どもたちの多いこの国に、教師の数はとても少なく、教育を受ける事ができないことで、トゥナーの町もどんどん衰退すいじゃくしていく現状を考えて、教師へとなっていたのです。たとえ、学校があってもそのほとんどは、家の手伝いのため、勉強をさせてくれる家は少なかったのです。ニコラスは、貧しい子でも、もちろん差別することなく受け入れ、また、ひとりで学校の教師をしているので、生徒の年齢は様々でした。

 そして、相変わらず、このトゥナーには、雪が多く、人々の悩みのたねだったのですが、兄のラースの発明で、トナカイにそりを付けるなどの工夫をし、運搬うんぱんや移動を短縮たんしゅくさせるのに成功していたのでした。ラースは目立つ事が嫌いで、あまり人との関わりがない鍛冶屋かじやという職をしながら、家でも発明をして、物理学を勉強していきました。

 二人の兄弟は、町では有名な貴族の青年で、とても凛々(りり)しく紳士的な風貌ふうぼうから多くの女性からの話もあったのですが、特にこれといった女性はいなかったのです。ニコラスはこどもたちの為に忙しく、ラースはそういう事に関しては、どこか冷めた目で見ていたからでしょう。それは、父親のことが原因だったのかもしれません。


 優しいニコラスは毎年この寒い季節になると、特に町は寒さの為、貧しい暮らしを強いられてきたので、一番弱い悲しい想いをしている子どもたちへプレゼントを贈っていたのでした。

 ラースは、ニコラスから無理やり子どもたちにおくるための玩具おもちゃを作るようにと言われ、仕方なく作りました。仕方なく始めた玩具おもちゃ作りでも、ラースの腕は確かで、とても玩具の出来は良く、子どもたちはとても喜びました。だが、悪い事をするような子どもには、ラースは怖がらせたりしていたので、毎回ニコラスから怒られたいました。


 そんな二人の働きを横に、貴族の活動の為、隣町の舞踏会ぶとうかいに出席しえた父は、母を連れて、夜にトゥナーへと帰るのでした。


 その帰り道――――


「ご主人様。大変です。夜盗です!!」


と、使用人が馬車の中にいた二人に伝えるのですが、逃げれるわけもなく、父と母の乗った馬車を夜盗が襲いかかったのでした。



 全ての所持品も二人の命も奪っていったのです。



 次の日、両親の馬車を夜盗が襲ったという報告が、二人の兄弟に届きました。二人はひどく落ち込み、兄のラースはくやしそうに言いました。


 「父はいい・・・あの人は自分勝手に生きてきた奴だった。でも、母さんは違う・・・いつも我慢をして、何も言わず生きてきた人だ。そんな母さんがどうしてこんなめにあわなくてはならないんだ・・・」


 弟のニコラスは兄の肩に、グッと手をやって、首を横に振った。兄さんそういう事はいわない方がいい!とその顔はいさめているようだった。



 そののち葬儀そうぎは町の全てのひとが集まるほどの壮大さで、り行われました。ラースたちの父親は、町一番の貴族であったから、夜盗も待ち伏せしていたのでしょう。その恩恵おんけいをもらっていた町の人たちも、戸惑とまどいを隠せないようでしたが、粛々(しゅくしゅく)と葬儀は執り行われました。


 二人の兄弟は、両親が亡くなっても、その生活は遺産いさんのおかげで変わる事はなかったのですが、やはり母の死は二人の心の中に深い傷として残ったのです。そして、葬儀そうぎを境に使用人のほとんどを家に帰したのでした。貴族という立場は変わらずに、二人は引き継いだのですが、自分たちで出来ることは、自分たちでやる事に決めたのでした。


 この屋敷で、血のつながりのあるのは、お互いに兄弟だけになってしまいました。弟のニコラスは、二人の事を思い出し涙していましたが、そんな弟のそばで、ラースはウィスキーを飲みながら涙するわけでもなく、静かにニコラスの近くで見守っていました・・・


 【第二章】完  


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