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引き寄せる運命

寒い国の物語


【第一章】引き寄せる運命


 吹雪ふぶきが荒れ振う12月の深夜に、満月の引力に引かれたのか、この寒い国のデンマークの町トゥナーに赤子が生まれた。


 「・・・・・」


 外の吹雪が激しく、突然窓が開き、風が雪と共に部屋へと入り込んだ。赤子が生まれる時に必死で看病する使用人たちは、慌てふためいていた。なぜなら、生まれた赤子は取り出されて、そのへその緒を切っても、まったく泣かずに息をしていなかったからだ。ざわめくように開いた窓を必死で閉めようとするが、なかなかめる事が出来ず、苦労していると、外に白い物が横切ったと思った瞬間しゅんかん、吹雪が少しおさまった。

 産婆さんばは、赤子の両足を片手でもち、赤子を逆さに宙吊ちゅうずりにした後、強くお尻を叩いたが、まったく反応がなかった。すると赤子の周りが白い冷気のようなまくに包まれそのまくが、赤子の口から吸引きゅうしゅうされたかのように入っていくと、急に赤子が泣きだした。


「ぅおぎゃぁーぁあー」



 産婆は落ち着いて、お湯と清潔せいけつな布で赤子のすわってない首をしっかりと慣れた手つきで持ち、体を綺麗に洗いおとす。そこへ、上着を脱ぎ捨て綺麗な成り立ちの若い落ち着いた風貌ふうぼう男爵だんしゃくが、産まれたばかりの我が子を少し強引で、ざつ産婆さんばから赤子を取り、胸へと抱きしめた。


 「お前の名前はもう決まっているぞ。名前はラースだ」


 ここに12月ラースが誕生したのでした。


 それから5時間経ち、二人目の男の子が産婆に抱きかかえられた。その男の子の名前は、ニコラスと名付けられた。双子だったのです。



 このトゥナーという町は、ドイツとデンマークの国境近こっきょうちかくに位置した山々に囲まれている、とても雪の多い町だった。町の人たちの交通手段となるのは、馬よりもトナカイが使われていて、雪に対する知識は多く、住宅も雪を想定した、街並みで造られていた。


 そんな寒い町の貴族の家系に、ラースとニコラスは生まれ育ち、数年と歳月さいげつを重ねていった。母はとても愛情深い女性で、二人を分けへだてなく育て、いつもいつも微笑ほほえんでいるイメージのある人だったが、父親は、街一番の貴族きぞくという、その地位をかざしながら生きてきた男で、よく出掛けると言っては、女の所へ行く姿をラースは心からさげすんだ目で父を見ていた。逆に、弟のニコラスは素直な優しい子で、そんな大人の事情じじょうなどは知るよしもなく伸び伸びと母や兄に囲まれながら育った。ふたりは双子ではあったが一卵性いちらんせいではないので性格も顔も違い、ラースは少し吊り目でキリっとした顔立ちで、無口だからでしょうか、何故か暗いイメージのする子なのに対して、ニコラスは性格が温和おんわで、目がとても優しいしく、他人にたいしても尊敬そんけいの念を忘れたことのない、明るい子でした。

 二人の兄弟は、とても頭がよく、ニコラスは勉強が好きで、将来は医者か教師になることが夢になりました。兄のラースは物理学などが得意で、自然の法則などに興味を持ち、よくオモチャなどを発明したりしながら物理を楽しんでいたのですが、人の行動心理もわかりすぎるほど、分ってしまう為、世の中にたいして疑心暗鬼ぎしんあんきおちいくせが多々あったのです。そんな時、弟のニコラスは、笑顔をラースに向け兄の気分を変えようとしてくれるのでした。ラースにとって、人としての大切なものを信じさせてくれる存在は、母と弟だけだったのです。ニコラスに対しても、ラースの態度は表面上冷つめたくはあったのですが、弟のニコラスは兄想いの良い弟で、いつもラースのことをしたっていたのです。


 【第一章】完  


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