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小さな魔王様  作者: ひなたぼっこ
第1章 勇者の章
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第6話  国王の余裕

本当は豚さんではなくて、もっともっと魔王様を書きたいのですが残念ながら本格的にはまだ先になりそうです。

でも魔王が主人公ですので忘れないで上げてください。

拙い文章ですがよろしくお願いします。



 国王は満足していた。



 最初『魔王が攻めてくる』と聞いた時はどん底の気分だった。


 まず国民はほとんど殺されてしまうだろう。

 そんなことになれば儂が贅沢するための奴隷が少なくなってしまうのが解った。

 更に我慢ならないのは自分は他国に赴き魔王が我が国に飽きるまでは慣れない其処で長いこと過ごさなければならない事だった。

 自分の国ではないからいろいろ制限されてイライラするのは目に見えていた。



 だが今の現状をあえて言えば魔王を討伐することが出来たのだ。

 そして今まで口煩くて鬱陶しいと思っていた貴族を捨てることもできた。

 更に勇者となった邪魔でしかなかった騎士団長もついでにお払い箱に出来たのだった。


 これ程面白いことはない。



 騎士団長は勇者になったため他国に親善大使という名前の奴隷として売った。

 それなりの値段で売れたし、その国が勇者を戦力としてこき使おうが魔王の情報収集のため拷問しようが儂としてはどうでもよかった。

 国のことを吐き出させようにも勇者は国のことを何も知ろうとせずに剣を振るうだけの筋肉馬鹿のはずだったからそんな心配もない。


 勇者は騎士団長だったころ騎士団の中で唯一儂の言うことをほとんど聞かなかった。

 それだけでも許しがたいのにこの馬鹿な勇者は救世主だとか呼ばれて調子にのったことをしたのだった。

 今まではその強さ故に騎士になるとしたら団長として所属させるしかなかった。

 だがいつものように隅っこで鍛練しているだけなら良いものを命令も聞かないくせに調子にのる奴なんて儂の奴隷の中にいらないのである。



 勇者は魔王は「たぶん死んではいないだろう」と言っていた。

 そのため馬鹿な側近は「また魔王を討伐するとしたら勇者が必要なのでは?」と言っていたがあり得ない。

 一笑の元にそれは撤回させた。


 聞けば魔王は剣にそれ程強くないらしい。


 勇者はその強さ故に騎士団長になったが、完全無欠ではない。

 全体的に人より優れているだけで神の様だと言われるほどの剣技ではない。

 単純な切るためだけの力でいえば同じとは言わないまでも似たようなレベルまでいける者は多くいるのだ。


 ということは倒せたのは剣のおかげだ。


 確かに代々の騎士団長が持つことが出来る剣は聖剣と呼ばれる我が国の国宝である。

 確かにあれは素晴らしい業物だった。

 だが歴史があるだけで切れ味などは他の業物とそれほど違うというわけではない。


 さらに言えば聖剣に唯一付加されている聖属性もそう珍しいものでもない。

 聖職者が付加魔法をかければ一時的だが簡単に作れる。

 聖剣は勇者とは違い手元にあるし、何より勇者なんか使わなくても我が軍には強い者が多い。

 確かに一対一だと勇者にかなうものは我が軍にはいないだろう。


 だがそれが何だというのだ。

 どんな理屈をこねようと和が軍と勇者で戦えば物量的に我が軍が圧勝だった。



 そんな1人でしかないちんけな勇者と魔王が一対一で勇者が勝ったのだ。



 魔王がまた来たところで我が軍と戦わせれば被害は出るとしても圧勝だろう。

 それにまた来るとしたら『我が国を滅ぼしに』などではなく魔王に傷をおわせた『勇者を殺しに』だろう。

 だからこそ魔王は討伐したことにして国にいると迷惑でしかない勇者を他国に売った。



 もう儂を脅かすものは何もない。



 口煩い貴族も投獄した。


 あれは今まで鬱陶しかったが税制面が強く儂が贅沢するのに便利だからしょうがなく生かしておいてやったのだ。

 だと言うのにその大恩を忘れて下手に国の最後の光とかなんとかもてはやされるなんて調子にのったことをするからこうなるのだった。


 儂があいつに任せたのだから今回の手柄は全て儂のものだろうに。

 なぜ儂が称賛されないのかが解らぬ。

 確かに王宮はなくなったがそれは貴族と勇者がうまくやらなかったせいではないか。

 儂の手柄は変わらないのだからそれを奪った貴族を罰するのは当然だった。



 ・・・まぁいい。



 普段なら気に入らなかったら即刻処刑しているが今はすこぶる機嫌がいい。



 今は魔王が全く脅威などではない。

 今までは魔王に攻められるのを恐れて守りが薄くなるから大きく軍を動かせなかった。

 だがそれが一転して他国を侵略するのも簡単に出来る状況になったのだ。


 そしてちゃんと自分の周りだけ気にしておけば国の守りなんか気にせず豪遊するのも何もかもが思いがままなのだ。



「金がなくなるなら搾り取ればいいではないか。それもなくなったら侵略すればいいではないか」



 国庫が尽きると進言してくる馬鹿な貴族にはそう通達しておいた。

 何を馬鹿なことを言っているのかと思った。

 だからこの馬鹿な貴族も投獄して頭のいい側近達に言って更に税をあげさせた。

 ついでに他のうるさい貴族達から金を徴収することで以前よりずっと立派で大きな王宮を立てさせるのだ。



 そろそろ国民が自分達の立場をわきまえず反乱を起こすと側近の1人が言っていた。

 儂は馬鹿がやっと動き出したことを知りほくそ笑む。

 最近やっていなかったし丁度良かった。

 適当に軍を動かして三分の一くらいまで数を減らしてやる。

 そうやって今一度立場をわからせてやるのだ。


 儂はなんと寛大で優しい王なのかと自画自賛をしてしまう。

 本当なら皆殺しにしたい所だが奴隷が減りすぎると困るからこれくらいが妥当なのだろう。


 まぁその時の軍への褒美も国民から奪えばいいし、それで万事解決だろう。



 それが簡単に出来るくらいに我が軍は強いのだ。


 国王は全てがうまくいっているおかげで笑いが止まらなかった。



 そこに側近がニヤニヤしながらやってきた。



「・・・報告致します。性懲りもなくまた魔王がこの国に攻めて来るそうです」



 そう言いながら件の手紙を差しだした。

 国王は読みながら勇者ではなく王家なのか?と少し疑問に思いながらも不敵に笑う。



「面白い。儂も勇者になってやろうかと思っていたところだ。きっちり殺してやるとするか」



 そう言って下品に笑った。

 まぁ勿論自分が戦うつもりはない。

 まず騎士達と戦わせ魔王が動かなくなったところで自分が止めを刺すのだ。


 勇者である王・・・悪くないな。

 そう思いながら便箋を破り捨てワインに口をつける。



 今日はいい気分で酔えそうだ。



 そうやって(儂かっこよくね?)とか思いながら夜が更けていく。

 詳しく言えば、月明かりにニヤニヤした豚みたいな生物が照らされていたのだった。



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