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67、滅びすら喰らい尽くすモノ

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「そのすがた……それがほんとうのリューさま……」


「そうだ。よくここまで耐えてくれたな。それでこそ竜の血を継ぐものだ!!」


 遂にリュードヴルムは完全に姿を取り戻した。鱗は尖り黒く禍々しく見えるその姿も、ヴォラメサイアを前にすればかわいく見える。


「リューさまってかわいい……」


「それ、褒めてるのか?」


 リュードヴルムの問いかけに対してコモモは笑顔を見せると、それを最後に気を失ってしまう。


「…後は任せろ。ゼノヴィア!!」


「ったく、遅いのよ!!」


 人間の姿のまま空を飛ぶと、リュードヴルムに一発入れようと飛び込んでくる。


「殴らないのか?」


 だがその拳は寸前で止まる。


「……間に合ったから許してあげる。それに、私は戦い向いてないのよ」


「そうだな。お陰でこのザマだ」


「マジで殴るわよ!」


 そう言いながら、ゼノヴィアの言葉からは怒りを感じられない。


「……コモモとスミレのこと頼めるか?」


「分かってる。だけど、スミレちゃんはもう……」


「だとしてもだ」


 自分の眷属のことだ。リュードヴルムも分かっていた。


 それにコイツのこの顔は何か考えがある時だ。だったら私はそれを信じるだけ。


「いいわよ。だけどそのかわり約束して」


「なんだ?」


「あのクソ野郎を倒してくるまで戻ってくんな!!」


 そして、心置きなく送り出す!


「いいわね?」


「無論だ」


 リュードヴルムは倒れたコモモを預けると、互いに頷き合うと、一切背後を向かずゼノヴィアはそそくさとそこから立ち去った。


「死ぬんじゃないわよ……」


「さて、待たせたなヴェルトゥガ。いや、バル、違う、ヴォル、じゃなくて、」


「ヴォラメサイアだ!!」


「そうだ。ヴォラメサイアだ。二度と口にすることは無いらしいからな、すっかり忘れていた」


 悍ましい気配を放つヴォラメサイアを相手にしても、顔色一つ変えず全く動じない。それどころかこの状況を楽しんでいるようにも見える。


「本来の姿を取り戻したようだが無駄だったな。その姿でも元の我の力にも到底敵わなかったとを忘れたのか?」


「フッ。忘れたなそんな昔のこと」


 一切焦りを感じさせず、ついには鼻までほじる余裕振り。


「我の使命はこの世界を滅ぼすこと。何故お前達はその邪魔をする?」


 ヴォラメサイアが言葉を発するたび空間に軋みが生じるようだ。


「同族同士、叶えられるなら使命を叶えてやりたいさ。だが、お前に使命を叶えられては我らもひとたまりも無いのでな、抗わせてもらう」


 しかし負けじと発せられたリュードヴルムの気迫がそれを打ち消す。


「…それこそが運命だ。諦めろ」


「ならばその使命を持って産まれたこと、運命と共に我が後悔させてやる」


「我を否定するな…!」


 ヴォラメサイアは低く唸る。その喉奥で凝縮されるのは、純粋なる破壊の力。


「運命という名の鎖に縛られし悲しき竜よ。今、そこから解き放ってやろう!」


 対してリュードヴルムは、にたりと笑いながら顎を開く。大気が渦を巻き、周囲の瓦礫や岩石が引き寄せられていく。


「グラトニア」


 その言葉と共に放たれたのは、全てを呑み込み喰らいつくす黒き奔流。触れたものを分解し、吸収し、自らの糧へと変換する捕食のブレス。


「所詮は悪あがき。無駄だと言っている!」


 ヴォラメサイアは翼を広げ、真正面からそれを受け止めた。


「そんなこと知ったことか!諦めて欲しければ、我を倒してみせろ。出来るならな?」


「それは、こっちのセリフだ!!」


 ヴォラメサイアが放ったのは、真っ赤に燃える終末の炎。


 空を切り裂き雲を蒸発させるほどの強力な一発。


 直ぐに二つのブレスは衝突し、その衝撃波は空に巨大な空洞を空けた。


「少し期待していたのだがな、あまり美味くはないな」


「ありえない!…災竜である我の力を喰らうだと!?」


 相打ちかと思えたその攻撃を、リュードヴルムが自ら放ったブレスごと飲み込もうとしている。鱗は焼け落ち、肉が焦がしながら、その巨体はひたすら前へと突き進む。


 破壊そのものを咀嚼し、力へと変える異形の能力。これこそが暴食の座を冠する竜王であるリュードヴルムの真の力である。


「ふざけるな!我の力を喰らうなど、許されるかぁぁ!!」


 叫び声と共にヴォラメサイアの瞳はリュードヴルムを鋭く睨みつける。


「まずは翼だ」


 リュードヴルムの顎が迫り牙が閃く。


「おのれっ……!」


 ヴォラメサイアは瞬時に翼で弾き飛ばすが、暴食竜はその翼の一部を噛み千切ると、黒き血が空に散る。


「グアあああ!」


 初めて聞くヴォラメサイアの悲鳴。それはまだカタゴトのようで慣れていなかった。


「まだ足りん」


 怯んだ瞬間を見逃さず、ヴォラメサイアの頭上へと近づくと、伸び切った長い角を一本噛み砕いた。


「我の、角がァァァ!!」


 バキバキと音を鳴らしながら飲み込む。


「どうした?滅ぼすんじゃなかったのか?」 


「あり得ない…過去のお前にここまでの力は無かった筈だ!どこでその力を手に入れた!!」


「食ってるものが違うんだよ」


 その瞬間、ヴォラメサイアの周囲に無数の魔法陣が展開する。


「こ、これは……!?」


「最後の下ごしらえというやつだ」


 天と地を繋ぐ巨大な紋章が暴れるヴォラメサイアの動きを封じる。


「この程度で勝ったつもりか?……我を舐めるなぁぁ!!」


 抵抗するヴォラメサイア。その怒りは大気中を圧縮させた漆黒の槍と変わる。一本、二本、十本、百本。音速を超えてリュードヴルム目掛けて降り注ぐ。


 地面に縫い止めるようにリュードヴルムの体を貫く。


 それでもリュードヴルムは止まらない。槍を喰らい、砕き、吸収し、力へ変える。


「舐めるか。喰らうのだ」


 暴食の名の通り暴れながら喰らい続けるが、限界は存在する。


 体内で暴走する力が、鱗の隙間から赤黒い光が漏れ出す。


「まだだァァァァッ!!」


 天と地を繋ぐ紋章は、光の道となり一直線に伸びる。


 それを目標にして、リュードヴルムは自壊寸前のまま拘束を引き千切りながら、突進する。


「滅べ、滅べ、滅べぇぇぇ!!」


 ヴォラメサイアもまた、命を代償に力を一点へと集中させる。


「「「いっけぇぇ!!!」」」


 ゼノヴィアの声が、コモモの思いが、スミレの魂がリュードヴルムの背中を押す。


「うおおおおお!!!」

「はあああああ!!!」


 紅蓮と黒炎が螺旋を描き、両者は真正面から激突。


 爆発共に視界が白に染まり、音が消える。


 そして――


 爆心地に立っていたのは、片翼を失いながらも立ち尽くす勝者と、半身を焼き崩されながらも牙を剥く敗者。


「まだ、だ!……」


「終わりだヴェルトゥガ。使命は忘れて、もう楽になれ」


 爆心地の中心で、二体の竜はなお睨み合っていた。だがどちらにも戦いの意思は感じられない。


「我が、滅ぶ、のか……」


「滅ぶのではない。それは死だ」


「我は死なん……」


 不死であるヴォラメサイアにとって死とは無縁の存在。


 だがその体は確実に終わりの時を迎えようとしていた。


「命ある限り死は訪れる。我も、不死であるお前にも終わりは必ず来るということだ」


「滅びでは無く、死か……」


 感じたことの無い死の恐怖。それを悟ったヴォラメサイアの姿はどこか満足気にも見える。


 数百年以上世界を滅ぼすためだけに戦ってきた災竜にとってそれは初めて手に入れた何かだったのかもしれない。


「いずれは我もそこに行くだろう。文句があるならまたそこで相手をしてやるからちょっと待っていろ」


「ああ……負けたままではつまらんからな……」


 ヴォラメサイアは静かに目を瞑ると、その姿は黒い結晶へと変わり、それもやがて粉々に砕け散った。


ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


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