65、竜の血は怒りと共に
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「コモモ!!」
スミレがコモモを庇うように吹き飛ばすと、そのまま崩れ落ちた瓦礫の下敷きになってしまった。
「え、……」
時を同じくして、巨大パンケーキ完食間近であったリュードヴルムも突如血を吐き出し、もがき苦しみ始めた。
「ぐはっ!……そうか、イナリが言っていたのはこういうことだったのか…スミレ!!」
「スミレちゃん!!」
「スミレさん!!」
「スミレ!!」
その一部始終を見てしまったカイゼル達も血相を変えて飛んでくる。
「そんな……」
「大丈夫だコモモちゃん!」
「でも、スミレお姉ちゃんが……!」
「いいから落ち着け。オレ達が必ず助けるからよ!」
コモモの元へと慌てて駆け寄るカイゼルやランバス達。しかし、落ち着くどころかコモモの息は荒くなっていくばかり。
「ライナ!」
「はぁっ!!」
王子の命を受けライナはスミレの上に被さっていた瓦礫達を一瞬で粉々に切り砕く。
「急げ医療班!」
「そんなの待ってられない!私がやる!!」
直ぐにミレーヌは得意の治癒魔法でスミレを回復させようとする。暖かく優しい光がスミレの全身を包む。
「お願いだから、間に合って……!!」
「いやだ、いやだよ……!私を一人にしないで」
すると、スミレの前で蹲りながら涙を流すコモモの手をそっと握る。
「私を勝手に殺さないでくれる?……」
「生きてる……?」
「当たり前でしょ…。アイドルは不滅なの。普通の女の子に戻るのはちょっと早すぎる……」
「良かった…生きてる!!」
スミレは更に涙を溢れさせながらスミレに抱きつく。
「でもごめんね…」
「え、」
「名前、呼び捨てで呼んじゃって……」
「そんなの気にしてないよスミレお姉ちゃん!」
スミレらしい文句に思わずコモモにも笑顔が戻る。
「だけどアナタを守れて本当に良かった……これで和葉にもどやされずに済む……」
「どういう、こと?」
何かを悟ったようにスミレはボソボソと小言のように話し出す。
「この先、何があっても、さっきの笑顔だけは忘れちゃダメよ……だって、コモモちゃんは、」
「お姉ちゃん?……」
「いや、私達みたいにかな…かわいい子はみんなさ、涙なんかより、笑顔の方が、似合うんだか……」
途切れ途切れになりながら語ったその言葉は、最後まで残りわずかの所で惜しくも力尽きた。
これが私が覚えている最後の記憶だ。
「いやーーーーーーー!!!!」
声にもならないほどの大きな悲鳴をあげるコモモ。二度目の別れが少々の何かを破壊した。
「こんなことって……」
「嘘だろ……」
「そんな、間に合ったと思ったのに……!」
諦めず治癒魔法をかけ続けるミレーヌだったが、さっきのような暖かく優しい光は感じられない。まるで治癒魔法を体が拒んでいるようだった。
「なんで効かないのよ!!」
「退きなさい。もう人間の力じゃ無理!!」
ゼノヴィアは疲労しきっていたことも忘れてすっ飛んでくると介抱するミレーヌ達を払いのけ、直ぐに自らの治癒の力でスミレを癒し始める。
「ちょっと!」
「待って。アナタはもしかして、さっき戦っていた白竜?」
「白竜!?でもどう考えたって人間じゃ、」
「あのさ、そういうことは後にしてくれる?スミレちゃんを見殺しにしたいなら別だけど」
「「……」」
セノヴィアの殺気にも似た強烈な気迫と正論がライナやミレーヌ達の口を閉じさせる。
しかし治癒を続けるゼノヴィアも気づいていた。治癒を司る竜の力にも限界があることを。
「しっかりしろコモモちゃん!!」
「おい、なんか様子がおかしいぞ!」
「いやだいやだいやだいやたいやだいやだ……」
自分を心配している声も全く届かないまま、コモモはぶつぶつと同じ言葉を繰り返し続けている。
「こんなの絶対いやだ…。パパも、スミレお姉ちゃんも、みんなアイツのせいで……」
すると、隠していた角が剥き出しになる。
「え、」
「角!?」
「まずい……!!」
突然明らかになったコモモの正体に戸惑う一同に対し、ゼノヴィアは大声を張り上げる。
「そこから早く離れなさい!目覚めた竜の血が暴走しようとしている!」
忠告が聞こえて間もなく、コモモの体は眩い光が包み込む。
「な、何が起こってる!?」
「本当、運命って皮肉よね……」
「なに?」
「絶望が竜の力の覚醒に繋がるだなんて、笑えないわよ」
全身が纏っていた眩い光が消えてなくなると、見えてきたのは完全に変化を遂げた、コモモの姿であった。
「竜……?」
「いや、人間だろ」
「なんか色々とデカくなってないか?」
変化を遂げたコモモは人の姿を保ったまま、幼かった体は女性と呼べるだけの立派な肉体へと。
頭に生えていた角はひね曲がり、背中には名前を表すかのような特徴的な桃色の翼が。
「まさか、もう一度見れるだなんてね……その角も、その翼も本当アイツにそっくりだわ」
様変わりしたコモモの姿にゼノヴィアは感極まった様子を見せる。
「……私が、仇を討つ!!」
幼女が女性へと、凛々しく立派に成長を遂げたコモモは、覚悟を胸に、その桃色の翼を大きく羽ばたかせ、災竜の元へと飛び立っていく。
「いいのか?あの子を一人で行かせても……?」
「そうよ。いくら竜だからってあの子はまだ子供なのに」
「私だって心配よ。でもこうなったら信じるしかないじゃない。それに、あの子は激突を司る竜の娘よ。止めたって簡単に止まるような子じゃないわ!」
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