6、握手会にに剥がしは必要です
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「そうだ。一緒に王都へ向かうなら一度挨拶して欲しい人がいるんだけどいいかな?」
「あ、はい。もちろんです」
「会長!出てきてもらえます!?」
カイゼルが馬車に呼びかけるがこれといった人物は出てこない。
「あれ、おかしいな。会長!?」
「もしかしてまだ寝てるんじゃない?」
「あり得るな。あのおっさん、一度寝たら中々目を覚さないんだ」
「会長!マーケットさん!!」
マーケット?この世界には珍しい名前の人もいるものね。
「……なんです。もう着いたのか?」
あくびをしながら寝ぼけた様子で馬車から出てくる小太りの男。起きたばっかりなのか、まだ足元すらおぼつかない様子だ。
「マーケットさん!起きてください!」
「あまり大声を出さないで。耳がキーンとする……」
「紹介したい人がいるんです。ついでにとんでもない物も一緒ですよ」
「とんでもない物?…おや、君は?」
「初めまして。スミレと申します。よろしくお願いします」
「それはそれはご丁寧にどうも。私の名前は…なぬぅ!?」
マーケットは寝ぼけ眼を必死に擦りながら何度もこちらを見かえす。
「カイゼル。これは夢か?……」
「いえ、夢ではありません」
「だったらあそこにあるキラーベアーやカオススネークの素材は本物なのか?……」
「間違いありません。我々が保証します。そしてそれらは全て彼女一人の功績によるものです」
「なんと!!」
それを聞いた途端、マーケットはいきなり私の手をぎゅっと握りしめた。
「え、あの…」
「スミレ殿と仰ったな?」
「あ、はい」
「どうかあの素材全てを我々マーケット商会に買い取らせていただきたい!!」
……確かにこの世界のお金は私も欲しいところ。街に行ってもお金が無きゃ意味が無いしね。
だけど、これは素材じゃなくて食材だ。リューがなんと言うか……。
「断る!これは全て我の胃袋に入ると決まっている!」
ほら、言わんこっちゃない。
「しゃ、喋った……ドラゴンが喋ったぞ!!」
完全に目を覚ましたマーケットは目をキラキラさせながらリューを宝石でも眺めるように見つめる。
「凄い、これは凄いぞ!ドラゴンが喋るなんて、六十年生きてきて初めてですぞ!」
ついさっき同じように驚いてる人を見た気がする。
「しかもこの子はスミレちゃんのパートナーなんだよ!凄いよね〜!」
「なんと、スミレ殿はドラゴンまで従えているのですか!それならこの功績も納得ですな!」
この人、めちゃくちゃ息が荒い。興奮しているせいか、中々手も離してくれない。握手会だったらとっくに剥がされているというのに…だれか!運営さん!?
「落ち着いて会長。そのくだりはもう終わってますから」
「おっさん、いい加減にしないとお嬢さんに引かれるぞ」
カイゼルとランバスの2人がかりでなんとかマーケットを私から引き剥がした。
優秀な剥がしがいてくれて助かったわ。
「ゴホン…。失礼しました。私としたことがつい興奮してしまい、面目ない……」
「いえ、お気になさらず」
「それで買い取りの件なんですが、やはり我々にお任せいただきたい。どうか前向きに考えてはいただけませんでしょうか?」
「そうですね。私としては別に構わないんですが、リューがなんと言うか……」
「だから断ると言っておるだろうが!」
やっぱり無理よね。
「そこをなんとか!」
「フン!」
頭を下げるマーケットを見向きもせずそっぽを向いてしまう。
いい大人が頭まで下げて頼み込んでいるのだ。ここまでされたら流石に私も無下にはできない。
「リュー。ちょっとくらいいでしょ?ね、おねがい」
「ダメだ!食べる量が減るではないか!」
「でもこんなにあるんだしさ〜。お金が入ったら、そのお金で他の肉を買えばいいじゃない」
「ダメと言ったらダメだ!」
「もう……」
頑として譲るつもりはないらしい。
「それなら外側だけ売ればいいんじゃない?」
私が諦めかけた瞬間、ミレーヌの一言が状況を一変させた。
「え、そんなことって出来るんですか?」
「うん。普通はあんまりやらないけど珍しいことじゃないよ。そうだよね会長!」
「なるほど、その手がありましたな。我々が必要としているのはあくまでも皮や爪といったモンスターの素材です。それ以外の肉に当たる部分は基本的に素材としての価値は無いのです」
そっか。言われてみれば、鎧や武器を作るのには肉も必要ないもんね。
「まぁ、これほど貴重なモンスターの肉ですから、それらを別に欲しがる者や業者は山程いると思いますがね」
「だって。肉以外なら別にいいよね?」
「……本当に全ての肉をを我らに渡すのだな?」
「勿論です。我々が責任持って肉は全てスミレ殿にお渡しすると約束いたします」
「……良かろう。今回だけだからな」
リューはやや不満げながらも静かに頷いた。
「ありがとうございます!我々を選んでいただいたこと絶対に後悔はさせませんぞ!!」
マーケットは再び鼻息を荒くしながら、私とリューの手を握って離そうとしない
「よ、よろしくお願いします。あ、あのちょっと、……」
「やめろ。我に触るでない!」
まただこのお客さん。手が、手が汗でぬるぬるしてる。
「ちょっと?運営さん!?誰かー!!!」
思わず飛び出た悲鳴に似た私の叫びは森中に響き渡ったという。
そして私達はカイゼル達の手によって再び引き剥がされたマーケットと共にようやく王都へと向かうのであった。
マジでようやく……。
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