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59、ヤツが来る

閲覧感謝です!


 〈ワイルドキャット〉2号店のオープンより2時間程前のこと。


 普段から大勢の冒険者達で賑わいを見せる冒険者ギルドがいつにもまして騒がしかった。


「はーい。次の方こちらにどうぞ〜」


「そこ!ちゃんと列に並んでください!じゃなきゃ順番になって買い取りませんよ!」


 多くの冒険者達がカウンターに列を作り、数多の修羅場を乗り越えてきたであろうベテランの受付嬢達が見事に捌いている。


 しかし、ベテランの受付嬢達であってもこれだけの数を一度に相手にすることも疲労が溜まっていることが容易に伺える。


「今日もまた混んでるな」


「また待つの〜。最近ずっとこの調子だよね」


「仕方ないだろ。冒険者にとって大事な稼ぎどきだからな」


 いつものように依頼達成の報告に来たカイゼル一向。Sランク冒険者であっても特別待遇は無く、大人しく列に並んで待っているしかない。


「でもさ、ちょっと前まではこんなに混んで無かったよー」


「文句があるなら最近おかしな行動ばかりをしているモンスター達に言え」


 ランバスの言う通り、最近この周辺ではモンスター達の異常行動が問題になっている。

 普段は滅多に人を襲うことの無い大人しいスライム達も血相を変えて人を襲うようになったり、周辺では余り目撃されていなかった珍しいモンスターの発見報告があったりなど、理由は様々だ。


「文句じゃないよ。おかげで最近、杖を新しくできたもの。ランバス達だって装備を新しくしたでしょ?」

「オレ達は別に文句なんか言ってない。な、カイゼル」


 しかし、モンスターの行動が活発になるのは何もデメリットだけではない。モンスターの討伐を生業にしている冒険者達にとってはかえって好都合。これを好奇と見た冒険者達が大勢ギルドに押し寄せていたというわけだ。


「……おい。聞いてるか?」


「あ、ああ。ごめん、ちょっと考え事をしていた」


「珍しいな。お前が考え事だなんてさ」


「それってもしかして今日の晩御飯!?だったらスミレちゃんのとこで」


「違うよ」


「なーんだ。残念……」


 ミレーヌら軽くため息を吐くと頬を膨らませる。


「当たり前だろ。カイゼルは食いしん坊なお前と違って、ずっと飯のことばかり考えてるわけじゃないんだよ」


「しょうがないじゃん!スミレちゃんのお店のご飯おいしいんだから。それに私だってずっとご飯のこと考えてるわけじゃないんだからね!」


「じゃあ他のことを考えてるのか?」


「当たり前でしょ。今日はオムライスで、明日は親子丼、それに新メニューのナポリタンも気になるし〜」


「やっぱり飯のことばっかじゃねぇか!」


 何処ぞのツッコミ芸人ばりにミレーヌの頭を引っ叩くランバス。


 しかし、そんな二人のやり取りを全く気にする様子も無くカイゼルは何処か上の空だった。


「おい、ちょっとくらい笑えよ」


「え、」


「そうだよ。このままじゃ私の叩かれ損じゃん!」


 どうやら二人はカイゼルの事を思ってわざとやっていたらしい。


「ふふっ、そうだな。悪い」


「もう今度はちゃんと笑ってよね?」


「うん。でも面白かったぞ」


「ウソ。見てなかったくせに〜」


 そのことにようやくカイゼル自身も気づいたらしい。


「そんな熱心になるまで何考えてたんだよ?」


「いや、どうしてモンスター達の行動がここまで激しくなったのかと思ってな」


「なんだそんなことか。別にそこまで気にすることじゃないと思うけどな」


「だが、スタンピードの時期なら少し前に過ぎたばっかり。それがやっぱり引っかかる」


「そんなの偶々に決まってる。モンスターだって人間と同じように生きてるんだ。気まぐれな時だってあるだろ」


 確かに、モンスターにも俺達同様に意思がある。だから人間には簡単に理解の出来ないような不可解な出来事があっても不思議ではない。


 でも行動があったということは、それに伴うだけの理由があったというこだ。


「それに何かあったら、オレ達冒険者が何とかすればいいだろ。こうやって何とかなってるようにな」


「そうそう。その為に私達がいるんだから」


「そうだな…」


「ほら、そろそろ私達の番だよ!」


 結局答えは何も出ないまま気づけば時間だけが経っている。


「二人が言う通り俺の思い過ごしなのかもな。考え過ぎか……」


 その時だった。


「大変だ!!」


 一人の冒険者が血相を変えてギルドにやってきたのだ。

 全身傷だらけで、身につけている鎧も使い物にならないほどボロくなっている。


「ミレーヌ!!」


「分かってるって!」


 逸早く男のもとに駆け寄るカイゼル。ミレーヌも直ぐに治癒魔法で男の傷を癒やし始める。


「一体どうした。何があった?」


「それが、実は、」


 息を切らしている男に落ち着きは無い。


「落ち着け。もう大丈夫だ」


「大丈夫じゃない……」


「安心しろ。致命傷じゃない」


「そうよ。この程度の傷なら私でも治せるんだから」


「ヤツが来る……早く避難勧告を!」


 男は手負いのまま立ち上がるろうとするが上手く立ち上がれず倒れる所をカイゼルが受け止める。


「無理をするな。それにヤツってどういうことだ?」


 男は若干秒の沈黙があったあと声を絞り出した。


「…バレイシアの森が無くなった」


ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


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