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58、目覚めた災竜は後悔を連れて

閲覧感謝です!


「災龍の機嫌が悪くなっている」


「なんだと!?」

「なんですって!?」


 珍しくリューとゼノヴィアの息が合う。でも二人の様子を伺うにあまりいいことでは無さそうだ。


「どういうことだ。少し前に鎮めたばっかりだろ」


「そうよ。いくらなんでも早過ぎるわ!」


 柄にもない程焦りを見せるリューとゼノヴィア。


「僕にもそこら辺はさっぱり。だけど強いて言うなら原因は彼女かな」


「私!?」


 いきなり指を指されても、全く話について行けず意味が分からない。だけどいい気分ではない。


「どうしてスミレちゃんが原因なのよ?」


「彼女は異世界人でこの世界にとっては異質な存在。本来あってはならないものがあってしまったことで、起こらないことが起こるようになってしまったのさ」


 つまり私のせいってこと?よくも分からないのに私のせいにされたって困る。私だって被害者なんだから!


「そうだね。スミレちゃんはただ事故に巻き込まれただけだもんね」


「どうして私の事故のことを?」


「あれも本来起こる筈の事では無かった。でも数多の偶然が重なった結果、偶々あんなことになってしまった。キミがが異世界に来たのだって偶々の偶然が起こしたただの奇跡なのさ」


 だから!そんなこと言われたって意味が分からないのよ!この数分で色々話が進み過ぎなのよ。まだ朝よ。朝なのにもう頭がどうにかなっちゃいそう!!


 て、今でもぶちまけたいくらい。だけどやらない。どうせこう思ってることもこの男には丸聞こえなんだから。


「いいね。僕との話し方も慣れてきたんじゃない?」


 ほらね。


「だけどまさかこんなタイミングで復活するなんてね……」


「奴の目覚めるタイミングは?お前は分かってるんだろ」


「僕がそういうの答えられないの分かってるだろ?」


「知るか。いいから答えろ」


「そうそう。わざわざ私達に会いに来たってことはそういうことでしょ?」


 口を閉ざすイナリに執拗に詰め寄るリューとゼノヴィア。


「……割とすぐかも」


 無言の圧力が頑なに閉じた口の扉を僅かにこじ開けた。


「もう!僕から聞いたって誰かに言わないでよね!」


「誰かって、こんなの知ってる奴はお前しかいないだろ」


「それもそうだった」


 相変わらずのマイペースな態度に私までなんかイラついてきた。


「あの、リュー様…」


「どうしたコモモ」


「災竜ってなんなんですか?」


「それ私も思ってた。色々と言ってるけど、一体何が起ころうとしてるわけ?」


 まただ。リューとゼノヴィアが視線を合わせる。今日は妙によく目を合わせるのよね。まるで目と目で何かを通じ合ってるみたい。


「リュードヴルム達が話さないなら僕が代わりに話そうか?」


「お前は黙ってろ」


「はい。すみません……」


 静かにガンを飛ばすリューにイナリは体を丸く縮める。


「ねぇ、まだ黙ってるつもり?」


「落ち着いてスミレちゃん。別にそういうわけじゃないの。ただ色々とあってね、」


「色々ってなんなんですか?」


「だからそれは……」


「意味も分からずいきなり私のせいにされたって納得できない。そういうわけじゃないなら教えてよ!」


 これまた珍しく怒りの感情を爆発させるスミレの様子を見てリューは遂に口を開き始めた。


「災竜ヴェルトゥガ。古より世界を滅ぼす為だけに存在するという伝説の魔獣だ」


「世界を滅ぼすって、何よそれ……」


「要は暇あれば人を殺し世界すらも破壊してしまおうとするただのバカ。奴の行動に理由は無い。ただ衝動的に己の使命に従っているだけ」


 そのスケールの大きさは私の想像を軽く超えていた。


「全部話すつもり?…」


「いずれは話さなきゃならないこと」


 躊躇う様子も見せたゼノヴィアだったが、最後には頷く。


「ヴェルトゥガは数百年に一度眠りから目覚め、世界の一部を滅ぼすまで奴は進撃を続ける。これまでも幾つもの都市が壊滅に追いやられてきた」 


「竜王の座を継ぐ竜はね、代々災竜からこの地を守るのが使命なの」


「コモモ。お前の父親であるヴァルギルスも我らと同様、竜王の座を継ぐ竜であったのだ」


「パパが竜王!?」


 目を素早くぱちくりとさせながら驚くコモモ。


 竜人にとって竜王は神に等しい遥かに格上の存在。そんな凄い存在が自分のだと聞かされれば驚かない方がかえって不自然だろう。


「憤怒の座を継ぐだけあって普段から怒りっぽい奴だったわ。でも、根はどんな竜より真っ直ぐで仲間思いのいい奴だった」


「だがバカなヤツだった。その性格故に、奴は命を落としたのだからな」


「え……」


 今度は信じられないと唖然と驚くしか無かった。何より一番驚いたのはリューのその言い分だ。いくらなんでも言い過ぎだと最初は強く思った。


 でも怒りの感情がそれ以上湧いてこなかったのは、リューが薄らと涙を流していたように見えたからだと思う。


「以前のヴェルトゥガは過去と比べものにならないほど荒れていたの。竜王の座を継ぐ全ての竜が力を尽くしても完全に抑え込むことは出来なかった。だからアイツは……」


 ゼノヴィアの頬にも涙が伝う。


「ヤツは己の命を犠牲にして、手負いのヴェルトゥガと一つになることで強引にヴェルトゥガを深い眠りの中へと鎮めたのだ」


「コイツの言う通りバカなのよ。やめろっていうのに勝手に後は任せて先に行ってさ、死んだら何も残らないっていうのに……」


「リュー様達はパパのこと嫌いなんですか?……」


 一々聞かずともその答えは彼女自身が一番分かっていた。だからこそハッキリさせたかったのかもしれない。


「なわけあるか」

「なわけないでしょ」


 パパが命をかけてまでリュー様達の為に戦った理由が少し分かった気がする。


「ずっと言葉にしては無かったがな、我はお前に会えて嬉しかったのだ。何も残らなかった筈のアイツが残した最後の生きた証だからな」


「それに嫌いだったらコモモちゃんとこうやってご飯を一緒になんか食べてないわよ」


「だから改めて礼を言おう」


「「生きていてくれてありがとう」」


「リュー様、ゼノヴィア様……」


「(それは私も同じ気持ちよコモモ…)」


 だけど、なんだか急に恥ずかしくなった私はそれを私言葉にすることは無かった。


「二度とあのような事は繰り返させん。アイツの為にも必ずな」


「ええ。次こそ災竜を永遠の眠りに誘い封印してやるわ」


「でも、コモモちゃんのパパが命をかけても倒せなかったんでしょ。そんな奴とどう戦えっていうのよ……」


「いいや、方法ならある」


 そういうのは先に言ってよね。心配して損しちゃったじゃない。


「何するつもり?」


「竜神果実〈ドラゴンフルーツ〉を食わせる」


「はい?…」


 ドラゴンフルーツって私の知ってるドラゴンフルーツ?


「竜煌峡の秘境に育つという幻の果実のことよ。古の時代から災いを鎮めてくれるって伝説があるの」


「あーそっち」


「なんだ、知っていたのか?」


「気にしないで。こっちの勘違いだったから」


 なーんだ、私の知ってるドラゴンフルーツじゃないのか。そりゃそうだ。


「とにかく災竜を止めるにはもうその方法しかない」


「前回は完熟の時期に間に合わなかったから使えなかったけど今回なら間に合うかも」


 おかわりのパンケーキも食べ終えたリューは行儀悪くもテーブルの真ん中に立つ。


「ちょっとテーブルに立たないでよ(あれ?……)」


 その時私は気づいた。さっきまで目の前にいた筈のイナリがいつの間に姿を消していることに。


「(急に現れて急に消えるなんて変な人ね……)」


「時間は無いが猶予はある。我らは明日竜煌峡に向かう。スミレ、明日に備えて準備を怠るな。長旅になるかもしれん」


「聞いてないし…分かったわよ(でも明日で良かった。これで二号店のオープンは見届けられるわ)」


 その時安堵した私を嘲笑ってやりたい。世界の危機だというのにヘラヘラしてるなと殴ってやる。


 そして私はこう自分に助言するだろう。


 あの時、恥ずかしがらずに自分の気持ちを正直に言っておけば良かったのに、と。

ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


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