57、一言多いが、一言足りない
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「誰!?」
「イナリ!?お前がどうしてここに!?」
「来ちゃった」
「来ちゃったではない。勝手に来るな!!」
なんなのよこの男。チャイムも鳴らさずいきなり入ってくるなんて、さっきまで全然気づかなかった。
リューの知り合いみたいだけど一体いつの間に入ったのかしら。
「気が向いたら来るって言ってたのに全然来ないからさ、待ちくたびれちゃったんだ」
「だからってなんで来るんだ!」
「別にいいだろ。減るもんじゃないんだしさ」
「そういう問題ではない。だいたいお前はいつも勝手なのだ!」
見た目はそこそこな優男イケメンて感じかしら。どっかのアイドルだって言われても違和感は無い。悪い人じゃ無さそうだけど、リューの知り合いなだけあってめんどくさそうだ。
「本当勝手なのね。アナタと会うなんて一体何百年ぶりかしら」
「ゼノヴィア、君は変わっていないね。あいも変わらずずっと美しいままだ」
「それはどうも。でも変わっていないのはアナタも一緒でしょ」
「僕はこの姿が好きなだけさ」
久々の再会にしてはなんだか素っ気ない態度だ。
「あの……」
突然現れた謎の男に何と言っていいのか分からず戸惑うコモモ。
「驚かせてしまってすまない。キミのことは知っているよコモモちゃん」
「え、どうして名前を?」
「キミのパパとは知り合いでね。その特徴的な髪色なんて実にパパそっくりだ」
すると突然、リューとゼノヴィアが態度を一変させイナリを睨みつける。
「喋りすぎだ」
「悪いけど、余計なことを言わないでもらえるかしら?」
「怖い顔しないでよ〜。大丈夫。何を言っていけないかくらいは僕だって分かってる。僕の口から何かを言うことは絶対に無いよ」
リューとゼノヴィアさんとも顔見知りで、しかもコモモの父親のことも知っている。ということは、こいつもドラゴンってこと?
「残念。僕はドラゴンじゃないよ」
「え……」
私は何も言ってないのにどうして。まさか心を読まれた!?
「今度は正解。その通りだよすみにゃん」
私のことも知ってるわけ!?
「どうして私のことを…」
「それは僕がキミのファンだからさ」
「え?」
するとイナリはどこからか、私の名前が書かれた応援タオルや私のアクリルスタンドを持ってくる。
しかもそのアクリルスタンドは受注生産で販売された限定品だ。
「なんで私のグッズが異世界にあんのよ…」
「だからそれは僕がキミのファンだから」
「そうじゃなくて、なんで異世界のアナタが日本で売られたグッズを持ってるのよ?」
限定グッズといい、すみにゃん呼びといいこの男は本当に私のファンらしい。でもその理由がさっぱり分からない。
「いい質問だね。それは僕が、」
「此奴はこの世界で唯一異世界を行き来できる存在だからだ。それがお前の求める答えだ」
「先に言われちゃった……」
リューに良いところを取られしゅんとするイナリ。
これが本当で異世界を行き来できるってことは……。
「あの!」
「なんだい?」
「私のファンなんですよね?」
「そうだよ」
「なら、私を元の世界に返すことはできますか?」
「いいよ」
正直冗談のつもりだったから、思ってもいない答えの連続に戸惑いを隠せない。
「本当に私を元の世界に返せるの?……」
「もちろん。キミが心からそれを望むならね」
私はずっとこの時を待っていた。この時の為に今まで生きてきた。
「余計なことを言うなと言った筈だろ!」
「彼女に言うなとは言われてないよ」
「この性悪狐が……」
でも、こんな瞬間が本当に来るとは思っていなかった。それにしても突然過ぎる。
「スミレちゃん……」
「スミレお姉ちゃん。帰っちゃうの?…」
分かってはいたけどコモモちゃんのそんな寂しそうな顔は見たくなかった。これじゃ喜びたいのに喜べない。こんな思いするくらいだったら聞かなきゃ良かった。
「一応言っておくとどんな決断をしようと僕はキミの味方さ」
「私は……」
「迷っているのならその迷いが晴れた時、また僕に望めばいい。まぁ、その時は来ないかもだけど…」
「それってどういう意味ですか?」
「それはね、」
意味ありげに呟くイナリの顔はどこか笑っているようにも思えた。
「いい加減にしろ。そろそろその減らず口にもうんざりだ」
「そうよ。余計なことを言ってる暇があるなら、そろそろここに来た理由を話したらどうなの?」
「それもそうだね。僕としたことが本題を忘れるところだったよ。いけないいけない」
深刻だった空気を吹き飛ばすようにイナリは明るく飄々としている。
「で、要件があるならさっさと言え」
「君達に忠告しておこうと思ってさ」
「忠告?」
「災龍の機嫌が悪くなっている」
「なんだと!?」
「なんですって!?」
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