54、だってアイドルだから
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「スミレちゃん。もしもの時の為に一応私の加護の使い方教えておくわね」
ゼノヴィアはこっそりとスミレに耳打ちする。
「えっ、」
「ちゃんと気持ちを込めるのも忘れちゃダメよ」
「えーーー……」
――――
あれを聞いた時は絶対に使わないと思ってた。こんなこと、仕事だっとしてもプロのアイドルがすべきことではないからだ。
でも、背に腹は変えられない。私のプライド一つ捨てて命が救えるなら喜んで捨ててやる。
「(ゼノヴィアさん信じるからね)」
覚悟は出来てる。あとは、本気で治したいと思うだけ。
「これ、絶対秘密にしてよね」
「……?」
スミレは王子の手にそっと口付けをする。
「なっ!!」
「スミレさん……!!」
こんなのバレたら炎上どころでは済まないでしょうね。唇じゃないからって済むほどアイドルの世界は甘くないのだ。
「私はアイドル人生賭けたのよ。ここで死んだら絶対許さないんだから!」
すると、王子の体が白いオーラに包まれ始める。
「これは治癒魔法?」
「暖かく輝く白い光…まさか!」
「ヴェルダンさんはこの光をご存知なんですか?」
「私も確証は無い。だが、彼女の肩に乗った使い魔が本物のドラゴンなのだとしたら、これは白龍の加護の輝きなのかもしれない」
「じゃああのドラゴンは白竜?しかし聞いていた話とは少し違うような?…」
「恐らくあれは白竜では無いのだろう。だが、白竜と関係を持つ竜だとしたら……それを従える彼女が恐ろしいな」
王子を包んだ白いオーラは徐々に光が強くなっていく。
――――
「加護を使ったら最後にこう唱えるのを忘れちゃダメよ。力が行き場を失って暴走しちゃうかもしれないから」
「使わないですから大丈夫ですよ」
「そんなこと言わずに一応覚えておきなさい」
――――
白いオーラの輝きが最高潮に達する時、私は無心で呟いた。
「ハイドラ」
その掛け声を合図に白いオーラは王子の体に吸収され、一体となった。
「王子……?」
不安そうに見つめるライナ。
「…不思議だ。体がとても軽いぞ」
王子は自分の体の調子を確かめるように、ゆっくりと手足を動かしながら体を起こす。
「王子!ご無理をなさってはなりません」
「心配無いぞヴェルダン」
慌ててヴェルダンが肩を貸そうとするが、その必要もないほどに王子はピンピンとしている。
「だ、大丈夫なのですか?…」
「我も驚いている。だがさっき迄の苦痛が嘘のように調子が良いのだ!!」
「本当ですか?…」
あまりの変わりようにまだ信じることが出来ない。
「王子!お身体を少し見せていただけますか?」
「構わん」
念の為治癒師が王子の体を確認する。
「これは……!」
「どうだ?」
「奇跡だ…完全に回復している!!病の気配も全く感知しません!!」
「だろ?」
「……王子!!」
ヴェルダンはダラダラと涙を流しながら王子に抱きつく。
「やめろヴェルダン。いくらお前でも、男と抱きつく趣味は無いぞ」
「分かっておりますとも…でも、でも、嬉しいんです!!」
「やれやれ…仕方ない奴だな」
完全回復の知らせに会場の人々も一成に湧き上がる。
「どうやら上手くいったみたいね……」
「だから言ったろ?お前なら救えると」
「私がキスまでしたんだから、上手くいって貰わなきゃ困るわよ」
それにしても、めちゃくちゃ疲れた。急に偏頭痛が酷くなった気がするし、とにかく体のあちこちが痛い。もしかしてゼノヴィアさんの加護を使った副作用だったりして。
だとしたら、凄い力なのは分かったけど二度と使いたくない。
「王子…本当に良かった……」
「でも、大事なのはこっからよ」
堪えきれず涙を流すライナの肩をそっと撫でる。
「スミレ。君のおかげだ。本当に感謝する」
「どういたしまして」
「やはり君は我の妻に相応しい。改めて言わせてくれ」
王子はヴェルダンに手伝ってもらい身なりを整える。
「…スミレ。我と結婚してくれ」
「ごめんなさい」
ダイヤらしき鉱石が美しく輝く婚約指輪にも目をくれず、淡々と言い放った。
それは男にとって一世一代の告白だった。
本人含め、ここにいる誰しもがこんな答えを聞くことになるなんて夢にも思わなかった筈だ。女はその期待を見事に裏切って見せたのだ。しかも即答で。
「い、今なんと言った?…」
男は自分の耳を疑うことを疑わなかった。
「ごめんなさい」
女は今言った言葉を寸分狂わずもう一度言ってのける。
「な、ならば、この国の王子である我の求婚を断る理由を聞かせてもらおうか?」
「アイドルは恋愛禁止なんで。誰のものにもなっちゃいけないんです」
「アイ、ドル?……」
そしてスミレは王子の耳元でそっと囁く。
「でも王子の運命の相手は意外と近くにいるかもしれませんよ」
「なに?……」
「良かったらこの後一人で店に来てください。待ってます」
スミレは上目遣いであざと可愛く微笑みながら手を振る。
「それでは失礼します。いくわよリュー」
「残念だったな。スミレはもう我の物なのだ」
「失礼ね。私を勝手に物にしないで。私はれっきとした人間なんだから」
「それ、怒るところ間違ってないか…?」
そんな魔性の笑顔に虜にされた人々に見送られながらスミレ達は会場を後にしたのであった。
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