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53、踊り踊って踊らされ

閲覧感謝です!


「私、実は……ずっと前から、王子のことが……!」


「ちょっと待ちなさい!!」


 女の勘が危機を察したのかミルフィーヌが食い気味で突っ込んでくる。


「黙っていればさっきから好き勝手、私を差し置いて一体なんなんですか!」


「丁度いい。この場にいるみんなにも紹介しよう」


 王子は前にいるライナを退けてスミレの手を掴む。


「彼女の名前はスミレ。我の婚約者であり未来の妻だ!!」


「なっ!!……」


 王子が正式に宣言したことで場の空気は一気に盛り上がりを見せる。


「さあスミレ、共に踊ろうじゃないか。今日は我らにとって記念すべき日になる」


「それなら私じゃなくて…」


 差し伸べた手を弾こうとすると、ライナが強引に私の手を掴み王子の手を握らせる。


「助かったよライナ。スミレは照れ屋だからな」


「ちょっと、どういうつもり?」


「君に勇気を貰ったこと感謝している。だがやっぱり、王子に必要なのは私じゃないって分かった」


 ただでさえ諦めムードだったのを私が嗾けて火を付けたけど、その火もさっきので完全に消えちゃったってこと。


「本当にそれでいいわけ?」


「行くぞ」


 ライナの有無を聞く間もなく、王子にエスコートされるがままホールの中心にやってくる。


「ちょっと待って、」


「安心しろ。未来の夫らしく我がお前をエスコートしてやる。スミレは我に付いてくればいい」


 だからそういうのがイヤなんだってば!


 離れようとするが盛り上がる場の空気に飲まれ思うように動くことができない。


「退け、そこの使い魔」


「……」


 そうだリューがいるのよ。今までだってそうだった。きっとリューがなんとかしてくれるわ。


「踊りの邪魔だ。肉でも食って待っていろ」


 すると王子が指差した先には巨大な鶏の丸焼きが。やはりここの料理も稀に漏れず真っ黒焦げだ。


「あのね、ウチのリューは舌が肥えてるの。あんな料理に興味があるわけないでしょ?」


「まぁ、興味の無い踊りに付き合わされるよりはいいかもな」


「え?」


 するとリューは瞬く間に肉のあるテーブルの方に行ってしまう。


「嘘でしょ……」


「これで準備は整った。音楽を流せ!」


 王子の合図で流れる軽やかなテンポの曲に合わせながら、リズムを取り始める。


「……(こうなったらやるしかない)」


 無論、私は社交ダンスなど一度もやったことはない。知っていることと言えば、番組の企画でやっていたところをながら見していたくらいの浅い知識だけ。


 私にとって社交ダンスは基本のきも知らないズブの素人だ。


「(だけど、ダンスなら死ぬほど踊ってきた)」


 スミレは頭の奥底にある社交ダンスの記憶を引っ張り出して、見よう見まねで踊ってみせる。


「ほう…」


 社交ダンスとアイドルのダンスは全くの別物。でもダンスはダンス。何百、何千、何万人の前で踊ってきたのよ。経験なら積んできた。


 どんな踊りでも雰囲気だけ掴めれば振りはアドリブでなんとかなる。


「(よし、なんとなくノッてきた!…ちょっと癪だけど)」


「(面白い。これならどうだ)」


 王子も勢いがついてきたのか、ダンスの振りも大きく派手なものになっていく。


 そんな王子のエスコートに身を委ねながら、スミレも負けじと振りを追加する。


「(こっちもアイドルとしてのプライドがあるんだから!負けてられないわ!)」


「(素晴らしい。やはり我の目に狂いは無かったようだな)」


 ホールの中心を華麗に舞う二人は場の空気を飲み込み周囲の目を完全に虜にした。


 さっきまで嫉妬していたミルフィーヌでさえ、空いた口を塞ぐのも忘れてじっと見続けている。


 曲の終わりに合わせて、二人はスポットライトを派手に浴びながら決めポーズを決め踊りを終えた。


「「(決まった……)」」


 会場全体は満場一致の大きな拍手を送る。


 最初こそ、嫌々なスミレだったが終わってみれば誰よりもノリノリに踊っていた。


 嫌だ嫌だと思っていても曲が流れれば自然と体が踊ってしまう。これって企画の罰ゲームも一緒だ。最初は嫌だと騒ぎながらも、最後には大人しく顔面にパイを食らうのが1番面白い。


 どれもアイドルならではの職業病。


「どうだ。我らは息ぴったりだったろう?」


「まぁ、踊りはね…」


 認めたくないけど、王子だけあって踊りは完璧だった。正直、この人のサポートが無ければこれほど上手くは踊れなかったと思う。


「踊りの息が合うということは夫婦の相性も合うということだ。それはつまり男女の相性も……」


「やめて。そういうの聞きたくないから」


「照れるなよ、かわいいな……」


「照れてない。かわいいのは知ってる」


 私アイドルなんだから分かるわけないでしょ。


「王子?」


 なんだかさっきから息が荒いような。それに心なしか顔色も良くないように見える。


「ねぇ、大丈夫?」


「…無論だ。心配するな。愛する女の前で倒れるほど、我は、よわくはな、、」


「ちょっと!!」


 突然王子はスミレに寄りかかるように倒れてしまう。


「「王子!!」」


 ヴェルダンとライナが青ざめた顔で慌てて王子の元に駆け寄ってくる。


「王子!しっかりしてください!」


「だからあれだけ言ったのです!激しい運動はお体に触ると」


「……許せヴェルダン。愛する女の前だ。格好つけたいだろ……」


「そんなこと言ってる場合ですか!おい、治癒師はまだなのか!!」


 会場の空気も凍りつき先程までとは一変。悍ましい程に張り詰めた空気が会場を支配している。


「…スミレ」


 騒ぎを聞きつけてからリューがスミレの元にもどってくる。


「なんか嫌な予感がするんだけど、気のせいよね……」


「いや、当たってる」


「それって、」


「ああ。このままだとこの男は死ぬぞ。絶対にな」


「……」


 そんな大事なこと、私にだけに聞こえる声で話さないでよ。


「王子!!」


「来たか。こっちだ!!」


 するとようやく王子を長年担当している治癒師がやってくる。


 治癒師は直ぐに魔法を展開し、王子の体は優しい緑色の光に包まれる。


 これで状況は再び一変する。ヴェルダンをはじめ、ここにいる誰もがそう信じていた。


「これは、なんてことだ……」


「どうした?…」


「王子の体が治癒魔法を拒絶しているんです……」


「なんだと!?」


 治癒師の言う通り、どんなに魔法の効果を強くしても一向に王子の顔色は良くなっていく気配がない。


「知っての通り治癒魔法では怪我は治せても病までは治せない。今までは治癒魔法で症状の進行を遅らせる事は出来ていましたが、それも効かないとなるともう……」


「そんな…それじゃあ王子は……」


 すると王子はそっと治癒師の手を自分の体から退ける。


「もういい。十分だ…」


「王子……」


「何を言ってるんですか王子!諦めてはなりません!!」


「ヴェルダンさんの言う通りです!きっとまだ何か方法がある筈です!!」


 しかし、王子は自分の未来を察したかのように抵抗することは無かった。


「これも運命だ。運命ならば抵抗するだけ無駄というものだろ…」


「そんなの知りません。私は、私はだだ貴方に生きていて欲しいだけなんです…!」


 ぼろぼろと涙を溢しながら必死に訴えるライナ。王子はその様子を見てそっと涙を拭ってみせる。


「泣くなライナ。お前は我の護衛だろ…」


「はい……」


「だったら最後まで堂々としていろ…。それが最後の命令だ」


「分かり、ました……」


 これが最後になるかもしれない。そう考えれば嫌でも頷くしかなかった。


「リュー。アナタの力でなんとかならないわけ?……」


「無理だな」


「即答ですか……」


 本当に打つてなしってことか…。


「そんなに助けたいのか?」


「まぁそれはそうね…」


 私でも少し不思議なくらいだ。あれだけ嫌ってたのにこの王子のことなんてこれっぽっちも思っていない筈なのに。


「何故だ。あれほどコイツのことを嫌がっていたではないか?」


「それはそれ。これはこれってことよ。どんな奴だったとしても、人が死ぬ所を見ていい気分なんかしないじゃない」


「…だったらお前がなんとかすればいいではないか」


「それが出来たらとっくにやってるわよ!」


 私だって好きで見殺しにしたいわけじゃない。でも、魔法も使えなければ医者でもない私にもう出来ることなど……。


「嘘だな。お前はまだ何もやってない」 


「どういう意味よそれ……」


 リューは何も出来ない私のことを貶したいわけ?


「このままでは絶対にコイツは死ぬ。だがお前ならコイツを助けられる。絶対にな」


 私なら助けられるっていうの?でもどうやって?


「そんな方法が本当にあるの?……」


「最近、こんな時にうってつけの力を手に入れだばっかりだろ」


「最近って……あ、」


 リューの言ってる力ってもしかしてあれのこと?


「そうだ。あれならなんとかなるかもしれん」


「でも、まだ使ったこともないし、それにあれを使うのは……」


「狼狽えるな」


「!……」


「救いたいのだろ?だったらやるしかないのだ」


 やれるかどうかじゃない。やるしかない、か……。


「リューも偶にはいいこと言うじゃない」


 今のでなんか吹っ切れた。


「スミレ……」


 王子は残された僅かな力でスミレ手を握り締める。


「悪いなスミレ。満足に式も出来ないまま、我は先に行かねばならぬようだ……」


 ギュッと握られた手は直ぐに解けそうでどこか頼りない。


「なに謝ってんのよ…」


 スミレはその手をさらに上から力強く握り締める。


「大体、ここにいるみんなが誰も諦めてないのに、何勝手にアンタが諦めてんの?そういうと所が一番ムカつくのよ!!」


「スミレ……」


 王子相手にこんな状況でも大胆不敵に言ってのけるスミレの態度に、ヴェルダン達も涙を堪えきれていない。


「大丈夫。アンタは私が死なせない」


ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


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