52、女が着飾るのには理由がある
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王城にて行われるダンスパーティー本番。
城には大勢の貴族や偉そうなお役人達で溢れかえっている。
当然、中も外にも其々の側近や護衛達が至る所に配置されていて、厳重に目を光らせている。
「ヴェルダン。彼女は本当に来るんだろうな?」
「その筈です」
一層厳重体制を敷かれているホールの奥後ろでは、王子やその執事達が来るべき時を備えながら待機していた。
「ならばなぜライナはここにいない。アイツが連れてくる手筈なんだろ!?」
「城には来ているようですが、私もまだ姿は見ていませんね」
「一体どうなっているのだ!!」
王子はスミレが来ると知ってからは、こんな調子で数時間前からずっと落ち着きが無かった。
「アルバ王子!」
すると、ここにいる貴族の中でも一段と派手なドレスを纏った令嬢がやってくる。
「ようやくです。直接お目にかかれて光栄でございますわ!」
「えっと、お前は?」
「え、私のことを覚えてない?」
一瞬で空気が悪くなるのを察してか、執事のヴェルダンが前に割って入る。
「これは失礼しましたミルフィーヌ様。王子、この方は大臣であるゴルドバン様の御令嬢です」
「ああ、ゴルドバンの娘か。どうりで見たことあると思ったわけだ。すまなかったな」
「いえ、お気になさらず。ご多忙な王子のことですから、私のことなど覚えていないのも仕方ありません。しかし、未来の妻なのですからちょっとくらい気に留めておいて欲しかったですわ」
未来の妻を名乗るだけあって二人はどこか似ている様なところがあるのかもしれない。
しかし婚約しているわけでも無いのに、王子相手に言い切ってみせるメンタルの強さ。賞賛に値する強心臓だが、周囲の側近からしたら危なっかしくてたまったものではない。
「ミルフィーヌ様。この様な場所で余りその様なことを口にするのはお勧めしませんよ」
政治家も貴族も部下の方がしっかりしてるのはどの世界も共通の様だ。
「いいじゃないマーノルド。だって事実なんだから」
これには執事も苦い顔をするしかない。
確かに大臣であるゴルドバンとアルバの父親である国王ジャスティンは地位は違えど古くからの旧知な関係である。
その娘と息子がいずれ婚約するのではないかという噂は以前からまことしやかに囁かれているのは事実だ。
しかしただの噂話であって、根拠はない。アルバ本人はいまいち覚えていないようだが、以前ミルフィーヌとのお見合いを断っている。
理由は至極簡単なものだった。
「そうだ。ミルフィーヌ嬢、我はお前のことを思い出したぞ!」
「本当ですか!?」
「我の記憶が確かなら以前お見合いをする予定だった筈」
「あの時は急遽予定が出来てしまったとの事で断られてしまいましたが、そもそもあんなものは必要無かったのです。何故なら私は結ばれる運命に、」
「それはない」
「え、」
スバっと叩っ切るような切れ味鋭い一言に周囲は凍りつく。
「あれは我が直々に断ったのだ」
「だからそれは、予定があったから、」
「そうではない。お前は我のタイプでは無かったからだ」
「た、タイプじゃない?……」
重なっていく言葉の刃はミルフィーヌを深く切り刻んでいく。
無論、王子にそんなつもりなど全く無い。
「王子!!……」
顔が真っ青になりながら頭を抱える執事のヴェルダン。
「王子ヒドイですわ!だって私と王子は赤い糸で結ばれた運命の」
「ハッキリさせておく。我にはもう心に決めた女がいるのだ。そいつ以外は絶対有り得ん!!」
衝撃のカミングアウトに場内も騒然となり釘付けになる。
「王子にそんな相手が!?」
「ミルフィーヌ様じゃないのか!?」
「王子。その女は私よりも魅力的なんですの?…」
「何百倍もな」
即答する王子の反応にミルフィーヌはつい唇を噛み締める。
「一体誰なんですその女は!?」
「それはだな…」
すると、会場の入り口の方からざわざわとした騒ぎ声が聞こえる。
「今度はなんの騒ぎですの?」
「…ようやく来たか。遅いぞ、我の未来の妻よ!」
「え!?」
その一言で一斉に人々の視線が集中する。
「誰が未来の妻ですか」
観衆の注目を浴びながら、バッチリとおめかしをしたスミレが堂々とした立ち振る舞いで現れた。
肩にはいつも通りリューの姿が。といっても興味が無い様であくびをするほど退屈そうだ。
「……」
そして隣にはなんだが緊張した面持ちのドレス姿の見慣れない女性が。女性もスミレ同様バッチリとメイクが決まっている。
「へ、変じゃないだろうか…やっぱり私がこんな姿なのはどうかしている……」
「何言ってるんですか!めちゃくちゃ似合ってますよライナさん!」
「だけどこんな大勢の前で、しかも王子の前なんだぞ…」
「だから意味があるんでしょ。大丈夫、超絶にかわいいから。もっと自信持って」
「わ、分かった…」
突然現れた二人の美女に会場は話題騒然。
「あの二人、どこの御令嬢だ!?見たことないぞ!」
「それもそうだが、どっちが王子の婚約者なんだ!?」
「なんなんですのあの二人は!!」
突如現れた二人にミルフィーヌも怒りが募る。
「会いたかったぞスミレ!!」
「リュー」
「ふぁ〜」
会って早々抱きつこうとする王子をリューが片手間に遇らう。
「王子!!」
床に激突する王子の姿に周囲の人々はゾッと背筋が凍りつく。
「スミレさん。いくらなんでもあれはやり過ぎだ!」
「やったのは私じゃなくてリューよ。でも、逆にチャンスでしょ?」
「え?」
「ほら助けてあげて」
スミレはライナの背中を押す。
「やれやれ…しょうがないなスミレは〜」
けろっとした様子で起き上がる王子に会場もほっと胸を撫で下ろす。
「王子、ご無事ですか」
「まぁな…あれ?」
少し気まづそうに手を差し出す姿に何か気づく。
「……」
「お前、まさかと思うがライナか?」
「……はい」
ライナは思わず頬を少し赤くする。
「どうしたんだその格好は!お前は護衛だろ!」
「そ、それはそうなんですが…」
「女の子がせっかく気合いいれてオシャレしてるのにその言い方は無いんじゃないですか?」
「オシャレ?」
そんなことも分からないからモテないのよ。
「ライナさんが誰の為にこんなかわいい格好してるって思ってるんですか?」
「誰って、格好に何か意味があるというのか?」
「呆れた…。アルバ王子、アナタの為に決まってるでしょ?」
「我の為だと?」
今よ、ライナさん。ずっと我慢してたんでしょ。思ったことぶつけなきゃ!
スミレは無言でライナに頷く。
「あの、王子!…」
「なんだ?」
「私、実は……ずっと前から、王子のことが……!」
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