47、訳あり物件
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実はこんなこともあろうかとマーケット商会、会長の伝を使って不動産屋を紹介してもらい私にピッタリで手頃な物件を紹介してもらっていたのだ。
いつまでも宿暮らしってわけには行かないもの。
一応マンションとかを探してたんだけど、異世界にそんなビル的な建物などある筈もなく、消去法で手頃な一軒家を探すことに。
私もまさかこの歳で一軒家を持つことになるなんて夢にも思わなかった。それも異世界でね。
要望といえば値段よりも市場やギルドに近いこと。そのくらいかしら。後、防犯設備がしっかりしていれば言うことなし。他には余り拘る気は無いけど、歳頃の女の子二人が住むんだからセキュリティーくらいはきちんとしておかないとね。
そんなわけでリューやコモモと一緒に紹介された家に来てみたんだけど……。
「どうですこちらの家は!?」
「そ、そうですね〜……」
紹介されたのは建物全体が何故か金で覆われた家。何処を見渡しても金ピカで、空からの日差しで反射してめちゃくちゃチカチカしてる。誰が何のために作ったのか全く意味が分からない。
防犯構造も心配だし、そもそもこんな騒々しい家に誰が住むのよ……。
「いかがですか!この金ピカでメタリックなボディーは!?」
「はぁ……」
さっきから思ってたけど、この不動産屋凄くグイグイ来る。テレビショッピングじゃないんだからもうちょっと落ち着けばいいのに。
「唯一無二であるスミレ様に相応しい物件だと思いますよ!」
きっとマーケットさんにとっておきの物件を紹介するようにでも言われたのね。だけど大袈裟よ。
私はこんな派手な家に住めるほど肝が据わってはいない。
「次見せてください」
そう言って次に紹介されたのは、まるで子供の夢を叶えたような奇想天外な家だった。
「これって、お菓子の家?」
「流石スミレ様。お目が高い!おっしゃる通りこちらはお菓子の家でございます!」
その名の通りこの世界のお菓子で出来ている家だ。流石は異世界、まさにファンタジーならではの物件だ。
少し離れた場所からでも甘い匂いが漂ってくる。
「いかがですか!この甘い香りに包まれた香しいボディーは!?」
さっきからしつこいわね。家の外壁に香しい匂いなんて誰も求めてないのよ。それは、私だって女の子よ。小さい頃は私も絵本やアニメで見たお菓子の家に住んでみたいって思ってた。
でも大人になれば分かる。実際できるかどうかの前に、そんな家に住みたいとは思わない。風が吹けば吹き飛びそうだし、雨が降ったらもう終わり。防犯対策のへったくりもないわ。
こんな家に住んだら甘いもの好きの私も甘い物まで嫌いになってしまいそう。
「ほう、食材で出来た家か。気に入った。スミレここにしろ」
この食いしん坊ドラゴンめ。ちょっとは住んだ後のことも考えなさいよね。
「いかがでしょうかスミレ様!」
「却下」
「お待ちください。今なら更に予備のクッキー五千枚もお付けしてお値段そのまま」
「却下。次!」
当たり前よこんなの。誰が買うものですか。
リューだけがぶつぶつと文句を言ってるが、私は構わず次の物件へと向かった。
それから一日かけて多くの物件を見て回ったのだが、結果はずっとこんな調子で全く成果は得られなかった。
「なんでこの世界には碌な家が無いのよ……」
気づけばもう夜になってしまった。
いつまでもたっても普通の家など紹介されやしない。そこら辺を見れば普通の家なんかいくらでもあるというのに。
流石はマーケットさんが紹介した不動産屋だ。一癖も二癖も変わっているのも頷ける。
だからあんなに奇抜なデザインなものばっかりだってこと。そういえばマーケットさんの部屋も同じように奇抜で私にはそのセンスがいまいち理解できなかった。これで納得ね。
こうなれば残された方法二つだけ。他の不動産屋を探して理想の物件が見つかまで待つか、無駄に豊富な資金を使って理想の一軒家を一から建てるか。
しかしどちらの選択肢を取っても、とんでもない時間と金がかかってしまう。
「もうこうなったら…意地でも普通の家に住んでやるんだから!!」
するとスミレは短冊を取り出し何やら願いを書き始める。
「おい待て!こんなことで三枚目の短冊を使うつもりか!?」
「そうよ。別にいいでしょ?」
「良くない。こんなことに願いを使ってしまって、またカレーが食べれなくなったらどうするのだ!」
「カレーより家よ」
もうなんか色々とヤケになってるのは認める。勿体無い気がしなくは無い。しかし貴重な休みを一日無駄に使ってしまったことにとてもイライラしてるのよ。
「後悔したっていい。どうにでもなりなさい!」
「やめろ!」
「離しなさいよ、あっ!」
リューと揉見合っている際に、短冊が破けてしまった。
〈普通の家が欲しい〉の普通の部分が破けてしまっている。
「ちょっとどうすんのよこれ!?」
「我が知るか!お前が我の言うことを聞かぬからこんなことになるのだ!」
「はぁ!?何よそれ!」
「リュー様…スミレお姉ちゃん……」
なんとか間に入ろうとコモモも声をかけるが、揉める二人には全くその声は届かない。
そして破れた短冊が赤い光を放つと、バラバラに消えて散った。
「え、」
「何が起こった?」
「ウソ…あれ見てよ!」
「これは、どういうことだ……」
スミレ達の目の前にこの世の物とは思えないほどの巨大な城が突然姿を現した。
「これって願いが叶ったってこと?でも私は普通の家って書いたのよ。これのどこが普通なのよ!?」
「恐らくだが、短冊が破けたことで願いの意味が変わったのかもしれん」
「それってつまり普通の家が欲しいって書いたから、逆に普通じゃない家が来たってこと?冗談でしょ?」
「そうなるな……」
「何よそれ!?」
まさかこんなことになるだなんて…。一体どうすんのよ。
「喚くなスミレ。なってしまったものは仕方ないだろう」
「そんなこと言ってる場合?こんなに大きな城がいきなり街に現れたってなったら目立つどころの騒ぎじゃないわよ」
「取り敢えず中に入ってみるぞ。話はそれからだ」
リューはなんでそんな冷静にいられるのよ。
それにしてもこの城、周りが夜ってこともあってかなんだか気味が悪いのよね。まるで肝試しにでも行くようだ。
「ほら、行くぞ」
「待って。まだ心の準備が」
「スミレお姉ちゃん大丈夫ですよ。リュー様が付いてるから」
「それはそうなんだけどさ……」
そういうことじゃないっていうか…てか、こういうのコモモちゃんは平気なんだ。見た目に似合わず逞しい。
「やっぱり無理なものは無理!せめて明日、明るくなってから」
「いいから行くぞ!」
「ウソでしょーーー!!!…」
スミレに有無も言わせないままリューはコモモ共に強引に城の中へと連れていった。
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