45、だからモテないのよ
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「キサマ…メイドの分際で主人である我に歯向かうのか!」
「まだ勘違いしてるんですか?」
「なんだと?…」
「子供の笑顔一つ守れないで何が王子よ。なんだか知りませんけどね、私はアンタのメイドじゃなければ、もう客でもないんですよ」
こんな顔はアイドルなら決して世間には見せていけない。そんなのは分かってるけど、こんな奴にいい顔出来るほど私の器は大きくない。
「おかえりくださいませご主人様」
スミレは真顔のまま店の扉を開けて退店を促す。
王子相手に全く怯まないスミレの行動に店内は騒然としたまま静まり返っている。
しかし王子だけは違った。
「見つけたぞ…」
「はい?」
「お前こそ我の運命の相手。我はお前のような女をずっと探していたのだ!!」
「はぁ!?」
そのまま男は満面の笑みで私に抱きついてくる。
「ちょっ!離れなさいよ!!」
スミレは引きつった顔で、アルバを強引に引き離す。
「なぜ嫌がる!?」
「そんなの当たり前でしょ!何言ってんのよ…!」
あまりの気持ち悪さに、完全にメイドであることを忘れている。
「これは運命なのだぞ。何故我の妻になれることをそれ程まで拒むのだ!」
「本気で言ってんの?」
「当然だ!」
迷うこともなく即答するアルバの態度に呆れて物も言えない。
「あのさ、人の嫌がることをする奴と結婚なんてするわけないでしょ。そんなことも分からないからモテないのよ」
「こうなれば力づくでも我の物にしてやる!ライナ!!」
「そんなのお断りよ。リュー!!」
二人の掛け声と同時にリューとライナは二人を庇うように前に立って、向かい合う。
「(……)」
「(この女、我の殺気を受けても動じぬとは。人間にしては中々やりおる)」
戦々恐々としながらも、互いに一歩も引こうとはしない。
「ライナ何をしている!あの程度のリザード、さっさとやっつけてあの女を連れてこい!」
「(我をリザードなどの竜もどきと一緒にするとはこの男、相当バカだな)」
「ライナ!!」
「……!」
アルバからの叱責を受けながらも、ライナは黙ったまま抜いていた剣を鞘にしまう。
それを受けて、リューも放っていた殺気を鎮める。
「どういうつもりだ!」
「…あれはリザードではありません」
「なに?」
「恐らく古龍の一種。もしくは、それ以上の何かかも。それに彼女も例外では無いようです」
どっかの誰かさんと違ってこっちの方は見る目があるみたい。リューもそれには頷いて、少し嬉しそうだ。
「あり得ん。あのちんちくりんが古龍以上だと、そんなバカな!」
「誰がちんちくりんだ!!」
「とにかくここは引くべきです。これ以上、彼女達を敵に回すのは得策ではありません」
「護衛のくせに我に意見するというのか!」
「どうか正しい判断を…」
ライナは言い返すこともせず、頭を深く下げた。
「ぐぬぬぬ……」
「アルバ様。ここはライナの言うことも一理あるかと。これだけの人混みの中でこれ以上目立つのは……」
アルバの言うことにはいつも二つ返事で肯定する執事のヴェルダンでさえもこの反応。
「ヴェルダン、お前までか。ぐっ……」
するとアルバが突如胸を押さえる。
「アルバ様。これ以上はお身体が…」
「……チッ。分かった。今日のところはこれで帰ってやる」
口ではそう言いながらもこの選択に不満なのが見え見えだ。
「おい未来の妻!」
「誰が妻よ。未来も過去も私はアンタの妻なんかじゃないわよ」
「お前名前はなんと言う?」
えー、言わなきゃいけないの?絶対嫌なんだけど。
「……」
「答えろ!さもなくば帰らんぞ!」
なんなのよもう〜……。
「スミレ。これでいいでしょ。さっさとおかえりくださいませ……」
「スミレか。平凡だが、まぁ、悪くないな」
何よそれ!平凡で悪かったわね。人の名前聞いておいて悪くないって、じゃあ何なら良かったわけ!?
あーームカつく。
いけないのは分かってるけど、ムカついちゃいけないと思えば思うほどムカついてくる。
「覚えておけスミレ。近い内に必ず我はお前を迎えにくる。我の妻に相応しいようにしっかりと身を清めておけよ」
はいキモい。もう無理。絶対無いわ。さようなら。
それにこの自信満々な顔。きっと本人は上手く決まったとでも思ってるんだろう。でも残念。ただでさえ0%だったのが今のでマイナスになりました。さようなら。
あからさまに嫌そうな顔をするスミレ。しかしそれを見ても王子の気持ちは変わらないようだ。
「それでこそ我が妻に相応しい。またなスミレ」
「(2度と来ないで欲しい。もう出禁よ)」
そして男はご機嫌なまま、部下を連れて店を後にした。
「ようやく終わった……」
いなくなったらこんなにも清々するとはね。人生でトップクラスに入る無駄な時間だった気がする。
「しかしどうするスミレ。あの男、あの様子じゃまた来るぞ」
「結構よ。意地でも店の敷居は跨がせないわ」
「それなら塩でも撒きます?」
ハルアが融通を利かせて大量の塩を持ってくる。
「なんて気の良さよ」
「前に同じような経験があったので」
なんか心当たりがあるような、無いような。まぁいいわ。
スミレは塩を豪快に一掴み。
「この……萌え萌え、キュンッ!!!」
今までの鬱憤を晴らすように大きく振りかぶって塩をぶん投げた。
「ふぅ……」
スッキリした。これて後腐れなく明日からの休みを楽しめそう。
でもその前に……。
「お嬢様」
「?」
「まだお腹は空いてますか?」
「うん!」
少女の笑顔に応えるようにスミレも満面の笑顔でそれに応える。
「ご主人様方もご注目!本日だけの特別サービス、私スミレがご主人様達の為に腕によりをかけて特製オムライスを作っちゃいますよー!!食べたい人は手を挙げて!」
「おーーっ!!!」
大勢のご主人様達が大声でスミレの呼びかけに答える。
先程までの異様な空気からは一変。店はいつも通りの幸福感に包まれた。
そしてその特別サービスのおかげもあってか、この日は歴代最高額の売り上げを記録したのであった。
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