44、ファンの笑顔は私が守る
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「おかえりなさいませご主人様♡」
「ほう。会って早々我を主人と認めるか。見る目があるではないか」
会って早々真ん中の偉そうなのがなんか変な感じ。その立ち振る舞いもいかにも貴族のような格好もちょっと変わってる。
「アルバ様。勘違いなさらないように」
「どういうことだ?」
「ここのメイド達はメイドの格好をしているだけであってメイドでは無いのです」
「ややこしいな…」
シワひとつない高級感のある黒いスーツに、白い顎髭が凛々しく様になっている。さっきのが貴族なら隣のおじさんは執事のようだ。
「……」
隣にいる護衛のような人物はさっきからずっと無口で辺りをキョロキョロを見回している。
見た目は短髪で男の子みたいだけどれっきとした女の子ね。俗に言うボクっ娘ってやつかしら。3人揃ってキャラが濃いわ。私達も人のことは言えないけど、もしかしてここがメイドカフェだって分かってのコスプレかしら。そういうことならこの少し浮いた格好も頷ける。だったらこっちもいつも以上に気合い入れなくちゃ!
「まぁいい。メイドはメイドだろ。いつものようにするだけだ」
「お席にご案内します。ご主人様、お嬢様、こちらへどうぞ」
「お嬢様?ああ、ライナのことか。コイツはただの護衛だ。空気みたいなものだから気にしないでくれ」
「え、」
「それにヴェルダンは僕の執事だ。二人の席は必要無い。必要なのは僕の為の特別な席だけさ」
は?この人どこまで設定入れ込んでんのよ。意味が分からない。特別な席って、VIP席とかに案内しろってこと?そんなのあるわけないじゃん。
「申し訳ございませんご主人様。そういったご希望にはお応え出来かねます」
「なんだと?主人である我の命令が聞けぬというのか?」
最悪。今日に限って変なの来ちゃったよ……。面倒くさいけど、これだけ乗り切れば明日は休みよ。頑張らなくちゃ。
「申し訳ございません」
しかし、男の横暴な態度はまだ続く。
「謝るくらいなら態度を改めたらどうなんだ?そうだ、あそこの席がいい」
男が指差したのは店の中で唯一外の景色を眺めることのできる窓側の席。しかしそこには既に和気藹々と楽しんでいる一組の家族連れがいる。
父親と幼稚園児程度の幼い少女。ここに来るのを楽しみにしていた1人の少女は運ばれてきたオムライスを目の前にしてその瞳を輝かせていた。
「おい」
「?……」
「ここは我が座る席だ。今なら許してやる。そこを退け」
何よコイツ。オレ様で偉そうなところはリューとそっくりだけど、リューの方がまだ可愛らしいわよ。
いい歳をした大人がいきなり子供にそんなことを言うもんだから女の子も唖然としたまま、空いた口が塞がらない。
「あの、席なら他にも空いてますよね?」
戸惑いながらもここは父親が娘を庇う。
「お前はこの娘の父親か?」
「はい」
「なら言って聞かせろ。この国の王子であるアルバ・ナスティーの言うことを聞けとな」
王子!?
その一言に店の中は騒然となる。
「アルバってもしかしてあのアルバなのか!?…」
「見ろ。あれはアルバ家の紋章だぞ。間違いない」
常連客のご主人様が言う通り、男の胸元には翼と王冠をもしたマークのような物が見える。言われてみればあのマーク街の至る所で見たことあるかも。
「あ、アルバ王子!?どうしてこんなところに!?」
「この店が賑わってると噂に聞いてな、ずっと気になってた。だから視察に来たのだ」
どうりで偉そうな格好してるわけよ。なら、隣のダンディーな執事や護衛と呼ばれたクールなボクっ娘ちゃんも本物ってことね。
でも、目の前にいる王子は私のイメージする王子と違っている。王子らしく、顔はそこそこイケメンよね。でも王子なのはそれだけだ。
「これは失礼しました!シノ、今日はこれで帰ろう!」
「え〜!!」
王子の機嫌をこれ以上損ねぬよう父親が少女を説得するが、少女は中々その席から退こうとはしない。
それも当然。楽しみにしていたと言っていたオムライスはまだ食べ始めたばかり。退くわけがないのだ。
「行こうシノ!」
「やーだ!せっかくパパときたのにまだ帰りたくな〜い!!」
「また今度連れってってあげるから、ね?」
「いやだ!!」
全く言うことを聞こうとしない娘に父親の顔色だけが悪くなっていく。
「もういい」
そんな少女の様子に王子は呆れ口調で呟いた。
「最後の忠告だ。そこを退け」
しかし少女は、近づいてきた王子には目もくれずオムライスに夢中だった。
「小娘の分際で我をコケにするとは…」
「あっ!!」
深い溜め息を吐くと、王子は少女が食べていたオムライスを強引に取り上げる。
「何考えてんのよあの王子…ムカつく。文句言ってやるわ」
「ダメですスミレさん!」
ハルアが慌てて私を止める。
「王子に歯向かったら何をされるか。お店も、スミレさんだってどうなるか分からないんですよ!」
「だけど……」
必死なハルアの訴えに、それを無視することも出来ずスミレは動けない。
「返してよー!!わたしのオムライス!!」
「忠告を無視したお前が悪いのだ」
必死にオムライスを取り返そうとする少女を王子は見下しながら笑っている。
「庶民は哀れだな。たかが料理程度でそんなに必死になれるとは、我も少し見習わなくてはな」
「王子。それ以上はなりません」
「ヴェルダンは黙っていろ。これはこの国のために必要な事なのだ」
執事の忠告も無視して王子は続ける。
「よってこれより、この愚かな小娘に罰を与える」
罰って冗談でしょ。何するつもりよ?
「そんな…どうかお許しください!娘の命だけは!」
「安心しろ。命は奪わない。ただ、今一番欲しがってる物を台無しにするだけだ」
王子はほくそ笑みながら、オムライスを地面に落とそうとする。
「やめてっ!!」
皿がひっくり返ろうとする瞬間、神技的な反射神経でスミレはオムライスを見事にキャッチする。
「なに?…」
私は少女にオムライスを返すと、優しく頭を撫でる。
「ごめんね。怖い思いさせちゃって」
崩れたオムライスはまた作り直せばいい。それで済むならいくらだって喜んで作ってやるわよ。
だけど、人の心はそう簡単じゃない。
「!?」
スミレは目を細め怯むことなく王子の胸ぐらを掴む。その顔はとてもアイドルが見せていいものではなかった。
「…まだ、子供が食べてる途中でしょうが!!」
まさか、この私がこんな台詞を言うことになるなんて。だけどこれは紛れもなく私の本心だ。
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