表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/68

39、いつもよりすんごいカレー

閲覧感謝です!


「ごはんたべよっか」


 私はいつものフリフリなエプロンを着て厨房に立つ。


 こうやって仕事以外で料理するのも意外と久々な気がする。最近はお店の手伝いとかが忙しくて、私やリューのごはんは残り物や簡単な賄いで済ませることが多かった。

 それに今回はコモモちゃんもいるわけだし、気合い入れて作らなきゃ!


「さーて、何作ろうか?」


「そんなの決まっておるだろ」


「ま、そうよね」


 せっかくカレールーが手に入ったのだ。これを使わなきゃ、貴重な願いを叶えてもらった意味がないもの。


 でも普通にカレーを作るのもなんかつまらないわよね〜。どうせなら疲れてるし、ご褒美がてらもっと豪華にがっつり行きたい気分。


「そうだ!だったら今日は特別にいつもよりすんごいカレーを食べせてあげるわ」


「すんごいカレーだと……!!」


 普段はそのカロリーの高さと背徳的な見た目から、中々手が伸ばせない組み合わせだけど、ここは異世界。


 私、この世界に来て気づいたのよね。私太ってないって。


 あれだけバランスの取れない食事や偏った食事ばっかりだったのにこれっぽっちも太った気がしないのよ。どちらかというと太りやすい体質の筈なのに、不思議なものよね。日本にいた頃ならこんな生活してたら3日もあればすぐに見た目に出ててきて絶叫してるわ。下手したら衣装のスカートすらも履けなくなってるかも。


 きっと異世界ではどんなに高いカロリーも、この世界の力で消滅するのよ。そうだわ。そうに違いない。


 異世界ではどんなに食べてもカロリーゼロ。揚げ物もカレーもご飯だって一緒に食べてもカロリーゼロ。最高。そうと決まったら遠慮の必要なんてどこにもないわ。食べたいものを好きなだけ、気の済むまで食ってやろうじゃないの!!


 尚この数日後、これから起こる一連の行動をバカだった、恥ずかしかったと後悔しながら、重くなった体を軽くするため朝から街をひたすら走り回る目に遭うのだが、この時の私はまだ知る由も無い。


「そのすんごいカレーとは、いったいどんなカレーなのだ!?」


「聞いて驚かないでよ〜」


 リューが生唾を飲みこむ音が聞こえる。


「カツカレーよ」


「カツ、カレーだと!?……なんだその名前だけで美味そうなカレーは!!」


「カレーの上にトンカツがのってるのよ」


「トン、カツ!?…」


 一々大袈裟に反応するリューのリアクションが面白すぎる。


「楽しみに待ってて。直ぐに作ってあげるから」


「早くしろ!」


 もう一秒たりとも我慢できないって様子ね。本当食いしんぼうさんなんだから。


 まずはベースとなるカレーに必要なご飯を炊かないとね。


 店で使う時と同様、予め水に30分程度浸しておいた米をクッカーに入れてメモリ通り水を注いぐ。あとは強火で全体を煮立たせたら、蓋をして弱火で適度に煮続ける。後は火を止めて蒸らせば出来上がりよ。


 ポイントとしては水加減に気をつけながら火力を調整すること。火が強いと米が炊ける前に水が蒸発して、ふっくらとしたご飯どころか真っ黒に焦げて固まったおこげになってしまう。


 まぁ、この世界の人々からしたらその方がいいかもだけど、私が作るならやっぱりふっくらしたご飯じゃないとね。


 こうやってご飯を炊くのは店の仕込みでもやってるからもう慣れたもの。日本にいた頃は炊飯器ばっかりに頼ってたけど鍋やクッカーで炊くのも中々悪くは無い。当然手間はかかるけどその分だけ美味しくなってる気がする。


「そうだリュー。どうせだから激辛、一度チャレンジしてみる?」


「面白い。受けてたってやろう」


 因みに私は辛口のカレーに更にスパイスを足して自分好みの辛さにする程の結構な辛党だった。


 そんな売り文句で以前、某人気テレビ番組の激辛チャレンジに出演したことがあるけど結果は思い出したくないほど散々だった。爪痕を残そうと必死に食い下がったが、結局クリアは出来ずその後1週間は碌に外に出れずとんでもない地獄を彷徨うにことになった。


 しかも1番腹が立つのがあんなに頑張ったのに私が使われたシーンはたったの三十秒ほどしかなかったことだ。それ以来、激辛がトラウマのようになってしまった私はプロフィール欄からひっそりと激辛の文字を消した…。やっぱり何事もほどほどが1番ってことだ。


 このカレールーの辛口は私も食べたことあるけど見た目ほど大した事なかったし。なんてたってリューはドラゴンで竜王だもの。たったの辛口程度の刺激など平気に決まってる。


「あの、スミレさん。わたし……」


「安心してコモモちゃん。甘口もちゃんと作るから」


 多少手間はかかるけど、流石にコモモちゃんに激辛は早すぎる。それに一つ作ったら、二つも三つもそんなに変わらないしね。


「あの、そうじゃなくて…」


「ん?」


「料理をするなら何かわたしに手伝えることはありませんか?」


「別にゆっくりしててもいいのよ?」


「見てるのだけはちょっと……」


 コモモちゃんってばなんていい子なの〜。どっかのふんぞり返ってるだけの竜王とは全然違うわ。


「本当にいいの?」


「お手伝いは好きなので、是非やらせてください!」


「じゃあお言葉に甘えて、カレーに使う野菜を切ってもらおうかな」


「はい!」


 私が一度切り方を説明してお手本見せると、直ぐにコモモは慣れた手つきで硬いにんじんやじゃがいもまでスラスラと切っていく。


 危なげに感じる様子も全くなく手捌きもとても安定している。


「すごーい!コモモちゃん上手だね〜!」


 料理始めた頃の私なんてじゃがいもの皮剥きだけで四苦八苦してたのにあっという間に終わらせちゃった。あの頃の私がこれを見てたらきっと挫折してた。


「誰かから教わったりしてたの?」


「いつもママといっしょにやってたので」


「そっか。でもなんか意外。あのカズハが料理をするだなんてね…」


 あの頃の私が言えたことでは無いけど、実家が菓子屋だとは思えないほどカズハには料理のセンスが驚くほど全く無かった。マナーや礼儀作法は完璧で、ダンスの振りや歌詞も一瞬で覚えてしまうくらい器用だったのに料理となると全くダメで本当ポンコツだったのよね。


 だって料理ができない頃の私だってなんとか作れていたカップ麺すらカズハはまともに作れなかった。お湯を注ぐ前にスープの素は入れて麺はほぐれなくなっちゃうし、お湯は線よりはるかに上でいつも薄い。その上、カズハがお湯を沸かすと何故かいつもぬるいから麺も上手くふやけない。


 そんな噂がテレビマンの耳に入り、メンバー全員でいろんな料理を作る企画が生まれた。


 そこでもやっぱりカズハは大活躍。


 お雑煮を作ろうともちを焼かせればぜんぶくっついって一つになっちゃうし、目玉焼きを作ろうとすれば卵をフライパンの上じゃなくて直接コンロの上に割っちゃうしで、まぁ、めちゃくちゃだった……。


 当然、出来た料理の味は最悪。だけどカズハの活躍のおかげで番組は大成功。今でもファンの間じゃ神回との呼び声も多い人気コーナーとなった。


 そんなカズハが自分の子供に料理を教えれるだけ料理ができるようになったなんて、あの頃からじゃとても考えられない。


「ママって料理上手だった?」


「……ぜんぜん」


「やっぱり」


「ママが作るといつも失敗しちゃうから、だから私が代わりにお手伝いしながら作るようになったんです」


 どうりでこんなに包丁使いが上手いわけね。なんか納得。


「そしたら私のほうが上手くなっちゃって、だからいつもママは私に嫉妬してて」


 ……そういうところもカズハらしいといわれればらしい。だけど本当はめちゃくちゃ嬉しかったんだろうな。


「どうですか?」


「どうもこうも完璧よ!本当助かったわ!」


 スミレがコモモの頭を優しく撫でると、コモモは頬を少し赤く染めてとても照れた様子だった。


 切った野菜は鍋に入れたら炒めて煮込んでいく。今回のカレー作りはこれで殆ど終わり。


 今までは野菜嫌いだったリューのために形が分からないように細かく刻んだり、柔らかく煮込んだりして食べやすくしていた。だけどカレーは偉大だ。あんなに野菜は食べないと言っていたリューが、最初のルーを使いきる頃にはごろごろとした野菜カレーも普通に食べていたんだから。


 だから今回は敢えてそのような工夫はせず普通に作る。


 だって今回の主役はカレーだけでは無いからだ。


ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


よろしければブックマーク、評価を頂けると、とても励みになります!


少しでも「面白そう!」「続きが楽しみだ!」


などと思っていただけましたら、下↓にある【☆☆☆☆☆】から、

ポイントも入れてくださるとめちゃくちゃ嬉しいです!


次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ