37、鷹槇和葉という女
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鷹槇和葉。
メンバーカラーは緑で愛称は、かずはん。私と同じグループ結成初期からのオリジナルメンバーだ。
グループが無名の頃から切磋琢磨をしながら共にグループを盛り上げてきた。女の子が集まるアイドルグループが故に、口には出せないような揉め事やメンバー間の確執もあった。
そんな時も彼女は、いつもと変わらぬのほほんとした雰囲気と決して譲らない真っ直ぐな姿勢で私達を纏めていた。
彼女は確実に私達にとって決して欠かすことのできない縁の下の力持ちのような存在であった。
そして何よりも私にとって彼女は、十人いるメンバーの中で唯一ビジネスではなく心の底から友達と呼べる、たった一人の存在であったことも間違いない。
しかし彼女は突然として私達の前から姿を消した。理由は分かっている。
彼女こそが、以前少し話にも出てきた俳優との不倫スキャンダルで芸能界を追われることになった元メンバーだからだ。グループからいなくなってから、彼女とは全く連絡が付かなくなった。
留守電を入れても返ってこないし、メールを入れても既読すら付かない。今までならどんな時間に送っても速攻で返ってきていたのにだ。
貰っていた合鍵で住んでいたマンションにも行ってみたけど、帰ってきているような様子は見当たらなかった。
ネットの噂じゃ、自殺しただとか、相手側の奥さんに刺されて殺されただなんて根も葉もない噂で溢れていたけど、そんな事実はどこにもない。
ただの噂だと分かってはいながらも、心配になった私は心当たりのある場所を探してみることにした。
その第一候補が彼女の実家だ。
彼女の実家は百年以上続く銘菓の老舗。以前彼女と一緒に店に来たこともあるから私とは親御さんとも顔見知りだ。親御さん思いの彼女なら一度くらい顔を見せに来ていると思ったのだ。
しかし、それは私の見当違いだった。あの騒動以降、彼女は実家に戻ってきてはいないらしい。それどころか親御さんからの連絡すら全く反応が無く、とても心配していた様子だった。
それでも私は、彼女ならどこかで上手くやっているのだろうと勝手にたかを括っていた。
それがまさかこんなことになっているだなんて……。しかもいつの間にか娘まで。
私が言えることじゃないけど、どうして和葉は異世界に来たのだろう。そしてこの子の父親は一体……
「あの、スミレさんはママを知っているんですか?」
「うん。私とママは仲間で友達だったのよ」
「ともだち…」
「だからこうやってこうやってコモモちゃんに会えたことがとっても嬉しいわ」
和葉に会えないことはめちゃくちゃ悲しいし、悔しいけど、1番辛い思いをしたのは間違い無くこの子だから。
私なんかが泣いちゃだめだ。
「どうやらコモモの母はお前と同じ異世界人だったようだな」
「一応聞くけど、どうしてカズハがこの世界に来たかリューは分かる?」
「さあな。会ったことも無い人間のことなど知るわけないだろ」
「そうよね…」
だと思った。知ってたら私が来た理由も知ってるに決まってるもの。
「だが、世界を跨ぐには必ず理由が存在する。それだけは確かだ」
「え?」
「コモモの母親については分からんが、もしかしたらお前はその母親に導かれてこの世界に来たのかもしれんな」
「カズハが私をね……」
「信じるか信じないかはお前が決めろ。まぁ、我の直感はよく当たるがな」
理由はめちゃくちゃだけど、それでも信じたくなるような妙な説得力がある。
もしも本当にカズハが私をこの世界に呼んだというのなら、こうやってコモモちゃんに会うのも運命だったのかもしれない。
「これも縁ってことかしら」
いつもロマンチックな妄想をしてたあの子らしいサプライズね。
「あの、スミレさんにとってママってどんな人だったんですか?」
「そうねーコモモちゃんのママは私と違って才能の塊だったわ。これぞアイドルになるために生まれてきたって感じだったかな」
「アイドル?」
「人を笑顔にする仕事のことよ。私もママも同じ仕事をしていたの」
カズハは私と違って最初から人気もあったし、センターに選ばれることも珍しく無かった。それこそ私にとって彼女は仲間でありかけがえのない友達。同時に憧れでもありライバルだった。
「それにアナタのママはソロ曲を出すくらい歌が上手かったのよ」
「そういえばママが昔はよくおうたを歌っていたって言ってたような。私が眠れない時にもよく歌っていくれて…」
過去の事を思い出したのかコモモの目には薄っすらと涙がたまる。
「ママ……」
「あ、ごめんなさい。辛いこと思い出させちゃったね」
私としたことが少し軽率だった。大人っぽい素振りからついつい忘れてしまうが、この子はまだこんなに幼いのだ。
母親を失ったことが受けいれられなくても無理はない。
「ううん、大丈夫。百年前にもう泣かないって決めたから」
コモモは強い意志で涙を拭い笑顔を見せる。
「そっか。コモモちゃんは強いんだね。そういうところもママそっくりだわ」
普段はのほほんとした雰囲気の彼女だったけど、人一倍プロ意識が高く誰よりも拘りが強い子だった。そんな性格だからこそ彼女は、かわいいだけでは生き残れない厳しい芸能界の世界で人気者になれたのだろう。
「あれ?…」
なんか今、大事なことを聞き逃したような……。
「ねぇコモモちゃん。悪いんだけどさっき言ったこともう一回言ってもらえる?」
「え、あ、はい。もう泣かないって決めたから」
「その前よ。いつから泣かないって決めたんだっけ?」
「百年前です。ママがいなくなったのがその頃だったから」
「そう。百年前……百年前!?」
絵に描いたような見事な二度見で振り返る。
「何を驚く必要がある?」
「驚く理由しかないんですけど…」
カズハが亡くなったのが百年前ってことは、コモモちゃんは私より歳上ってこと!?私の祖母でもまだ八十歳行ってなかったのに。
「竜の血が流れる我らからすれば百年前などさほど昔のことではない」
「でも、私より遥かに歳上ってことでしょ?信じられないわ……」
どうりで見た目の割に大人っぽいって思ったわけだわ。つまりカズハは私と違って百年前の世界にやってきたってことだ。行方不明になったのが一年前なのに異世界にきたら百年も前だなんて不思議なこともあるものだ。
「確かに生きてる年数はお前より長いが、コモモが子供であることには変わりない。それに歳の数などただの数字にしか過ぎない。別に気にするな」
「リュー…アンタいいこと言うわね」
そうよ。年齢なんてただの数字よ。実は私がアラサーでグループの中でも最年長だったからってそんなの関係ないのよ!
心無いアンチからは「いつまでだらだらいるんだ。さっさと卒業しろ」なんて言われたこともあるけど、そんなの知らないわよ!!
「私はアイドルだからアイドルやってんのよ!年齢なんて知るかバーカ!!」
突然声を張り上げ思いの丈をぶちまけたスミレをコモモが不思議そうな様子で見ている。
「スミレさん?…」
「放っておけ」
「え、でも……」
リューは慣れた仕草でスミレの方から降りると、今度はコモモの肩に乗る。
「そんなことよりコモモ。お前から他とは違う竜の気配を感じるのだが、何か心当たりがあるか?」
「それは私が竜人だから、」
「いや、お前から感じる気配は普通の竜とも、我が知っている竜人のそれでも無い。アイツを除けばな」
「どういうことですか?」
「…我はお前の父親を知っているかもしれないということだ」
もしかすれば、コモモと縁で繋がっているのはスミレだけでは無いのかもしれん
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