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33/33

33、主婦の味方ピックアップ中

閲覧感謝です!


 洞窟内を照らす光苔を頼りにスミレ達はどんどんとダンジョン内を深く潜っていく。


「なんか如何にもって雰囲気よね……」


 恐る恐る前へとゆっくり進むスミレを嘲笑うように奥からモンスターの叫び声が聞こえる。


「きゃっ!」


 思わず声を上げてしまったが、私は慌てて自分の口を塞ぐ。暫く様子を伺うがモンスターらしき姿は何も見えない。


「大丈夫よね……?」


「無論だ。我の気配に気づいたのか、逃げたのはあっちの方だ」


「ならいいんだけど」


「感じる気配から察するにこのダンジョンはゴブリンやオークの溜まり場のようだな」


 ゲームに疎い私でもどれも聞いたことあるモンスターばっかりだわ。ゴブリンもオークもいいイメージは湧かないけど。


「一応だけど、そいつらがリューより強いってことは無いよね?」


 私の問いかけにリューはひなたも鼻で笑い飛ばす。


「フッ。愚問だな」


 それもそうよね。ドラゴンより強いモンスターなんてそうそういるわけがない。確かに愚問だった。


「しかしこの様子だと宝の中身も期待出来ないな」


「なんでよ。まだ一つも見つけてないんだからそれは分からないでしょ」


「いや分かる。我はもっとオーガやメデューサといった骨のあるモンスターがいることを期待していたのだ。低レベルなモンスターばかりでは宝の中身もたかが知れている」


「そういうものなのかしら」


「竜王の我が言っているのだから間違いない」


 相変わらず大した自信ね。ゴブリンやオークがどれほど強さかは私には分からないけど、オーガやメデューサの方が強いことは私でも分かる。弱くて簡単に手に入る物より強くて難しい方が中身も豪華ってことなら納得。


「じゃあ無駄足だったかもってこと?」


「かもな……」


「何よそれー!じゃあ私はただ疲れただけってことじゃない!もう最悪……」


 あれだけ振り回されて得るものは何も無し。そうと分かったらなんか急に疲れてきた。 


「ちょっと休憩にしない?歩き続けてもうへとへとなんだけど……」


「まぁいいだろう。近くにモンスターの気配も無いし、宝も期待出来ないなら急ぐ必要も無いからな」


「やった。やっと休めるー……!」


 私は疲弊した体を少しでも休めるため、やっとの思いで腰を下ろした。


「はぁー……帰るの面倒くさいなー……」


 これが日本ならタクシー呼んだら直ぐなのにさ。なんで異世界にはタクシーの一つも無いのかしら。


「そうだ。リューって魔法とか使えないの?」


「使えないことも無いが、それがどうしたのだ?」


「ならさ魔法で街まで瞬間移動して連れてってよ!」


 リューは呆れた様子でため息を吐く。


「何よ。あ、もしかして竜王なのに出来ないとか?」


「なわけあるか!竜王である我に不可能など無い!!」


「だったらそんなにムキになる必要もないじゃない。ちょっと変よ?」


「そ、それはお前が変なことを吐かすからだ!我を困らせおって……」


 なんか妙に焦ってる感じ。こんなに動揺してるリューを見るのもなんか新鮮で逆に面白いかも。 


「その程度のことで竜王の力を使おうとするのが無礼なのだ。休憩も終わりだ!さっさと帰るぞ!」


「え〜!もうちょっとだけ!」


「ダメだ!早く帰りたいと言ったのはお前だろ!いいから……ん?」


 駄々を捏ねるスミレの様子を見てリューが何かに気づく。


「待て」


「なによ。帰るんじゃなかったの?」


「せっかくだ。その前に宝箱の中身を確認してからでも遅くはないと思ってな」


「ウソ!?宝箱見つけたの!?どこ!」


 目の届く範囲を至る所見てみるがそれといった物は何も見つからない。


「何も無いじゃない。嘘は嫌いなくせにリューも冗談は言うのね」


「下だ」


「下?それって地面の下ってこと?」


 もしかして、ここほれワンワンってやつ?昔話みたいに掘ってみたら本当に金銀財宝とかができたりして。犬が嗅覚で見つけるなら、ドラゴンは直感で十分ってわけね。よく分からないけどなんか妙な説得力がある。


「馬鹿か。地面の下など掘っても見つかるのは石か白骨化した何かだけだ」


「ちょっ、嫌なこと言わないでよ!」


 何よそれ。ドラゴンの直感なんて全然役に立たないじゃない!だけど、今も私の下に誰かの骨が眠ってる。考えたくないのについつい頭に浮かんでしまう。


「もういいわ。さっさと帰りましょう」


「そう怖がるな。お前があまりにも滑稽に見えたから少し揶揄っただけだ」


「ねぇ、ふざけてるならやめてくれない?」


「ふざけてない。寧ろここまで言われて何故気づかないのだ。我はそれが不思議で仕方がないぞ」


「どういうこと?…」


 ふざけてないくせに人のことを揶揄ってみたり、一体何を考えてるのよ。さっぱり分からない。


「だから下だ」


「だから下は地面でしょ」


「ややこしい奴め。ならばその上だ」


「上?」


 益々意味が分からなくなってきたわ。


「今お前は何の上に座ってる?」


「そんなの知らないわよ。岩かなんかじゃないの?」


「なら見てみろ」


「もう、それがどうしたっていうのよ……」


 スミレは重い腰を上げてその下を確認してみる。


「あれ?岩じゃない……え、これってもしかして宝箱!?」


「気づくのが遅すぎだ」


 いやだ恥ずかしい。なんでこんな近くにあったのに全然気づかなかったんだろ。


「てかさ、それならそうともっと分かりやすく教えてくれたらよかったじゃない!」


「この程度の事に気づけず、変な勘違いしたお前が悪い」


「ぐぅっ……」


 随分とはっきり言うじゃない。正論すぎて何も言い返せないわ。もしもリューが彼氏だったら最悪ね。まぁあの性格じゃモテないか。


「おい、今何か無礼な事を考えなかったか?」


「いや、別に。それより中身見てようよ!」


「話をはぐらかしおって……」


 私はリューを無視して宝箱を開けてみる。宝箱には鍵などはかかっておらず女の私でも軽々と開ける事ができた。


「は?」


 ようやく見つけた念願の宝箱。しかし中に入っていたのは、まごうことなきただのたわしだった。


「なんだこれは?」


「流石にこれだけってことはないわよね?きっと他にも何かあるはず……」


 念の為宝箱の隅々まで確認してみるが、やはりたわし以外何も入っていない。


「宝箱の中身がたわしだけ?………なんなのよそれ!!」


 何かを考えるわけでもなく、想いが突発的に言葉となり声となった。こんなにも魂のこもった心の声を叫んだのは初めてだ。


「何よこれ。異世界からの漂流物ってこれじゃ本当にただの漂流物じゃないの!!」


「落ち着けスミレ。全体が妙に尖っていて非情に刺々しい。これは異世界の武器か何かか?」


 たわしに何故か興味津々なリュー。そんな様子に何故かもっと腹が立ってくる。


「主婦とかが愛用する武器なんじゃない?」


「主婦?なんだその職業は?異世界にはこのような武器を使う冒険者がいるのか」


「そんなの知らないわよ!ハズレよハズレ!大ハズレ!!」


 あーームカつく!!なんかダンジョンに馬鹿にされた気分。


「次よ次!もっと宝箱探すわよ!」


「疲れたから帰るんじゃなかったのか?」


「こんなんで帰れるわけないでしょ!」


 こうなったら意地でも大当たりを引いてやるんだから!私のくじ運見せてあげるわ!


 さっきまではあれほど探しても見つからなかった宝箱が次々と見つかっていく。私がその気になればざっとこんなもんだ。


 しかし、肝心の中身はというと……


「またたわし……次よ!」


 二つ、三つと増えていくのはたわしばかり。


「今度はどうだ!……もうっ!!」


 宝箱は見つかるのに、中身は何故かたわしばかり。ムキになればムキになる程たわしの量が増えていく。


「どうせたわしなんでしょ?……ほらね。もういいわよ」


 疲労からか、開けた宝箱を見るたびに私を宝箱が口を大きく開けて笑っているようだ。


 だんだん怒ることすら疲れてきた。


 それから一時間くらいが経っただろうか。夢中になって探して見つけた宝箱の数はおおよそ三十個程度。前半全く何も見つからなかったことを考えれば大逆転の大収穫といったところよね。


 しかし手に入ったのは持ちきれない程の大量のたわしばかり。どんなにダーツが下手な奴でももっとマシな結果になったと私は思う。


「まだ探すか?」


「……もういいわよ。もうたわしは見たくない」


 宝箱を開けた数より明らかにたわしの数の方が多い。最後に開けた宝箱なんて、箱一杯に詰められてたものね。


 これがソーシャルゲームのガチャならたわしがピックアップされてたに違いない。課金もしてないのにこの仕打ち。いや、逆ね……。


「これが俗に言う爆死ってやつか……」 


「死んでないだろ」


「死んだみたいなもんよ……」


 そもそも楽してカレールーを手に入れようとしたのが間違いだったのかも。だからバチが当たったのよ。そうよ。そうに決まってる。


「はぁ……」


 なのに自然と露骨なため息が止まらない。


「だれか、たすけて……」


 どこか遠くから声が聞こえた気がした。


「なんか言った?」


「いいや」


「そう……」


 幻聴が聞こえるなんて、私もそうとう疲れてるのね。だいたいリューが誰かに助けを呼ぶなんてあるわけないのに。


「たすけて!」


 これは幻聴じゃない。今のははっきり聞こえた!


「リュー、やっぱり誰かが助けを呼んでる!」


「我も聞こえた。しかしこの気配、妙だな……」


「そんなことより場所は!?早くしないと!」


「…恐らく最深部からだな。ここからならそう遠くはない」


「行くわよ。案内して!」


 私はリューの案内を頼りに大急ぎでダンジョンの奥深くへと潜っていく。


 あれだけ疲れた、もう走りたくないと思っていたのに、いざとなったら結構平気なものだ。

ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


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次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。


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