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30、微笑みの向こう側

閲覧感謝です!


「スミレさん今日も本当にありがとうございました!おかげで売り上げも絶好調!借金も返せてこれでまた上手くやっていけそうです」


「それなら良かった。でも、絶好調なのは私の力だけじゃないわ」


「え?」


「ハルアちゃんのお父さんが作った料理が美味しいからだと私は思うけどな」


 ここまで店を大きく生まれ変わらせることを許してくれたダグラスさんの器の大きさあってこそだ。自分が考えといてなんだけど、原型残ってないもんな……。


「お嬢ちゃん……」


 後ろで聞いていたダグラスは思わず涙目になってしまう。


「ちょっ、なんで泣いてるんですか!?」


「悪い。久しく褒められて無かったもんだから、つい……」


「もうお父さんったら……!」


 するとハルアまで薄らと涙を浮かべてしまう。そこにスミレが現れると流れそうになった涙を優しく拭った。


「ほら笑って。この店が大成功したのはハルアちゃんのおかげなんだから」


「そんな。別に私は……」


 恥ずかしがって照れる所もまたかわいい。


「謙遜しないで。世界が違えばハルアちゃんならセンター間違いなしよ」


「センター?…」


 だけど時に涙は女の武器になる。うるうるしながら、しかも上目遣いで相手をじっと見つめる。こんな上等テクを無意識で使うなんて本当恐ろしい子だわ。


 正直、同じ世界に生まれなくて心から良かったと思ってる。こんな子が側にいたら私はアイドルにはなれなかっただろうから。


「ほら、笑って。涙なんて流したらせっかくのかわいい顔も台無しよ」


 もうこの二人には私と初めて会った時のような面影は微塵も無い。あんなにギスギスしていたのが嘘のよう。


 こうして、潰れかけていた一軒の食堂はメイドカフェへと進化を遂げることで息を吹き返した。


 一方、今にも息を引き取りそうなほど追い詰められた一人の男が、店の前にで何やら企んでいた。


「全部あの女のせいだ……あの女のせいで私は……!!」


 飛ぶ鳥を落とす勢いで繁盛していた〈セレブリティ〉の姿はもうどこにもない。店を成功させ手柄を挙げ華々しく本店に返り咲くはずだった私の夢もとうとう潰えた。


 しかし不幸はそれだけじゃない。


 昨日、家に帰ったら妻と二人の子供が置き手紙を残していなくなっていた。店の仕事ばかりを優先して家事も碌にしなかった私に愛想が尽きたそうだ。

 店が上手くいっていた時は家族サービスもそれなりにしていたというのに、これもあの女があの店に余計な入れ知恵をしたからだ。今の私には何もない。地位に名誉、そして家族すらも失った。


 このままではいずれは仕事まで……その前にあの女達に一泡吹かせてやりたい。


「あの店か?」


 その為なら俺も手段を選ぶつもりはない。それが例え許される物では無かったとしても。


「そうだ。手段は選ばん。とにかくあの店の評判を落としてくれればいい!」


「金は?」


「言われた分は持ってきた」


 バッグの中には金貨や銀貨がぎゅうぎゅうに詰められていた。


「…おい」


 チンピラらしき男は部下の三人組を呼びつけ指示を出す。


「任せてください親分!」

「こんなの朝飯前ってやつですよ!」

「オラ達、親分のために頑張るんだ!」


 久々の仕事に三人組はやる気満々な様子。そんな部下達の様子に親分らしき男も機嫌がいい。


「よし。行くぞお前ら」


「「「うすっ!!」」」


 意気揚々と店へと入っていくチンピラ達。


「(これであの店も終わりだな……!)」


「「「「ごめんなさーーーいっ!!!!」」」」


 中から叫び声が聞こえると、すぐに男達が慌ただしく飛び出してくる。


「お、おい!どうしたんだ!!」


「ふざけるな。あの女が相手とは聞いてないぞ!!」


「なに?…」


「とにかく俺達は帰る!あ、お詫びに金は貰ってくぞ」


「ま、待て!」


 親分らしき男は金の入ったバッグをタンダードルから奪うと部下達と共にぶつくさと文句を言いながら逃げるように消えていった。


「なんなんだ……どいつもこいつもこの私をバカにしやがって!!」


 望み通りにならかった末に金まで持ち逃げされたタンダードルはその怒りの矛先すらどこにぶつけていいか分からなかった。


「シェフ、タンダードル」


「今はイライラして…オーナー!」


 普段は貴族御用達の本店にいる筈の方がどうしてここに。


「あなたには期待していたから、本当はこんな事を言いたくは無かった」


「待ってください!私はまだやれます!悪いのはあの女なんです!あの女さえいなくなれば!」


「黙りなさい!!人の悪口を言う前に自分を見直しなさい。それすら分からない部下は私には必要ありません」


「待って……!」


「クビです」


「そ、そんな……」


 非情過ぎる宣告にタンダードルは叫くことも出来ず、その場で呆然とするしか出来なかった。


 そんな様子を一台の馬車が遠くから見守っていた。馬車の中から男はカーテンを少しだけ開けて外を覗く。


「凄い人だかりだな。近くで何かあったのか?」


「王子ここですよ。最近流行ってると噂の店は」


「以前話していた店のことか。だが普通の食堂だと言ってなかったか?」


「それがどうやら普通では無いようなんです。しかし噂以上の凄い行列ですな」


「普通じゃないか。面白い…覚えておこう」


 王子は謎めいた笑みを浮かべながら静かにカーテンを閉めると、そのまま馬車は走り出した。


ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


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