29、魔法使いも知らない美味しくなる魔法
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美味しいだけじゃ足りない、見た目だけで圧倒的に人を魅了する何か。私は既にそれを知っていたんだ。
だって日本では当たり前だったから。それはアイドルともよく似ていて、私も何度か経験がある。
日本のある街にそれは存在し、世の人々を魅了してきた日本独自の文化。
「「メイドカフェ!?」」
「でもここはカフェじゃないから〜メイド食堂って感じかな。意外と受けそうだと思わない?」
唐突で聞き覚えのない言葉の連続にダグラス達は驚いていた。
「それってあのメイドさんですか?」
「そう。あのメイドさんよ」
「まさかメイドに俺の作った料理を運ばせるのか?」
「私達があの店に勝つ為に必要なのは味じゃなくてインパクト。もちろん味だって妥協する気は無いけどね」
普通のメイドカフェは味よりサービス。かわいい女の子とおしゃべりしたり写真撮ったり。でもそれだと普通だし、食堂のいい所まで無くなってしまう。だからメニューは名前だけを変えて、味は前より更に美味しくする。
この人なら料理人としての技量もあるから、私がちょっと教えれば上手く作ってくれるはず。
普通の店より美味い料理を手軽に味わえて、尚且つかわいいメイドさんと楽しい時間も過ごせる。そんな夢みたいな店が存在したなら、あんな見た目だけの最悪な店に負けるわけが無い。
「だから私を信じてくれませんか?」
「よく分からんが、そのメイド喫茶とやらに店を変えれば客が戻ってくるんだな?」
「もちろん」
スミレはなんの躊躇いもなくキッパリと言い切ってみせる。
「ハルア。お前はどう思う?」
「私はやってみたい。このままこの店を潰すなんて絶対嫌だから!」
「俺も同じ気持ちだ。なんでもすると言ったんだ。全部君に従おう」
「ありがとう。絶対に後悔はさせません」
そうと決まれば早速取り掛かりらないと!
「だけど、こんな食堂で働きたいというメイドがいるとは正直思えない。そんな金も無いしな……」
「そこは安心してください。暫くは私とハルアちゃんで頑張りますから」
「え、私ですか!?メイドなんて無理ですよ!」
「自信持って。なんてたってハルアちゃんは私が認めた一番星なんだから」
「一番星?」
「それだけ期待してるってことよ。あと一つ提案があるんだけどね、料理を出す時に……」
――
そんな私の狙いは大当たり。今では私達目当ての客はもちろん、料理の味を気に入った大勢の客が訪れている。この調子で行けばマーケットからの借金も簡単に返せそうだ。
「確かにお前の言う通り店を繁盛させるのは味だけじゃない。だが所詮は最初だけだ。味が悪ければその内客も来なくなるぞ」
よく言うわ。
「ご忠告ありがとうございますご主人様。でもご安心ください。そっちの方は折り紙付きですので」
「なに?…」
「お待たせいたしました〜ご注文のもえもえオムライスでございます!」
運ばれてきたのは見るからにふんわりとろとろのオムライス。表面にはトマトを煮詰めて作ったケチャップで大きなハートが描かれている。
メイドカフェといったらやっぱりオムライスよね〜。
材料も鶏肉や卵があれば作れるから元々親子丼を売りにしていた店にもピッタリってわけ。余計な材料を買わずに済むし、手順もさほど難しくはない。
元々店主の料理の腕前は私のお墨付き。ざっと手順を教えて、一度見本を見せたらそれでなんとなく作れちゃうんだからやっぱりプロは違うわよね。
「こんなかわいい料理初めてみた……」
「なんなんだこの妙な料理は」
初めて見るオムライスに興味津々なタンダードル達。
「ふん…見た目は良くても味が悪くてはな」
「お待ちくださいご主人様」
試食しようとするタンダードルの手を止める。
「なんのつもりだ?」
「実はまだ大事な仕上げが終わってないんです。このままではこの料理は美味しく召し上がれないんです」
完成していない料理を客に出すなど許されることじゃない。やはり所詮は見掛け倒しだったってことか。
「料理も満足に出せないとは呆れたものだな」
「これから料理をもっと美味しくする特別な魔法をかけさせていただきますね〜」
「魔法だと!?」
あり得ない。料理の味を良くする魔法など見たことも聞いたこともないぞ。なのに、この女の自信はなんなんだ。まさか、本当にそんな魔法が存在するというのか!?だがこの女はドラゴンを従えるだけの力を持っている。もしかしたりするのか?いや、そんなわけ……。
「それではみなさんご一緒にせーので行きますよ〜!」
バカな!ここにいる全員で魔法を詠唱するというのか!?一体この女達はどれほど強力な魔法を唱えるつもりなんだ!
「せーの、!」
「「「おいしくなーれ!萌え萌えキュン♡!!」」」
メイド達は一斉に手でハートマークを作り、客も一体となり魔法の呪文を熱唱する。なんの恥じらいも感じれないまま唱えられた魔法は店内中に響き渡り恥妙な幸福感と一体感を生み出した。
「は?……」
「さあどうぞ。お召し上がれ!」
「もう魔法がかかったのか?……」
「はい。今のでこのお料理はもっと美味しくなりました!ほら、一口食べてみてください」
あれは本当に魔法だったのか?何かが起こったわけでも光ったりしたわけでも無かった。なのにどういうことだ。あの魔法を唱えてからというもの、オムライスが不思議と美味そうに見えて仕方がない。まさかこの私まで魔法にかかってしまったというのか!?
「食べないんですか〜しょうがないなぁ。じゃあ特別ですよ。ご主人様のために私があーんしてあげます!」
スミレはスプーンをゆっくりとタンダードルのくちもとに近づけていく。
「や、やめろ。来るな!」
上にのってるソースが赤いのはまだ分かる。だからってなんで米まで真っ赤なんだ。何が起こったかも分からない魔法がかかったこんな得体の知れない料理を食べれるわけないだろ。
「そんなこと言わないでください。ほら、あーーん」
「来るなー!!!……」
スプーンは半ば強引にタンダードルの口へと捩じ込まれていく。
「!!」
その瞬間、タンダードルは目を大きくかっぴろげ自然と口角が上に上がる。
「どうですかご主人様?」
「こんな感情初めてだ。口の中が幸せでたまらない……!」
赤い米の正体はトマトだったのか。全体的に甘酸っぱい味付けがクセになって次から次へと手が伸びる。中に入ってる肉や野菜も硬くなくて米と全く喧嘩していない。今まではどれも別々に食べていたがこんなに相性が良かっただなんて知らなかった。
「この黄色くて異常にふわふわしている物はなんなんだ?」
「ギカントバードの卵で作ったオムレツでございます」
「卵だと!?ギカントバードの卵は硬くて食べにくい筈だろ」
ギカントバードの卵は茹でて食べるの普通でそれ以外の調理法などそもそも聞いたことが無い。どうやればこんな生でも火が通り過ぎてる訳でもない食感になるのだ!
「申し訳ございません。いくらご主人様のお願いでもそれには答えられないんです〜」
「そこをなんとか頼む!料理人としてどうしても気になるんだ!」
先程まで否定的だったタンダードルの態度も今ではオムライスに興味津々だ。
「そこまで仰るならちょっとだけですよ〜」
「それでいい。早く教えてくれ!」
「それは〜」
スミレは敢えてゆっくりと話し勿体つける。
「それは?」
「それは、ご主人様への愛情です♡」
「あい、じょう……?」
あざとく発されたその一言にタンダードルはガクッと崩れ落ちる。
「あれーご主人様〜!大丈夫ですか〜!」
「(負けた……よく分からないが、私は圧倒的に負けた気がする…)」
メイド達の声もタンダードルの耳には入らず、項垂れたまま時間だけが過ぎていった。
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