26、危機一髪!竜王のモノに手を出すな
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「やれるもんならやってみなさいよ」
「なに?」
私は額に突きつけられた指を力強く握りしめる。
「ほら、どうぞ。ぶち抜くんでしょ?早くしなさいよ」
「普通じゃないとは思ってたが、これは予想以上だな」
「どうしたのよ?あ、やっぱり私のかわいい顔は傷つけられない?そりゃそうよね。だって私の顔は、」
「……いや、傷つけられるさ」
男が握る小さな杖が青白く光ると、再び指先から空気の玉がスミレの脳天めがけて発射される。スミレの周囲は白いモヤが辺りを覆い囲んでいる。
「スミレさん!!」
「あんまり言うもんだからな、望み通り叶えてやったよ。冥土の土産くらい与えてやるべきだったか……なっ?」
「どうしたんです親分?」
「指が、離れない……何故だ…!」
「それを言うなら、普通より強くてちょっと変わってる美人の間違いでしょ?」
「なっ!?……」
白いモヤが晴れると、額には傷一つ付いていないピンピンしたスミレの姿が見える。
「ごめんなさい。私の体、自分やアナタが思ってる以上に傷つきにくいみたいなのよ」
……良かったーー!!私生きてる!!あの時は正直マジで死んだかと思ったわ。竜王の眷属になって本当に良かったーー!!
それにしても冥土の土産なんてくさい台詞本当に言う人がいるのね。あんなのドラマや漫画の世界だけの言葉だと思ってたわ。
……あ、そうだ!思いついたわ。美味しい料理だけじゃ足りない、一瞬で客を魅了できるインパクトのある方法が!
「この化け物が……」
「はぁ?こんなかわいい女の子に化け物とは失礼なんじゃなくって!?」
「…化け物は化け物だろうが!!」
男も多少の恐怖を感じたのか、怒りに身を任せてスミレの頬を叩く。
「いったぁい!」
本当はあまり痛くないけど。
「もうっ!アイドルの顔に何すんのよ!」
私は男の腕を掴むと勢いのまま、金メダル級の一本背負いで見事地面に叩き落とした。
「ぐあぁっ…!」
「私もびっくり。見よう見まねでも案外できるものね」
男は思いもよらなかった衝撃に呆気を取られていてしばらく動けそうにない。
「よし、今のうちに」
「動くなぁぁ!!」
「これ以上動くと女達の命がどうなってもいいのか!」
「もうお前の好きにさせないんだ!」
いつの間にあの三人がハルア達を人質に取っていたのだ。
「小癪な。ちょっと可愛げあると思ってたのに…」
「アイツらああ見えてもやる時はやるんだよ」
「アナタがあの三人を見捨てない理由が分かった気がするわ……」
目を覚ました男も三人組と合流する。
「よくやったお前達」
「こんなの当然ですよ!」
「俺達だってたまには親分の役に立ちたいんです」
「オラ達も頑張るだ!」
せっかくのチャンスだと思ったのに。
「形勢逆転だな。化け物みたいなお嬢さん」
「……」
「さてと、普通にやっても殺せないようだしどうしたものかな…」
「そんなの決まってますよ親分!」
「こんな化け物相手にするだけ無駄ですよ!」
「逃げるが勝ちなんだ!」
「だな。お前ら女どもを連れてけ」
まずい。このままじゃハルアちゃん達が連れて行かれちゃう!だけど下手に私が突っ込んだりしてハルアちゃん達に何があったら大変だし…もうどうすればいいのよ。
「じゃあなお嬢さん」
男が余裕気に倉庫を後にしようとしたその時だった。
「ん?……ぬおおっ!!」
突然、大きな音と共に倉庫の扉が勢いよく吹き飛んできて、親分と呼ばれた男はその扉の下敷きになってしまう。
「「「親分!!」」」
三人組は慌てて親分の救出に向かう。
「来るのが遅いのよ…リュー!」
「間に合ったのだから文句を言うな。我の言いつけを守らず勝手に誘拐などされおって……」
「私だって好きでこんな目に巻き込まれたわけじゃないのよ!」
「どうだかな。お前がそれを呼び寄せたのではないか?」
「何よそれ!」
会って早々誘拐犯そっちのけで口喧嘩を始めるスミレ達。
「助けてやったんだ。文句を言う前にお礼の一つくらい言ったらどうなんだ?」
「助けてなんて頼んでないわよ」
「でも本当は待ってたんだろ?」
「別に」
「強がりだな。お前が絶対絶命だったことくらい我にはお見通しだ」
「何がお見通しよ。お見通しならこうなる前になんとかしなさいよ!!」
人質も男達も完全に蚊帳の外。三人組に助けられた親分はその様子に痺れを切らし大声をあげる。
「お前ら何勝手に俺達の事忘れてんだよ!ちょっとはこっちを気にしろよ!!」
「「お前は黙ってろ!!」」
息ぴったりの二人の声が聞こえると同時に、リューの力でもう一つの扉が吹き飛び再び親分を下敷きにする。
「「「「親分!!!」」」」
下敷きになったまま男は今度こそ完全に意識を失ってしまった。
「あ、」
「思ってたより呆気ない幕切れだったな。もう少し骨のあるものだと思ってたのだが」
「まあ、早く終わったから良かったんじゃない?」
「それもそうだな。帰るとするか」
「ちょっ待てよ!」
おっと、なんかどこかで聞いたことあるセリフ。これっぽっちもロマンチックじゃないけど。
「なによ?」
「なによ?じゃない!!」
「よくも親分をやってくれたな!」
「仇はオラ達が討つだ!」
三人はそれぞれの得意武器を構える。
「行くぞ!フォーメーショントライアングルだ!」
「「おう!!」」
一人の掛け声を合図に残りの二人も揃って散会。息ぴったりの連携であっという間に私達を三方向から取り囲んだ。
「どうだ!これが俺達の必殺フォーメーションだ!」
「もうお前達の逃げ場は無いぞ!」
「諦めるなら今の内なんだ!」
「あのさ、凄く自信満々に言ってるけど、ただ周りを囲んだだけでしょ?しかも隙間だらけだし」
「「「なん、だと!!……」」」
寧ろ驚きたいのはこっちなのに。言われてみたら確かにって心の声が今にも聞こえてきそうだわ。
「なんかやっぱりかわいそうな人達ね……」
「ただマヌケなだけだろ」
リューは辛辣ね。もっとオブラートに包んであげればいいのに。
「おいお前達、本当に我らとやるつもりか?」
「あ、当たり前だろ!」
「この女達を無事貴族の元にまで届けるのが仕事なんだ。出来なきゃオレ達の首が飛ぶ!」
「それ、言っちゃいけないヤツんだ……!」
「しまった!……」
慌てて口を塞ぐがもう遅い。
「そんなことだろうとは思ってたけど、やっぱり最低ね。この世界の貴族もアンタ達も」
「故に我らと戦うだけの覚悟がお前達にあるというのだな?」
「聞かれちまったらしょうがねぇ…」
「あの世で俺達の口を滑らせたこと後悔しろ!」
「覚悟するだ!」
「……止まれ」
リューがそう一言口にした瞬間、今にも飛びかかろうとしていた三人組の動きがピタッと静止した。
「どういうことだ……!?」
「急に体が、重くなった……」
「う、動けないだ……!」
「マヌケなのは分かっていたが身の程知らずもここまできたら清々しいものだな。ならば我が直々にお前達を殺してやろう」
リューの目つきが一段と鋭くなる。
「死」
「待って!」
リューの声が聞こえなくるほど私は大声でそれを遮った。
「そこまでは頼んでない」
「何故だ?相手が人間だからか?」
「人が死ぬ瞬間なんて見たくないに決まってるでしょ……」
「甘いな。甘すぎるぞスミレ!そんな与太事が通用する世界だとでも思っておるのか」
「甘くて結構よ。私の前でそれしたら絶対許さないから!」
がんとして自分の気持ちを譲ろうとしないスミレに対してリューも全く譲ろうとはしない。
「だとしても、我の眷属に手を出して無事でいられては我が困るのだ」
「それなら二度とからあげ作らないわよ。もちろんカレーも」
「なにっ!?」
先程まで険しいリューの表情からあわあわとした様子へと一変する。
「わ、我がそんな脅しに屈するとでも……?」
「それならそれまでよ。私だって覚悟はできてる」
「スミレ、貴様というやつは……!」
スミレの一切ブレない態度にリューは大きなため息を吐く。
「そこまで言われれば仕方ない。今回だけだぞ。眠れ」
三人組は一気に膝から崩れ落ちるとあっという間にイビキをかきはじめる。
「これなら文句無かろう」
「言っとくけど私と一緒にいるならこれからずっとよ」
「…分かった。その代わりちゃんとからあげは作るのだぞ!」
「約束を守ってればね」
「だから守ると言ってるだろ!」
二人はそんな調子で言い合いを続けながらその場を後にしようとするとハルアが二人を呼び止める。
「あの、スミレさんは一体何者なんですか?」
「私?私は、」
「料理番だ」
「アイドルよ」
「「は?」」
異なる答えに二人は目を合わせ再び言い合いを始める。
「私はアイドルよ!」
「いいや、お前は我の料理番だ!」
「今はね。でも心はずっとアイドルなのよ!」
「知るか。料理番は料理番だろ」
「アイドル!」
「料理番!」
人質達そっちのけで終わらぬリレーを永遠に繰り返しながら二人はハルア達を連れて無事帰還したのであった。
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