19、便利な収納術とお願いスミレ様
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マーケットの案内で商会の裏庭までやってきたスミレ達。
いち早く目に入ったのは、山のように高く積みあげられた大量の肉塊だった。
「うわ……」
「うおおおお〜!!!」
私のリアクションとは対照的に大声を上げて喜ぶリュー。食事以外でこんなにテンションが高いのも珍しい。
「どうぞお受け取りを」
いやいや、この量どうしろっていうのよ。正直、あの量の金貨よりこっちの方が相当困る。時間が経っても金貨は使えるけど、肉は腐ったら使えなくなるんだもん。
「どうしたスミレ。これだけの肉があれば料理し放題だぞ!!さあこの肉を使って我を満足させてくれ!!」
「そういう問題じゃなくてさ……」
「何が問題なんだ?」
「さっきの金貨も、この肉の塊もこの前みたいにずっと浮かせて持ち歩くつもり?そんなのしたら目立ちたくなくても目立つわよ」
「なんだそんなことか」
「は?」
リューは余裕気に私の心配を嘲笑う。
「それなら他の方法を使うまでだ」
「他の方法?」
「肉に手をかざして〈収納〉と唱えてみろ」
「なにそれ?ふざけてるの?」
「いいから従え」
リューは一体なにを考えているのかしら。噂を聞きつけた人だかりが遠くから私達を見てるのよ。肉に話しかけるとか、どんな不思議ちゃんよ。
「早くしろ。やれば分かる」
「分かったわよ……」
人の目が気になりこれ以上は揉められない。スミレは仕方なく渋々肉塊に手を伸ばす。
「収納……」
言われるがまま小声でそう唱えると、一瞬で大量の肉塊が姿を消した。
「は!?」
「おい、肉が消えたぞ!!」
「なんだあれは…一体なにがどうなったのだ!?」
「まさか今のは……」
驚いてるのは私だけではない。その奇想天外な事態に周囲も騒然としている。
「今度は頭の中でもう一度肉を浮かべてみろ」
「…うわっ!」
言われた通り頭に思い浮かべてみると、突如として目の前に大量の肉塊が再び姿を表す。マジック。いや、これは魔法だわ。
「ねぇ、私なにしたの?」
「一時的に別次元へ肉を移動させた。ただそれだけの話だ」
「いや、それじゃ無理。大体、私はこんなのいつの間に使えるようになったのよ?」
「難しいことは考えるな。お前は我の眷属なのだぞ。この程度出来て当然、一々驚くな」
そっか。私って竜王の眷属だもんね〜……それで納得できるかー!!
驚きすぎて1人で勝手に心の中でノリツッコミをしてしまった。
まさか私まで魔法みたいなことが使えるようになるだなんて…ほら、まだ心臓がバクバクいってる。
「やはり竜使いは一味も二味も違いますな〜。貴重な収納系スキルまでお持ちとは、流石はスミレ様です」
「ありがとうございます…」
私もよく分かってないんですけどね。でも、これが規格外の力だってのは今のでよーく分かったわ。これからはあまり目立ったところでは使わないようにしないと。
「因みにだが、収納された物はその時より時間が一時的に止まっている。故に肉が腐る心配も無い」
だけど、改めて考えると便利な能力よね。これだけの量を一瞬で片付けられて、しかも時間まだ止まるから冷蔵庫や冷凍庫いらず。使い道次第でこの能力だけでも何か商売が出来ちゃいそう。
「これなら文句も無かろう」
「そうね。だけどさ、こんな便利な力があるならなんで最初から教えてくれなかったのよ」
「それはだな…」
「それは?」
「我も暫く使っていなかったからな。すっかり忘れていた」
「もう、なによそれ……」
何はともあれこれで全て解決だ。今までみたいにモンスターの亡骸を宙に運ぶ必要も無いし、あれだけの金貨を大勢の目に晒すことも無くなった。
「これで準備は整った。さあ、メシだ!帰るぞスミレ」
「そうね」
取り敢えずはこれで一安心ね。そう思ったら私までお腹が空いてきた〜。
「マーケットさん今日はありがとうございました。では私達はこれで、」
「お待ちください」
支払いも済ませ、用件は全て終わった筈なのに何故か引き止められた。
なんだか妙な胸騒ぎがする。
「風の噂で聞いたのですがスミレさんの作る料理はとても絶品だとか」
「ええ。まぁ…」
SNSが無くても人の噂ってのは本当に広まるのが早い。
「どうかその料理の腕を見込んで一つお力を貸して頂けませんでしょうか!?」
「……はい(ほらね。あーあ、またご飯お預けか。お腹、空いたなーー!!)」
私の心からの叫びは心の中でそっとこだまするだけであった。
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