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18、金より肉

閲覧感謝です!


「我が来たぞ!さっさと肉をよこせ!」


「だから引っ張らないでってば…!」


 私を強引に連れながら、リューがマーケット商会の門を勢いよく開く。


「え!?」

「うわっ!?」


 あーあ、第一印象最悪……。

 ほら見なさいよ。竜を連れた女がいきなり殴り込んできたから、職員の皆さん唖然としちゃってるじゃない。


「あの、お騒がせしてすみません。マーケットさんはいらっしゃいますか?」


「えっと、失礼ですが、お名前をお聞かせ願えますか?」


「スミレです。それと、こっちの小さなのが従魔のリューです」


「従魔ではない。スミレが我の眷属なのだ。そこを間違えるでない」


「今は黙ってて…!」


 竜王のくせに細かいわね〜。誰のせいでこんなことになってると思ってんのよ。


「やはりそうでらっしゃいましたか」


「え?」


「竜使いのスミレ様とリュー様ですね。会長が奥の部屋でお待ちです。どうぞこちらに」


「あ、はい…」


 さっきまでの唖然とした様子が嘘のように、きびきびと私を奥の部屋へと連れていく。

 少し気になったのは、それまでに通りすがった職員の全員が私に頭を深々と頭を下げるのだ。


 いくら私が取引き相手だからって、そこまでされる覚えは無い。モンスターの買取だって珍しいことじゃないだろうに。


 ここまでされると逆に複雑。日本でアイドルやってた時もこんなことは一度もなかった。


「会長。スミレ様とリューがいらっしゃいました」


「どうぞ」


 受付嬢に案内されるがまま、私は会長室へと足を踏み入れる。

 部屋の中に入るとあら不思議。先程までの受付からは考えられない程、実に豪華絢爛。高そうな掛け軸が飾ってあれば、どこぞの有名作家が作った派手な壺もある。正に絵に描いたような金持ちの部屋といった感じだ。


 正直、趣味が悪い。やっぱり人は見た目じゃ分からないものだ。

 自らの見る目の無さを反省しながら、昨日ぶりにマーケットと顔を合わせる。


「そろそろ来る頃だと思っていましたよ!」


「マーケットさん。昨日は色々とありがとうございました」


「いえいえ。寧ろお礼を言うのはこちらの方ですよ!あのような貴重なお品物を譲っていただけたこと、実に感謝しております」


「その件なんですけど…」


「承知しております。支払いの準備も既に終わっております」


 良かった。これで暫くの生活費と今日の朝ご飯には間に合いそうだ。


「肉は!?」


「リュー。急かさないの」


「金よりも肉の方が大事だろ!」


 普通は逆だと思うけど。でも、一貫しても食いしん坊なところは実にリューらしいわね。


「で、どうなんだ!?」


「ご安心を。昨日、職員総動員で街の武器屋や肉屋に声をかけ解体にあたり、その件も既に完了しております」


「当然だな」


 リューは満更でも無さそうに笑みを浮かべる。


「では早速支払いの方を行いたいと思うのですが、心の準備はよろしいですか?」 


「え、あ、はい」


 心の準備?


 マーケットが指を鳴らすと、大量のアタッシュケースを抱えた受付嬢達がぞろぞろとやってくる。


「は?……」


 私は余りの想定外の光景に頭が回らなくなる。


「ご確認の方を」


 受付嬢達が順に開けていくと、中にはケースびっしりに金貨が詰まっている。凝視するのが辛くなるほど、キラキラと金色の光を輝かせている。


「うわ、なにこれ……」


 余りの量に開いた口が塞がらない。てか、ちょっと引くわ。


「キラーベアー。それにカオススネーク、ヘルズボア、ネビュラホーク全て合わせて金貨777万枚でのお支払いとなります」


 揃いも揃った数字なだけにまさにビッグボーナス。部屋の趣味は悪いが、金払いは太っ腹だこと。王都2日目にしていきなり大金持ちね。

 インガスの店で売っていた串焼き一本が銅貨1枚。昨日泊まった宿が銀貨3枚。確か銀貨100枚で金貨1枚分だって聞いたから……うん。計算するのやめた。こういうの私苦手なのよ。


 てか、量多くない!?


「あの、量間違ってません?…」


「もしかして足りませんか?」


 想定外の質問に一瞬たじろいだ様子を見せたマーケットだったが、その反応が私にとっては想定外。


「いやいや!そうじゃなくて額の桁が違い過ぎませんか?私もこの手の事は詳しく分かりませんがこの額はいくらなんでも常識外れだと思います」


 いくら私がお金に困ってるからって、いきなりこれだけの量を一度に手にするのは流石の私も気が引ける。


「何をおっしゃいますか!私としてはこれだけしか出せないのが心苦しいくらいなのです!」


「え……」


「いいですか?今回のモンスターはどれも珍しく中々市場に出回る物でもありません。何より凄いのは傷一つ付いていないそのモンスターの状態です」


 傷一つ付いて無いのも当然だ。だってリューはたった一言発しただけだもの。


「レア度に関わらずこれほど状態のいいモンスターの素材自体が稀なのです。つまりこの額はそれ相応に見合った額と考えていただきたい!」


 これでもかと熱量のこもったマーケットの力説に半ば押され気味のスミレ。


「でも流石にこの額は…」


「それにこれで得をするのはスミレ様や我々だけでは無いのですぞ」


「というと?」


「買い取った素材は武器屋に下され、武器や防具に変わります。武器はやがて冒険者の力に変わり、防具は冒険者を守る命綱になることでしょう。アナタの活躍は巡りに巡って多くの冒険者達の命を救うことになるのです。それを考えればこの額は安いくらいです」


「なるほど……」


 マーケットのもっともらしい説明に私は分からずとも納得せざるを得なかった。


「どうかお受け取りを」


 再び深々と頭を下げるマーケット。それに続くようにケースを持ってきた受付嬢達も頭を下げる。


「はい。有り難くお受けいたします」


 ここまでさらたら断れるわけがない。お金など別に腐るもので無いし貰える物は貰っておくべきか。

 だけどどうしたものかしら。これだけの大金を銀行に預けられないだなんて、気でもおかしくなりそうだわ。


「金貨のことなどどうでもいい!次は肉だ!!」


 お金に囚われず、自分の欲望に忠実なリューが羨ましいよ。


「承知しております。それでは外へ参りましょうか。ここでは少し窮屈ですので」


ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


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