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竜王様の料理番〜国民的アイドルの私がドラゴンの生贄になったので逆に胃袋を掴んで沼に落としてやりました〜  作者: 春風邪 日陰
第1章 国民的アイドルが異世界転生!私はただセンターになりたかっただけなのに…
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14、竜王との約束

閲覧感謝です!


冒険者登録のために私達はギルド内の地下の訓練場に通された。


「それではこれよりスミレさんにはある簡単な試験に挑戦していただきます」


「試験なんて必要ないだろ。実力ならさっきので証明されたじゃないか」 


「そういう問題ではありません。ルールなので」


シュナイベルトはバイラスの口を噤む。


「あの、もしこの試験が不合格だったらあの話も無しってことですよね?」


「試験とはいえ形だけですから。殆どの皆さんが合格するのもですし気を楽にしてくださって結構ですよ」


殆どって、全員じゃないんだ。そういうのが案外一番油断できなかったりする。


「安心して。スミレちゃんなら大丈夫だよ」


「そうだ自信持ちな。君の実力ならこの程度の試験はなんてことないはずだ」


とはいえ試験というものは何が起きるか分からない。私も頑張らなきゃね。リューからはこれっぽっちもやる気を感じないけど策なら考えてある。


「試験は至って簡単です。あそこに見える3つの的を攻撃してください。どんな方法を使っても構いません」


要するになんとかしてあの三つの的を破壊すればいいってことよね。


「そういうことだからリュー、準備はいい?」


「知るか。我は協力せんぞ」


「なんでよ?」


「お前が勝手に決めたことだろ。我は関係ない」


「お願いだから力を貸して。リューじゃなきゃこの試験を突破できないのよ」


「知ったことか」


分かってはいたけどやっぱりゴネてきたわね。いいわ、そっちがその気ならこっちも考えがあるんだから。


「いいの?私にそんな態度とってたらきっと後悔するわよ」


「なに?」


私はリューにだけ聞こえるように声を絞る。


「この試験を無事に突破できたならリューが食べたことのない肉料理を作ってあげる。それならどうよ?」


「お前が我の為に料理を作ることは当然のことだ。話にならん」


「だったら二度と私はリューの為に料理を作らない」


「なに!?」


こそこそと二人で話しているスミレ達の様子を心配気に見守るカイゼル達。


「スミレちゃん達、何してるんだ?」

「作戦会議とか?」

「そんな風には思えないが…」


「ふざけるな!!」


感情が昂るリューの声が響く。


「ふざけてない。私は本気よ」


「命が惜しくないのか。我はお前を喰らっても構わないのだぞ」


「そうしたいなら好きにして。覚悟は出来てる」


「貴様……!」


別に私は冒険者になりたいわけじゃない。でも、冒険者になればもしかしたら元の世界に帰れる手がかりが見つかるかもしれない。少なくてもあの森で暮らしてるよりはよっぽどマシだ。


「私は帰らなきゃいけないの。その為ならなんだってするって決めたのよ!」


「……そうか。だったら望み通りここでお前を喰らってやるわ!!」


一瞬でリューの周りの空気が一変する。殺気とも似た悍ましい気配が私を襲う。

私が初めてリューと会った時に感じたあの感覚だ。


心からの恐怖、怖いという純粋な感情。今にも私はそれに押しつぶされてしまいそうになる。


だけど諦めるわけにはいかない。あっちで私のことを待ってくれる人がきっといる。そんな人が一人でもいる限り、私が諦めることは許されない。


「から揚げ、とんかつ、ハンバーグ、生姜焼き」


「さっきからブツブツと何を言っている?……」


「私が作れる肉料理の一例よ。もちろんこれはほんの一部だけどね」


「それが全部肉料理だというのか!?」


それがどんな料理か知らずとも、食べずに分かる美味い料理ばかり。


それらの名前を耳にしただけでリューはヨダレをだらだらと垂れ流している。


「そんなに気になるなら、正直になったら?」 


「はっ!…」

ふと我に戻り冷静を装おうとするが時既に遅し。リューの胃袋は既に手中の中にあり。


「手伝ってくれたら今言った料理いつか全部作ってあげる」


「料理程度で竜王である我を懐柔できるとでも?」


「できる」


「フッ。我も舐められたものだな」


「約束は守る。だから、私に力を貸して」


リューの目の前に小指を伸ばす。


「?」


「ほら、リューも私の真似して」


「こうか?」


「そう。これが私とアナタの約束したって証」


私が先導して優しく指を絡ませる。


「証か……良かろう。特別に力を貸してやる。その代わり約束は守れよ」


「もし私が約束破ったらその時は罰として針千本飲んであげるわ」


「必要無い。その前にお前を喰らってやる!」


「上等!」


リューは私の気持ちに答えるように自らの指を私に絡ませた。


「お待たせしました」


改めて、私は的の前に立つ。


「スミレさん、準備の方は大丈夫ですか?」


「私はいつでも」

「我も構わん」


私達の意思を確認し、シュナイベルトが試験の合図を出す。


「では、始め!」


これはオーディションだ。自分の魅力をいかに上手くアピールできるかどうかが鍵を握る。その為にはまず目立たないと。


「遠慮はいらないわ。バーンと派手にやっちゃって!!」


「あの的を破壊すればいいのだろう?容易過ぎる」


みんな私達のことを注目している。だから派手な技で一気に決めてみんなの視線を釘付けにする。ドラゴンだものその位できて当然よねー。


「爆ぜろ」


リューがそう一言、言葉を発すると一瞬で3つの的が纏めて粉々に砕け散った。


「終わったぞ」


「え……」


余りにも呆気ない結果に一同騒然とした空気が流れる。


「ねぇ、今ので終わり?…」


「言われた通り的は破壊した。これで文句は無いだろ」


「文句大ありよ!!」


「なに!?」


周囲の目も気にせず私はリューに食ってかかる。


「ちょっとこれどういうことよ!?」


「意味が分からん。我は言われた通りしただけだろ」


「ドラゴンなんだからもっと方法があったでしょ!?口から炎を出すとか、目からビームを出すとか色々さ!」


「この程度の事に余計な力を使う必要は無い」


「それじゃ目立てないのよ!!」


最悪だ。


派手にやれって頼んだのにこんな地味な技じゃ目立てるものも目立てない。きっと今のでドラゴンのくせに期待外れだったとか思われてるに決まってる。

ただでさえオーディションは第一印象が大事だっていうのに、リューのせいでせっかくのチャンスが台無しじゃない。


何百回とオーディションを不合格してきた私の勘が不合格だと言っている。あーあ、これでまた森の中に逆戻りか。


「おい、今の見たか?……」

「うん。見た」

「いつからここの的はこんなに脆くなったんだ?」


しかし、これを見ていたカイゼル達は私の想像とは遥かにかけ離れた反応をしている。


私のことを見に来た見物客達も同様だ。


ここにいる私以外の人間は全員驚いているよう見える。


「これがドラゴンの力ですか。想像以上ですね……」


「え、あのー、それってどういう意味でしょうか?」


「そのまんまの意味ですよ」


それって私が思っていたよりシュナイベルト達は私達に期待してなかったってこと?それならまだチャンスはあるかも。


「じゃあ結果の方は…」


「もちろん、」


「……」


私は思わず生唾を飲み込む。


「合格です!」


「やったーーーー!!!」


私は心の底からガッツポーズを決める。


こんなに嬉しいだなんて、アイドルのオーディションに受かった時と同じくらい嬉しいかも。


「あの、本当ですよね?後から不合格だったとか無しですからね」


「アレを見て不合格なんてあり得ませんよ」


「だってめちゃくちゃ地味だったから……」


「あれはもう、地味とか派手とかそういう次元じゃないんですよ」


「はい?」


この感じ、カイゼル達の前でリューが初めて喋った時と同じだ。何かやらかした、そういうアレだ。


「いいスミレちゃん?」


「?……」


「あの的にはね、腕に覚えのある熟練の魔法使いが100人がかりでかけた硬化の魔法が付与されてるの。だからね、普通は壊れるわけがないの」


「いやでも、試験は的を壊すことだって」


「ううん。的は壊すんじゃなくて、攻撃を当てるだけで良かったの」


「こんなの前代未聞です」


えぇぇ……。何よそれ、そういうのは先に言ってよーー!!


「試験は合格ですが、これは少しお話が必要なようですね」


自分が起こした事の重大さに頭を抱えるしかない。


ほら、シュナイベルトの顔も一見笑ってるように見えるけど、よく見ると目が笑ってない。


「どうする?…」


「逃げるか」


「そうね。逃げよう」


珍しくリューと意見が合った私たちはシュナイベルトがふと目を離した隙を狙って私は逃げようとする。


「あ、」


しかし、そんな私を見計らってか既にカイゼル達が回り込んでいた。


「そこまでだ」


「諦めなお嬢さん」


「もう逃がさないんだから!」


「ですよね〜……」


ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


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