12、チンピラは世界共通
閲覧感謝です!
「ここまで来れば暫く大丈夫だろう」
「勢いでここまで来ちゃったけどさ、ここどこなのよ?」
大勢の群衆から逃げるように街を駆け回っていた私はこの広い王都の中で迷子になってしまっていた。
「我に聞くな。とにかくこれ以上面倒ごとに巻き込まれん内に帰るぞ」
本当なら、このままここで暮らしたいくらいだけどあんな風に言い寄られるのはもう勘弁。
それに今日は色々と疲れた。今だけは野晒しでもいいから早く横になりたい。
「だけどここはえらい賑わいね。何かあるのかしら?」
通りすがる人々はみな重装備を軽々着こなす屈強な冒険者達ばかり。ここに人がが集まる理由でもあるのかしら?
「恐らく、ここにギルドでもあるのだろう」
「ギルド?」
「冒険者達が所属する組織の名だ」
つまりは冒険者達の会社みたいなことか。
「じゃあそれってまずくない?」
「だから早く行くぞ。ただでさえ我々は目立っている」
言われてみればさっきから通りすがる人達とよく目が合う気がする。
「それって私がかわいいから?」
「違う」
なーんだ違うのか。つまらないの。
「本当は分かってるわよ。リューがいるからなんでしょ」
まぁ、どんな女の子でもドラゴンを肩に乗せて歩いてたらたらそりゃ目立つか。
「分かってるなら急げ。決して奴らと目を合わせるなよ」
「はいはい」
リューに急かされながら私は下を向きながら足早に進んでいると、目の前を歩いていた男達とぶつかってしまう。
「痛っ!!」
「あ、すみません。大丈夫ですか?」
だけどいま、あっちの方から近づいてきたような?
慌てて倒れた男に手を差し伸べようとするが、リューが私の体を引っ張る。
「構うな。行くぞ」
「でも、」
「待てよ!!」
リューにされるがまま後を去ろうとするともう一人の男が私の腕を掴む。
「アンタどこ見て歩いてんだ!?」
「すみません。急いでて」
「それで済んだらわざわざ呼び止めなんかしねぇよ。謝罪もしないで逃げるとはいい根性してるじゃないか!」
「痛えよ兄貴……この女のせいで骨が折れちまったた!!」
「参ったな。一体どう責任とってくれるつもりだぁ!?」
最悪。面倒なのに引っかかった。
露骨なほど大袈裟に痛がる男と、あからさまに風貌の悪い男達。これほど分かりやすいカツアゲも今時珍しい。
だけど不思議なものね。
ドラゴンに食べられそうになったせいか、こんなに怖い男達が目の前にいるのに、不思議と怖く感じない。寧ろなんだか微笑ましく思える。
「ふふっ」
「なに笑ってやがる?…」
おっと、私としたことが。
「ごめんなさい。今のは気にしないでください」
「それならどう責任取るつもりだ?金は当然として、アンタよく見たらかわいい顔してるじゃないか?」
「俺達の相手してくれるってなら許してやってもいいぞ」
そのいやらしい目と薄汚い手つきで何を考えてるかはだいたい分かる。生憎、これもアイドルって職業柄そういうのは慣れちゃってんのよね。正直あんまりいい気分はしないけど。
「今なら許してやる。さっさと尻尾巻いて逃げるがいい」
サンキュー、リュー。流石にドラゴンが相手だって分かったらアイツらも逃げ出すでしょ。
「ど、ドラゴンが喋った!?」
「バカ言え。こんなのただの人形に決まってるだろ」
「でも、動いてるし」
「ちょっと知識があれば魔力を通して動かせる。こんな風にな」
男は通路にあった木箱は浮かし、自由自在に操ってみせる。
「流石だぜアニキ!」
「大方、人形が喋ってたのも念和の魔法を使った応用だろ。それなりに腕に自信があるようだけど俺達の方が上みたいだな」
これ見よがしに自信満々に言い切ってみせる。
どうしよう。めちゃくちゃこの二人が急に不憫に思えてきた。だってさ、言ってること全部間違ってるだもん。
何が魔法を使った応用よ、こっちは魔法のまの字も使ってないっつーの。魔法が使えたらアンタ達なんか相手にしてないわよ。
「アニキが本気を出したら痛い目じゃ済まないってことだ。さっさと諦めろ!」
「面倒だな。いっそのこと殺してしまうか」
「冗談でもやめてよ。そんなのごめんだからね」
周りには他に人はいるけど、こっちのことは見て見ぬふり。助ける素振りすらする気配はない。面倒ごとに首を突っ込みたくないのはみんな同じってことだ。。
「何一人でぶつぶつ言ってんだ?」
男がいやらしい手つきで私の肩を抱く。
「ちょっとなにすんのよ!!」
「え、」
その瞬間、頭で考えるより先に体が動いていた。
私は男の手を簡単に振り払い、逆に男の体を軽々と地面へと叩きつけた。
「なに勝手にタダで触ってんのよ!そんなに握手したいなら、CDの一枚、二枚くらい買いなさいよ!こっちはプライド持ってアイドルやってんだから!!」
「アイド、ル?……」
「あ、」
バカ。私、なにしてんのよ〜!!
ムカつき過ぎて咄嗟に本音が出ちゃった。だけど、ジムすら3日で辞めた私が、まさかこんな簡単に人を投げれるだなんて思ってもいなかった。
「どうなってんのよ私の体……」
「我の眷属ならこの程度できて当然だ」
「あのね、どこのアイドルが人を地面に叩きつけるのよ!」
アイドルってのはもっとか弱いものでしょ。これじゃアイドルってよりはプロレスラーみたいじゃない。
待てよ。それはそれでアリかも。人を投げれるアイドルなんてそうそういるものじゃないわ。それなら群雄割拠するアイドル業界でも目立てるかも!って、そんなこと言ってる場合じゃない。
「テメェ、やりやがったな!」
「アニキ!やっちまってください!!」
男はナイフを片手に、こっちへ突っ込んでくる。
「それは反則でしょ!?」
本能的に身がすくみ、体が動かなくなってしまう。
「そこまでだ」
ナイフを弾き飛ばすと、背丈程ある巨大な大剣を男の首元に突きつける。
「っ!!」
「彼女を傷つけることは俺達が許さない」
「テメェ…その紋章、どうしてお前達が?」
「カイゼルさん!」
何も出来ずに捕まったアニキの様子を見て、もう一人の男はすぐに立ち上がり全速力で逃げていく。
「うわぁぁぁ!!」
「おい!あの野郎、俺を置いて逃げやがったな!」
案の定骨折なんてのは嘘っぱちのようだ。でもこのままでは逃げられてしまう。
「ごめんよアニキ。アンタのことは忘れないぜ!」
「仲間を見捨てるなんてヒドい人。私、そういうの大っ嫌い!!」
突然、目の前に氷の壁が現れ道を塞ぐ。
「何が起こってる!?くそっ!」
仕方なく男は道を戻ろうとするが、背後から殺気を感じ足を止めた。
「逃すわけねぇだろ。大人しくした方が利口だぜ」
バイラスが背後からそっと短剣を突きつける。
「いけない子にはおしおきだよ」
ミレーヌがダメ押しばりに男の足を氷漬けにして身動きを完全に封じ込めた。
「カイゼルさん、助けてくれてありがとうございます。でも、どうしてここが?」
「騒ぎの声が聞こえてもしかしたらと思ってね、」
「そうでしたか…」
「まぁ、俺たちがわざわざ助けに来る必要もなかったかもだけどな」
バイラスが氷漬けにした男を軽々と背負いながらやってくる。
「スミレちゃーーん!!」
「わっ、」
まるで飼い主を待っていた子犬のようにミレーヌが私に抱きついてくる。
「急にいなくなっちゃったから、私、本当に心配したんだからね!」
「ごめんなさい…」
「やれやれ…これでまた森に帰れなくなるな」
リューがイヤそうに溜息を吐く。
「なんですかこの騒ぎは!?」
人一倍大きな声を出しながら集まってきた人々を掻き分けてくる。
ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。
よろしければブックマーク、評価を頂けると、とても励みになります!
少しでも「面白そう!」「続きが楽しみだ!」
などと思っていただけましたら、下↓にある【☆☆☆☆☆】から、
ポイントも入れてくださるとめちゃくちゃ嬉しいです!
次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。




