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竜王様の料理番〜国民的アイドルの私がドラゴンの生贄になったので逆に胃袋を掴んで沼に落としてやりました〜  作者: 春風邪 日陰
第1章 国民的アイドルが異世界転生!私はただセンターになりたかっただけなのに…
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11、あなたのハートを狙い撃ち♡

閲覧感謝です!


「お待たせしました」


 カイゼル達は目の前に置かれた串焼きの盛り合わせを目を丸くしてじっと見つめる。


「これが串焼きか?まるで別物じゃないか」


「焼き目はついているけど色も白っぽくて、これで本当に火が通ってるのかしら」


「だけど匂いは格別だぞ」


「フン。こんな半生のような串焼きが美味いわけが無いだろうが!串焼きは真っ黒、それが1番なんだ!」


 今までの串焼きとは少々異なる見た目に驚きを隠せない一同。しかし、体は正直なようで揃って腹の音を鳴り響かせる。


「それではどうぞお召し上がりください」


「匂いが良くても味がいいとは限らないからな……」


 店主は丁寧なフリを挟みながら恐る恐るもも肉の串焼きを口に入れる。


「こ、これは!!」


 感じたことの無い衝撃が電流の様に全身に流れる。


 その瞬間、店主の目には肉として使われたギガントバードが笑顔で微笑み幸せそうに踊る姿が見える。

 不思議な高揚感が全身を支配し、思わず踊らずにはいられない。


「あははは!!あははは!!」


 口の中で肉が踊り、旨味という名の汗を大量に吹き出しながら体の中へと流れ込んでいく。


「(こんな串焼きがこの世にあるだなんて……!!)」


「おっさん!おい、おっさんてば!!」


「ハッ!」


「大丈夫か!?」


 カイゼルの声が聞こえて我を取り戻した。


「俺は一体……」


「あの、服を着てもらえますか?」


「服?……うわっ!なんで俺は裸に!?」


 気づいたときには上半身裸で椅子の上に立っていた。


「おっさんが急に脱ぎ始めたんだよ」


「俺が?そんなの全然記憶に無いぞ……」


 店主は自らの状況に戸惑いながらも、右手に握りしめられた空っぽの串を見つけて確信する。


「知らぬ間に完食か……」


「そんなに美味かったんですか?」


「食べてみろ」


 カイゼル達も店主に続くように様々な串焼きを口にする。


「うおっ!」

「ぐわっ!」

「ふぇっ!?」


 それぞれが思うように声を上げたと思ったら、時が止まったようにしばらく動かなくなってしまう。


「あ、あの、大丈夫ですか?…」


「「「うまーーいっ!!!」」」


 そして時は動き出し、息を合わせたように声が重なり合う。


「美味い。美味すぎるぞこの串焼き!!」


 でしょ?そういうのもっとちょうだい。


「ジューシーで味も苦くない!こんな美味しい串焼き、私初めて食べた!」


 やっぱり苦かったんだ。それもそうよね、あんなに真っ黒だったんだもの。


「串ごとに部位が分かれているのもとても食べやすい」


「だけどなんでこんなに柔らかいんだ?串焼きってもっと筋っぽくて硬いもんだろ」


 あれがおかしいの。あんなのとは一緒にしないで。


「焼く前に筋を取って、肉は繊維を断ち切るように切りました。そうすると硬くなりにくくなるんです」


「たったそれだけのことでこんなに柔らかくなるのか」


「ねぇ、肉の間に刺さってるのって野菜?めちゃくちゃとろとろで美味しいんだけど〜!」


「それはねぎまですね。刺さってるのはネギという野菜です」


 しっかりと焦げ目のついたネギは香ばしく、中は果汁のように甘くとろとろだ。


「ネギ?」


「聞いたことのない野菜だな。それにこんな甘い野菜を食べるのは初めてだ」


「お嬢さん、こんな甘い野菜をどこから見つけてきた!?ウチにはこんな野菜は無かった筈だが」


「倉庫の隅っこにありましたよ。捨てられてたみたいでしたけど、まだ使えたので」


「捨てられたって、まさかあの野菜を使ったのか!?バカな、あり得ない…あれは辛くてとても食べれるものでは無かった筈だ」


 ネギって生で食べると本当に辛いのよね〜。薬味としてはいいアクセントになるんだけど、中々他の料理には合わせにくい。


「ネギは火を通すと甘くなる性質があるんです。だからこうやって焦げ目が付くくらいよく焼くと絶品なんですよ」


「驚いた。野菜を焼くなど聞いたことが無いぞ」


 カルチャーショック。それって本当!?


「え、炒めたりとか茹でたりとかしません?」


「野菜は生で食べるものだろ」


「…それってどんなに硬い野菜でもですか?」


「当たり前だろ」


 信じられない。通りで焦げた肉をあんなに美味しそうに食べるわけだ。私の想像よりこの世界の料理事情は遥かに劣っているのかもしれない。


「だけど美味いな〜!」


「ああ。美味すぎるぞ!手が止まらない!」


「カワイイのにこんな美味しい物まで作れるなんて凄いよスミレちゃん!」


「おいスミレ。我の番はまだか!!」


 幸せそうに串焼き食べる様子をリューが羨ましそうに、羽をパタパタと羽ばたかせながら今か今かとその時を待っている。


「よく我慢できました。いいわよ」


 私はリューのために串焼きの盛り合わせを予め用意しておいた。もちろん大盛りだ。


「食べてもいいのか!?」


「って、もう食べてるじゃない。いいけどさ」


 私の答えも聞かず、山盛りに盛られていた串焼きをあっという間に平らげてしまう。


「おかわり」


「なんて豪快な食べっぷりなんだ……」


「ちょっと早すぎ。少しは味わって食べてよね?あ、」


 そんなこともあろうと、おかわり分も用意していたのだがそれもすぐに食べ尽くされてしまう。


「で、どうだった?」


「美味かった。肉も野菜もさっき食べたのとは大違いだ。また作ってくれ」


「気に入ってくれたなら良かったわ」


 ――ギュルルルル……――


 熊のいびきのような唸り声が近くから聞こえてくる。


「……」


 店にいる客が全員、私の方を一斉に向いた。


「ごめんなさい、つい……」


 恥ずかしい〜!!アイドルなのに、私までお腹の音を鳴らしちゃうなんて、もう最悪。


「お前は食べないのか?ならば我が」


「ちょっと人の物まで取らないで」


「だったら早く食べろ。肉が勿体ない」


 言われなくても食べるに決まってる。私だってお腹ぺこぺこよ。目の前で自分の作った料理をこんなに美味しそうに食べられたら私も我慢なんてできるわけがない。


「…いただきます!」


 せっかくだから1番好評なねぎまを食べようかな。


「おいしい〜〜〜♡」


 その瞬間、ズキューンと男達のハートを見事に撃ち抜いたような音が聞こえた。


 こんがりと焼かれた肉は柔らかくてジューシーで、塩加減も実に丁度良い。ネギは本当にトロトロで果実のように甘い。私もこれ程までに甘いネギを食べたのは初めてだ。


 空っぽだった胃袋に優しいネギの甘みと香ばしい肉の旨味が一気に染み渡っていくようだ。感じる…私は今、満たされている!!


「か、かわいい……!!」


「天使だ。天使がいるぞ!!」


 満面の笑顔を浮かべながらとても美味しそうに食べるスミレの様子に人々は釘付けになる。


「ごちそうさまでした。あ〜〜おいしかった!…え!?」


 ふと周囲を見渡すと、いつの間にか私の周りに大勢の人集りができていた。


 そこにいた全員が何故か私を拍手で称えている。


「な、なにごとですか?」


「やはりお前は恐ろしい女だな……」


 感心したような素振りを見せながらも若干引き気味にリューが呟く。


「それってどういう意味よ」


「この瞬間、お前の笑顔がここにいる何人かの人生を狂わせたということだ」


「は?意味分からないんだけど」


「だから恐らしいのだ……」


 本人はまだ自分の秘めたる力に気づいてはいない。


 美形揃いの異世界においても、日本のアイドルのカワイイの前には全く歯が立たなかったことを。


 ジャパニーズカワイイカルチャー。かわいいは国境を越え世界すらも超える。


 そして今、証明された。


 かわいいは最強なのであると。


「勝負あったな。全てにおいて我らの勝ちだ」


「…!!」


 突然、店主がムクっと立ち上がりスミレの前にやってくる。


「えと、(もしかして逆ギレ!?勘弁してよー!!)」


 今にも襲ってきそうなほど店主の顔は非常に険しい。


「ちょっ、早まるな!」

「暴力はダメだってば!」

「間に合わねぇ!」


 慌てるカイゼル達だが、集まった人集りに邪魔されてスミレの元へ近づけない。


「スミレちゃん!」


「(やばっ……)」


「お嬢さん、いや、師匠!!」


「はい?……」


「俺を師匠の弟子にしてください!!」


「はぁ!?」


 険しかった店主の面持ちとは一変し、深々と頭を下げ私に懇願してくる。


「今まで、この世で一番美味い串焼きを作るのは俺だと思っていました。だけど上には上がいる。それを改めて貴方に思い知らされた。どうか、俺にもう一度チャンスをいただけないでしょうか!!」


 私より二倍も歳の差がありそうないいと大人が周囲の目も顧みず頭を下げている。その心意気は買うけど師匠とかそういうのは私のガラではない。正直面倒だし。


「すみません。そういうのはちょっと…」


「そこをなんとか!お願いします!なんでもしますから!!」


「なんでも?…」


 それって私の言うことならなんでも聞くってことよね?それなら……ダメよダメ!何言おうとしてんのよ私は。

 魅力的な言葉に魔が刺しそうになるが寸前の所で踏みとどまった。


「無理なものは無理です。諦めてください」


「諦めません!」


「諦めてください!!」


「諦めません!!!」


「だから、諦めてってば!!!!」


 どんなに言っても倍の熱量で返ってくる。これでは押し問答だ。


「いいじゃないかスミレちゃん。少しくらい料理を教えてあげてもさ」


「そうそう。減るものじゃないんだから」


 カイゼル達が賛同すると周囲の人々からそんな空気感が伝わってくる。


「もう、どうしよう……」


「スミレ。面倒ごとに巻き込まれたらどうすればいいか知ってるか?」


「……逃げる?なわけないか。普通過ぎるもんね」


「そうだ。逃げるぞ!!」


「わっ、体が勝手に!?」


 リューが私の体を操り、道を塞ぐ人々を掻き分けていく。


「逃げるって、どこ行くのよ!?」


「知らん。取り敢えず出るぞ!!」


「あ、師匠!待ってくださ〜い!!」


「ごめんなさい!タイプじゃないんで!!」


 そのまま私は流れに身を任せて街を駆けていった。


ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


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少しでも「面白そう!」「続きが楽しみだ!」


などと思っていただけましたら、下↓にある【☆☆☆☆☆】から、

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次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。


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