10、すみにゃんのワクドキクッキング
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「それ、本気で言ってるのか?」
「本気です。私がリューの代わりに料理を作ります」
こうなったらもう引き返せない。やるしかないのだ。
「スミレちゃん。いくらなんでも無茶だって!」
「そうだ。初心者が作った料理で勝てるわけがない」
確かに普通なら私に勝ち目は無いだろう。だってこの人は串焼きで生計を立てているプロだ。そして私はいくらテレビに出てたって所詮はそこそこ料理が作れるだけの素人。
プロには敵わない。でもそれは私の知る世界での話。
「大丈夫です。私、素人じゃないので」
私はカイゼル達に笑顔を見せると厨房に向かう。
「そこにある食材なら好きに使え。俺達は向こうで待っている」
「ありがとうございます」
店主を見送り、厨房に一人なった私は髪を結び気合いを入れる。
「さぁスミレ。腕の見せどころだな」
「やってやるわよ。あんな風に言われて黙ってられるわけないもの」
ここにあるのはさっきも食べた串焼きに使った生肉。見た目はやはり鶏肉のようだ。胸やももといった風にあらかた部位が分かれている。
こうなったらやっぱり作るのはアレしかない。でもそのまま普通に作っても面白くない。
「野菜は付け添えに使っていたキャベツがあるだけ。他に使える食材は……あ、良いのあるじゃん!」
私は隅っこに放置されていたとある野菜を見逃さなかった。
これがあれば種類が作れる。行けるわ!
「それで何を作るつもりだ?」
「そんなの決まってるでしょ。串焼きよ」
「おいおい、同じ物を作るのか?」
「その方が実力の差が分かると思わない?」
「ほう。真正面から潰すつもりということか、面白い」
私だって素人なりにプライドがあるのよ。舐められたばっかりじゃいられないわ。それに使える食材にも限りがあるし、短時間で作るならこれが最善だと思う。
「だが同じ物を同じように作っても結果は見えてるぞ。考えがあるんだろうな?」
「別に」
「なに!?」
「串焼きなんだから、切った肉を串に刺して焼くだけ。やることは変わらないわ」
あまりにもあっさりと言い切る私にリューは疑いの目を向ける。
「我をおちょくってるのか?」
「まぁ見てなさい。2度と私の料理以外で満足できない体にしてあげるから」
さっき私達が食べた串焼きはただ肉を刺して焼いただけ。なんの工夫も無ければ面白味も無くて味もない。
簡単に見える物ほど手間がかかり難しい。料理とはそういうものだ。
それを今から私が証明してあげるわ。
まずは肉を部位ごとに食べやすい大きさに切り分けたら、それぞれ串に刺していく。
「やっぱり殆ど同じではないか!」
「こっからが私の腕の見せどころってやつよ」
スミレは慣れた手つきで肉と野菜を交互に串に刺していく。
「それはなんだ?野菜のように見えるが見たことないな」
「ネギよ」
「ネギ?」
さっき倉庫の隅っこに放置されていたところを見るにこの世界でネギは馴染みの食材では無いみたい。だけど串焼き屋にネギがあるなんてなんか運命じみたものすら感じるわ。
「…その野菜はカレーと同じくらい美味いのか?」
リューもカレーのおかげでちょっとは野菜に興味が出てきたみたいね。
「カレーには合わないかもだけど、ネギはとっても美味しい野菜よ。煮ても良し、焼いても良しの万能食材なんだから」
「ほう?」
「特にネギは火を通すと甘くなるのよ」
「甘くなる!?野菜がか!?」
相変わらず良いリアクションするわね〜。私もちょっとお手本にしたいくらい。
「食べたらきっと驚くわよ〜」
「な、あり得ん。野菜が甘いなどあるわけがないぞ」
串に肉を刺し終えたら、いよいよ味付けね。
焼きとりと言ったらタレか塩。永遠に終わらない論争だけど、私から言わせてみればどっちがいいかなんて決めるのはヤボってもん。好みはそれぞれだしどっちも美味しいから。
因みに私はタレ派だけど、異世界でタレを作るのは難しそう。だってタレには欠かせない醤油が無いもの。
だから味付けは塩一択。でもただふりかけて終わりではない。
「何をしてる。先端の肉に塩があまりかかってないぞ」
「わざとそうしてるのよ」
「意味が分からん。それでは味に偏りが出るではないか」
「お、ドラゴンのくせに良い所気づくじゃない。それが今日のすみにゃんポイント!」
「……いきなり何をしておるのだ?」
カメラも無いのにカメラ目線で決めポーズをする私を顔色ひとつ変えずにリューがこっちを見ている。
「あ、(しまった。ついクセで…)」
気のせいか右肩が急に重くなった気がする。
「じゃあ〜賢い竜王様に免じて教えてあげる!」
地獄のような空気に耐えられず、私は大声を出してリューの気を逸らす。
「いいから教えろ」
「ったく…。そっちの方が味にメリハリが付くからよ」
「メリ、ハリ?なんだそれは?」
リューは聞き慣れないカタカナに首を傾げる。
「要は先端から下にかけて徐々に味を濃くした方が美味しく感じるってこと」
よく焼きとりを食べるときに食べにくいからといって、串から外して食べる時があるけどあれはオススメしないわ。
一度串から外してしまえばどれがどれだか分からなくなってしまうし、それではせっかくの料理を完璧な状態で味わえない。せっかくの串に刺さった料理なのだ。食べにくいのは分かるけど、その食べにくさもまた串焼きの醍醐味だと私は思う。
まぁ、串から抜いても分かるように分けておけばいいだけの話なんだけどね。
「なるほど」
これでなんとかなったかな。
あれも一種の職業病だ。カメラも回ってないのにあんなことしちゃうなんて。あー恥ずかしい…。
「それでさっきのはなんだったのだ?」
「それは忘れて」
何はともあれ味付けも終われば後は焼くだけ。
炭火で火加減に気をつけながらじっくりと焼いていこう。こんがりと肉やネギに焼き目が付けば食べ頃だ。
「これで本当に勝てるのだろうな?」
リューのヤツ、まだ疑ってるのね。
「これで負けたら我もお前も赤っ恥だぞ!我をそんな目に合わせたらどうなるか、分かっているだろうなぁ?」
「…あのさ」
「なんだ?」
「ちょっとは私を信じてよ。だって私はあんたが認めた竜王様の料理番なんでしょ?」
いい加減疑われ続けるのはもう飽きた。
「言うではないか。それでこそ我が認めた料理番だ。あのような人間が作った料理に負けるわけがないな!」
「最初からそう言ってるでしょ」
すると肉の焼けた香ばしい香りが厨房から外へと漂ってくる。
「なんだこの匂い?」
「嗅いだことのない香りだな…」
「だけどなんだか、お腹が空いてきた〜!!」
充満する未知の香りが食欲をそそり、彼らの心を揺さぶりだす。
「いい感じね」
流石の私も炭火でやるのは初めてだったけどなんとか上手くいきそう。
「スミレ早くしろ!我ももう我慢の限界だ!」
ここにも早速香りにやられたドラゴンが今にも暴れ出しそうだ。
「はいはい。もう出来たわよ」
「では早速!」
「待った」
よだれをダラダラ流したリューの口を慌てて塞ぐ。
「んんんんっ!(なんのつもりだ!)」
「気持ちは分かるけど私とリューが食べるのは一番最後」
「んんんふっ!!(いやだ。我が先だ!!)」
「何言ってるか分からない」
ヨダレで手をベトベトにしながらも、なんとかリュー説得させ皿に持った串焼きはカイゼル達のもとに持っていく。
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