第3話 孤立、そして軟禁
いや、元々計画されていたのかもしれない。そうでなければ、一週間で使用人を総入れ替えなどできるはずはないのだ。
しかも私の動きを封じてまでの周到さ加減。私たちはグレッグを、少々侮り過ぎていたらしい。
「ナンをどこにやったのよ!」
一週間前、グレッグに乱暴に抱かれてから倦怠感もあり、私はそれを理由に、部屋に軟禁されていた。新しい使用人たちは、前の使用人たちから何も引き継いでいないらしく、グレッグの言うことしか聞かない者たちばかりで、誰も助けてはくれなかった。
いや、総入れ替えできる宛があるから、グレッグは実施したのだろう。そうであるならば、私の言うことなど聞かないのは当たり前のこと。もう完全にギレッセン公爵家は、グレッグに乗っ取られたのだ。
「あぁ、あの金髪のメイドか。主人と同じで、生意気なことばかり言うのでな。故郷に帰って、頭を冷やした方がいいと薦めてやった」
「ナンに故郷なんてないのよ。それなのに……あなたって人は血も涙もないの?」
あの日のように、グレッグに詰め寄る元気も出ず、私はその場に座り込んでしまった。
ナンは幼い時からずっと傍にいてくれた存在。メイドとしてギレッセン公爵家に勤める前から、親交があった。だから立場が変わっても、私たちの関係は友人に近い。
そんなナンを失って、私はこれからどうしたらいいの? 昔なじみの使用人たちもいない、この邸宅で。
「まさか、フィリスからそんな言葉を聞くとは思わなかったな」
「……えっ?」
どういう意味?
「結婚してからの一年。俺はずっと、そういう扱いをこの邸宅で受けていた」
「……それは、あなたが婿養子だからよ。私は女だから、ギレッセン公爵家を継げない。使用人たちだって分かって――……」
「いない! ギレッセン公爵家の使用人、というのは、それだけで格が違うらしいな。王妃を輩出している家門であるせいか、少し前まで伯爵家の次男だった者が公爵? と始めからなめてかかってきたんだからな」
否定できなかった。私自身もそう思っていたからだ。
初めて会った時の彼は優しかったのに。その優しさを奪ったのは……私だ。私が彼を立てることなどせず、結婚する前と同じように振る舞っていたから、使用人たちもまた、同じ態度を取ったのだ。彼ではなく、私をこの家の主だと。
そして私も、それが当たり前だと振る舞った。
すべて、私が撒いた種。グレッグが愛人を作ることなど、そもそも責める立場ではなかったのだ。だって、すべて私が悪いのだから。
泣き崩れる私を見て、グレッグは何も言わず、部屋を出て行った。
***
だけど嘆いているばかりではいられない。使用人が総入れ替えされたのであれば、私は完全にグレッグの管理下に置かれることになる。
つまり、今と変わらない軟禁生活が待っている、という未来しかないのだ。
「このままじゃダメ」
だからといって、今の私に何ができるの? ナンもいない、この状況で。
「ううん。今だからこそ、できることがあるじゃない」
総入れ替えされた使用人たちは、邸宅にやって来たばかりで、まだ不慣れなはず。この邸宅を誰よりも熟知しているのは、私だけだろう。
グレッグでさえ、一年。一日の半分を愛人宅で過ごしているのだから、十分、出し抜ける……!
「時間を置けば、さらに困難になるわ」
この邸宅を出て行くことが。




