新たな拠点探し 12
私は、味わいながらも、脳内では冷静に分析を進める。
味付けは、塩と、いくつかのハーブが基本。シンプルだけど、素材の味を活かしている感じ。
油は、あまり使われていない。貴重品なのかな?
そして、やっぱり「うま味」の概念は、まだないみたいだ。
(……ふふふ。これは、私の『和食』が炸裂する土壌が、完璧に整っているということじゃないの!)
私のビジネスの可能性に、思わずにやにやが止まらない。
夕食を終え、部屋に戻る。
コロは、すっかり満足したのか、ベッドの上で丸くなって、すーすーと可愛い寝息を立て始めた。
さあ、ここからが、私の本当の仕事の時間だ。
机の上に広げた『ハルモニア商業地図』を、ランタンの明かりが優しく照らし出す。
今日のフィールドワークで得た、"生きた情報"を、この地図の上に書き込んでいく。
中央広場には「富裕層」「貴婦人」「子供連れ」の文字。
ギルド周辺には「冒険者」「筋肉」「酒」。
市場の東側には「主婦」「日常」「コスパ重視」。
(うん、こうして可視化すると、ターゲットとすべき市場が一目瞭然ね)
次に、開業手続きの調査だ。
【異世界インターネット接続 Lv.2】を起動し、検索ウィンドウにキーワードを打ち込む。
『ハルモニア 露店 営業許可』
『商業ギルド 登録方法』
『露店 場所代 相場』
ポチッとな。
Lv.2に進化した検索エンジンは、期待以上に優秀だった。
テキストベースの情報だけでなく、商業ギルドが発行していると思しき、公式の案内書のスキャン画像まで表示してくれる。
(おお、PDFデータまであるとは! やるじゃない、私のインターネット!)
その内容を、ふむふむと読み込んでいく。
なるほど、ハルモニアで商売をするには、まず商業ギルドへ行って、商人としての登録が必要らしい。登録料として、銀貨1枚(1,000リント)。
うん、まあ、登録免許税みたいなものか。妥当な金額だ。
露店の出店には、場所代として一日あたり、場所によって料金が違う、と。
人通りの少ない路地裏なら中銅貨5枚(50リント)から。
そこそこの人通りが見込める広場の端などの『一般区画』なら、大銅貨3枚(300リント)。
そして……一番高いメインストリートの中央広場、その中でも噴水前の『一等地』だと、なんと銀貨1枚(1,000リント)もするらしい。
(高っ! 中央広場の一等地、一日で銀貨一枚!? 1,000リントってことは……日本円で1万円!?)
私の脳内計算機が、驚愕の数字を弾き出す。
(露店の場所代が、一日一万円……? ひと月借りたら30万円!? 前世の都心の一等地にある、小さな飲食店の家賃並みじゃないの!? ただの地面を貸すだけなのに、足元見すぎでしょ!)
だったら、いっそのこと、最初から厨房付きの小さな空き店舗を借りちゃう?
その方が、雨風もしのげるし、なにより落ち着いてジャム作りができる。うん、悪くないかも。
そう思って、私は検索ウィンドウに『ハルモニア 空き店舗 賃料』と打ち込んでみる。
『商業地区 裏通り 木造二階建て(厨房付き):月額 銀貨20枚(20,000リント)』
(……げっ! 月額20万!? 無理無理無理! 秒で破産するわ!)
いや、待てよ。
マーサ院長からもらった餞別の金貨(10万円)と、私の虎の子のポイントをリントに換金すれば……払えない金額、では、ない……?
次回の投稿は、2025/12/29 11:45-12:15頃の予定です。




