ギルド登録と初めてのビジネス 19
夕方のギルドは、午前中よりもさらに人でごった返していた。
私のようにクエストの成果の報告に来た冒険者たちであろうか。
そして、私とコロの姿を認めるや否や、ギルド内のざわめきが、またしてもぴたりと止む。
次の瞬間、あちこちから温かい声援が飛んできた。
「おお! 嬢ちゃん、帰ってきたか!」
「どうだった、初仕事は!」
「怪我はしてねえか?」
(うわ、午前中もすごかったけど、さらに歓迎ムードになってる……!)
午前中にはいなかった顔ぶれも多いのに、どうやら私の武勇伝(?)は、すでにギルド内の冒険者たちの隅々にまで浸透しているらしい。近くのテーブルの屈強なドワーフさんが、連れの人に「おい、あれが噂の……」と肘でつついているのが見える。
(なるほど、このギルドの情報伝達速度、前世のSNS並みね……。私の知らないところで、『魔狼犬を従えし、謎の天才生活魔導士』の伝説が、一人歩きを始めているわけか)
うん、まあ、悪くない! 馬鹿にされるよりは、歓迎される方が百倍マシ。むしろ、この知名度、利用させてもらおうじゃないの!
私は、内心でほくそ笑みながら、スター気取りで(心の中で)手を振り、カウンターへと向かう。
受付には、昼間と同じようにエマさんがいた。
私の姿を見るなり、彼女はぱあっと花が咲くような笑顔になる。
「コトリちゃん! おかえりなさい! 無事だったのね、よかったわ!」
「ただいま戻りました、エマさん。依頼、完了です!」
私が依頼書を差し出すと、エマさんは「お疲れ様!」と優しく労ってくれる。
ああ、癒される。このギルドの唯一のオアシスだ。
「それじゃあ、採取してきた薬草を見せてもらえるかしら? 換金所に案内するわね」
エマさんに連れられて、カウンターの奥にある小さな窓口へ。
そこには、眼鏡をかけた、いかにも「鑑定士です」という感じの、神経質そうなおじさんが座っていた。
「薬草採取の新人か。依頼書と、採ってきたものを出しな」
「はい、お願いします」
私は、四次元バッグに意識を集中させる。
まずは、依頼分の20本から。
『ナイト・グロウ、20本、取り出し!』
ぽん、と。
カウンターの上に、何もない空間から、銀色に輝く薬草の束が出現した。
「「なっ!?」」
エマさんと、鑑定士のおじさんの、驚きの声がハモる。
「こ、コトリちゃん、それ……もしかして、アイテムボックス!?」
「ええ、まあ、そんな感じのものです」
にっこりと微笑んで肯定する。
四次元バッグ、便利すぎる!
鑑定士のおじさんは、あんぐりと口を開けたまま固まっている。そして、カウンターの上に出現したナイト・グロウを見て、さらに目を見開いた。
「こ、このナイト・グロウは……! なんて状態がいいんだ! 葉も茎も、一切傷んでいない! それに、この魔力の瑞々しさ……まるで、たった今摘んできたばかりのようだ!」
おじさんは、興奮した様子で薬草を手に取り、虫眼鏡でじっくりと鑑定を始める。
うんうん、私の丁寧な仕事ぶり、分かってくれますか!
まあ、四次元バッグの中は時間経過が停止するっぽいから、鮮度がいいのは当たり前なんだけどね! 文明の利器、最高!
「素晴らしい! これなら、最高ランクの品質だ! 20本、確かに検品した。報酬は銅貨30枚だな」
「ありがとうございます」
依頼達成の証として、依頼書にスタンプが押される。
よし、これで銅貨30枚ゲットだ。
初めて、自分の力で稼いだお金!
でも、私の本番は、ここからだ。
「あの、すみません」
「ん? なんだ、もう用は済んだだろう」
「実は、依頼分以外にも、少しだけ多く採ってきちゃったんですけど……。こちらも、買い取ってもらえたりしますか?」




