ギルド登録と初めてのビジネス 17
「うわあ……すごい……!」
間違いなく、ナイト・グロウだ。
それも、20本どころか、数百本はありそうだ。
『コトリ! どう? いっぱいあったでしょ!』
「うん! すごいよ、コロ! 君は天才だ!」
私が思いっきり褒めてやると、コロは「えへへー」と照れくさそうに、私の足にすり寄ってくる。
可愛いなあ、もう!
さあ、仕事の時間だ。
私は、四次元バッグから、このために通販で買っておいた『園芸用スコップ(300P)』と『軍手(100P)』を取り出す。
うん、準備は万端だ。
ナイト・グロウを、根っこから傷つけないように、丁寧に、丁寧に掘り起こしていく。
土を払い、枯れた葉を取り除き……。
地味だ。なんて地味な作業なんだ。
一本掘るのに、集中してやっても1分はかかる。
これを20本……いや、目の前の数百本を全部となると……。
考えただけで、気が遠くなる。
前世で、延々と続くデータ入力作業をしていた時の、あの虚無感が蘇ってくるようだ。
二本目を掘り終え、三本目にスコップを突き立てた、その時。
私の堪忍袋の緒が、ぷつりと音を立てて切れた。
「あーもう! 面倒くさい!」
スコップを地面に放り投げる。
なんで私が、こんな土いじりを! 私のスローライフはどこへ行ったの!?
こんな非効率な肉体労働、私の主義に反する!
「もっとこう、一気に、楽して、たくさんゲットする方法はないものか……」
私は、腕を組んでうんうん唸る。
その時、ふと、肩にかけている四次元バッグが目に留まった。
(……待てよ)
このバッグ、段ボール箱みたいな大きなものでも、中身ごと一瞬で収納できた。
あれは、対象物を空間ごと切り取って、バッグの中に転送しているような感じだった。
(だとしたら……もしかして)
地面に生えている、このナイト・グロウ。
これを「対象物」として認識させて、『収納』って念じたら、どうなるんだろう?
周りの土や雑草は無視して、ナイト・グロウだけを抜き取ってくれたりしないかな?
いやいや、まさかね。
そんな都合のいいこと……。
(……でも、試してみる価値はある!)
ダメ元だ。もしできたら、ラッキー。
できなかったら、また地道にスコップで掘ればいい。
私は、目の前に生えている、一番形の良いナイト・グロウに狙いを定める。
そして、四次元バッグに意識を集中させ、強く、強く念じた。
(この葉っぱだけ! このナイト・グロウだけを、私のバッグの中に!)
『収納』!
次の瞬間。
目の前で、信じられない光景が起こった。
スポンッ。
そんな、気の抜けた音が聞こえた気がした。
目の前にあったはずのナイト・グロウが、跡形もなく消え去っている。
しかし、それが生えていた場所の地面には、穴一つ空いていない。
周りの雑草も、苔も、そのまま。
まるで、最初からそこに何も生えていなかったかのように。
「…………え?」
私は、呆然と、その光景を見つめる。
そして、恐る恐る、四次元バッグの収納リストを表示させる。
『ナイト・グロウ x 1』
リストの末尾に、確かに、その名前が追加されている。
取り出して確認してみる。
手の中に現れたのは、完璧な状態のナイト・グロウ。
葉も茎も傷一つなく、そして何より、その根っこには……土一粒、ついていない。
「できたーーーーーっ!?」
森の中に、私の絶叫がこだまする。
うそ、まじで!? 土も掘らずに、根っこごと完璧に取れた!
これ、やばくない!?
「私、天才なのでは!?」
いや、天才なのは私じゃなくて、このバッグを作った誰かだ!
でも、この使い方を発見したのは私だ!
つまり、私が天才ということで間違いない! うん!
笑いが止まらない。
スコップ? 軍手?
そんな前時代的なツールは、もういらない!




