ギルド登録と初めてのビジネス 16
ウィンドウには、ご丁寧に3Dモデルまで表示されている。
くるくると回転させながら、葉の形、茎の色、根元の特徴まで、じっくりと観察する。
うん、これなら見間違えることはないだろう。
「よし、覚えた! これと同じ葉っぱを探すんだ!」
私は、地面に視線を落とし、神経を集中させる。
銀色がかった、ギザギザの葉っぱ……。
銀色がかった、ギザギザの葉っぱ……。
……ない。
いや、ある。ありすぎる!
(うわ、似たような葉っぱ、めちゃくちゃいっぱいあるじゃん!)
森の地面は、多種多様な植物で覆われている。
朝露に濡れて銀色っぽく光る葉っぱもあれば、虫に食われてギザギザになっている葉っぱもある。
ウィンドウの画像と見比べては、「あ、これは違う」「こっちも違うな」と、一つ一つ確認していく。
地味だ。なんて地味な作業なんだ!
『コトリ、どうした?』
私がうんうん唸っていると、コロが心配そうに私の顔を覗き込んできた。
「うーん、この葉っぱを探してるんだけど、なかなか見つからなくて」
私は、ウィンドウの画像をコロに見せるようにしながら、頭の中でナイト・グロウのイメージを強く思い描く。もちろん、コロにはウィンドウは見えていないけど、私の【もふもふテイマー&翻訳】の能力なら、ぼんやりとしたイメージくらいは伝わるかもしれない。
『ふむふむ。銀色で、ギザギザ……』
コロは、何かを理解したように頷くと、くんくんと地面の匂いを嗅ぎ始めた。
でも、お手本となる本物の匂いがないせいか、コロも首を傾げている。
(だめかー。やっぱり、最初の一本は、私が自力で見つけるしかないか!)
気を取り直して、再び地面とのにらめっこを再開する。
前世での、書類の山から目的の一枚を探し出す作業を思い出す。あの頃鍛えた集中力が、今ここで役に立つとは……人生、何が幸いするか分からんもんだな!
そして、10分ほど経っただろうか。
大きな木の根元、苔むした岩陰に、ひっそりと生えている一株の植物が、私の目に留まる。
他の植物とは明らかに違う、独特の銀色の輝き。
ノコギリのように細かく、特徴的なギザギザの形をした葉。
「……あった!」
思わず、声が出る。
ウィンドウの3Dモデルと、寸分違わぬ姿。
これだ! 間違いない!
(根っこからってことだったな……)
私は、四次元バッグから園芸用スコップを取り出し、宝物を掘り当てる考古学者みたいに、慎重に、丁寧に、そのナイト・グロウを根っこから掘り起こした。
土を優しく払い、その銀色の葉を手に取る。
「コロ、これだよ! この匂い、覚えて!」
私は、掘り出したばかりのナイト・グロウを、コロの鼻先にそっと近づける。
土の匂いと、植物の青々しい匂い。そして、ナイト・グロウだけが持つ、わずかに甘く、清涼感のある独特の香り。
コロは、くんくん、と数回匂いを嗅ぐと、全てを理解したように、ぱっと顔を上げた。
そして、自信満々に一声鳴いた。
『わかった! この匂い、知ってる!』
「本当!?」
『うん! 森の奥! いっぱい匂いする!』
なんと!
我が家の相棒、優秀すぎる!
お手本さえあれば、あとはコロの独壇場だ!
「よし、コロ! 案内して!」
『任せて! こっち!』
コロは、嬉そうに尻尾を振ると、白い弾丸のように森の奥へと駆け出していく。
「わ、ちょっと待ってよ、コロ!」
私も慌ててその後を追いかけるが、10歳の子供の足では、コロのスピードには到底追いつけない。
少し進んだ先で、コロはぴたりと足を止め、不思議そうにこちらを振り返った。そして、私が追いつくのを待つと、今度は私の歩調に合わせてゆっくりと歩き始めた。時々、ちゃんとついてきているか確認するように、ちらちらと私を振り返りながら。
(……うっ、賢い! 気遣いまでできるなんて! うちの子、完璧すぎる!)
そんな頼もしいナビゲーターの先導で、私たちは森の奥へと進んでいく。
コロの嗅覚ナビゲーションは、最新のカーナビよりも正確だった。
そこからは、一度も迷うことなく、最短ルートで、ナイト・グロウの群生地へと私たちを導いてくれる。
15分ほど歩いただろうか。
木々の隙間から、少しだけ開けた場所に出た。
そこには、陽の光を浴びて、銀色にキラキラと輝く葉っぱたちが一面に生い茂っていた。




