ギルド登録と初めてのビジネス 13
「おお、帰ってきたぞ!」
「あいつが噂の……!」
私たちの姿を認めるや否や、全ての視線が一斉にこちらに突き刺さる。
その視線には、もう侮りの色は一切ない。
あるのは、驚愕と、畏怖と、そして何より、むき出しの『欲望』。
まるで、金のなる木でも見るような、そんなギラギラした視線だ。
(うわー、面倒くさいことになったー!)
私は、内心で頭を抱える。
目立つのは、ビジネスの基本。でも、目立ちすぎるのは、トラブルの元だ。
特に、私のような、どう見ても非力な子供が、とんでもない価値(金ヅル)を持っていると認識されてしまった今、良からぬことを考える輩が出てこないとも限らない。
(これは、早急に『後ろ盾』を確保する必要があるな……)
私の脳内ビジネスプランナーが、警鐘を鳴らす。
その、一番手っ取り早くて、一番効果的な後ろ盾。
それは、もちろん……。
「コトリちゃん!」
満面の笑みで、カウンターから駆け寄ってくるエマさん。
彼女こそが、私の最初の、そして最強の味方(後ろ盾)だ!
「すごいじゃない、コトリちゃん! ゴードンさんから聞いたわよ! 試験、満点合格ですって!?」
「えへへ、ありがとうございます。エマさんのおかげです」
「ううん、あなたの実力よ! 本当に、本当にすごいわ!」
エマさんは、自分のことのように喜んで、私の両手をぎゅっと握りしめてくれる。
うん、やっぱりこの人、いい人だ。
「さあ、早く登録手続きをしましょう! あなたのギルドカード、私が特別に作ってあげる!」
そう言うと、エマさんは私の手を引いて、再びカウンターの中へと戻っていく。
その道中、冒険者たちが、まるでモーゼの前の海みたいに、さーっと道を開けていくのが面白い。
さっきまで私を馬鹿にしていた連中が、今や恐縮しきった態度になっている。
うん、現金でよろしい! この、手のひら返し感、嫌いじゃないわ!
カウンターで、エマさんは何やら水晶玉のようなものを取り出す。
「コトリちゃん、この水晶に、少しだけ魔力を流し込んでもらえるかしら? ギルドカードを作るのに必要なの」
「魔力、ですか?」
「ええ。ほんの少しでいいわ。手をかざすだけで大丈夫よ」
言われるがままに、水晶玉に手をかざす。
魔力なんて、意識したこともないけど……。
とりあえず、魔法を使う時みたいに、体の中の何かを水晶に送るイメージをしてみる。
すると、水晶玉が、ぽわん、と淡い光を放った。
色は、無色透明な白色光。
「わあ、綺麗な光……。魔力の質がすごく純粋なのね」
エマさんが、感心したように呟く。
(へぇ、私の魔力、純粋なんだ。まあ、中身は煩悩にまみれた28歳OLだけどな!)
この世界の住人は、わからないかもしれないけど、実際は様々な色の光が混ざった結果、白色光に見えているのだよ……。たしか、そうだったはず!
水晶玉の光が、カウンターの上に置かれた、一枚の金属プレートに吸い込まれていく。
プレートの上には、みるみるうちに文字や紋様が浮かび上がってきた。
「はい、できたわ! これがあなたのギルドカードよ!」
エマさんが、誇らしげに差し出してくれたのは、銅色の一枚のカード。
表面には、私の名前『ヤマネ・コトリ』と、ギルドの紋章。
そして、その下には、私の『職業』と『ランク』が刻まれていた。
『職業:生活魔導士/テイマー』
(お、二つも書いてある。なんか格好いい!)
さらに、その横には、なんだかすごい二つ名まで。
『称号:魔狼犬を従えし者』
(魔狼犬!? 私、そんなこと一言も言ってないんですけど!?)
どうやら、コロのあの驚異的な動きを見て、エマさんが勝手に「きっと伝説の魔狼犬に違いないわ!」と判断したらしい。
うん、まあ、いいか。
普通の犬より、そっちの方がハッタリが効いて、トラブル避けにもなりそうだ。
エマさん、グッジョブ!
そして、ランクは……。
『ランク:F』
(うん、まあ、最初は下の方からだよね。知ってた!)




