神様、それは無いと思います 3
真っ白。
目を開けたら、真っ白な空間にいた。
床も壁も天井も、全部真っ白。
境界線が分からないくらい、真っ白。
「ここは……」
あれ? 声が出る。
体を確認する。
ちゃんとある。
頭も割れてない。
血も出てない。
「死後の世界?」
立ち上がる。
体は普通に動く。
痛みもない。
でも、確実に死んだはず。
あの植木鉢の直撃を受けて、生きているはずがない。
「天国かな? でも、天使とかいないし」
きょろきょろ見回すけど、本当に何もない。
ただ、真っ白な空間が広がっているだけ。
「すみませーん! 誰かいませんかー?」
叫んでみる。
すると。
「はい! います! すみません! 本当にすみません!」
突然、目の前に人が現れた。
いや、人?
金髪碧眼の、めちゃくちゃイケメン。
身長は180センチ以上ありそう。
顔は彫刻みたいに整っている。
でも、なんか雰囲気が……チャラい。
白いローブを着ているけど、なんかパーカーみたいにラフに着こなしている。
そして、そのイケメンは……土下座していた。
「申し訳ございませんでした! 本当に、本当に申し訳ございませんでした!」
額を床(?)にこすりつけて、必死に謝っている。
「えっと……あなた、誰ですか?」
「あ、自己紹介がまだでした! 私、神様です!」
顔を上げて、にへらと笑う。
神様?
この、チャラそうなイケメンが?
「神様って、もっとこう、白髪で髭が長くて、威厳があるイメージなんですけど」
「ああ、それはギリシャ神話のゼウス様とか、そっち系の神様ですね。私は、地球の日本エリア担当の、いわば中間管理職の神様です」
中間管理職!?
神様にも、そんな役職があるの!?
「じゃあ、ここは?」
「神界の、面談室みたいなところです。死者の方と、こうしてお話しするための場所ですね」
やっぱり、私、死んだんだ。
「それで、なんで土下座してるんですか?」
神様(自称)は、また土下座の体勢に戻る。
「実は……その……あなた様の死の原因が……私のミスでして……」
「は?」
「あの植木鉢、正確には『ゼウスの盆栽』という神界の植物なんですが、それを私が誤って落としてしまいまして……」
ゼウスの盆栽。
さっき見た、あの巨大な植木鉢。
あれが、神界の植物!?
「なんで、そんなもの落とすんですか!?」
「いや、その、水やりをしていたら、思ったより水を吸って重くなってしまって、移動させようとしたら、手が滑って……」
手が滑って。
手が、滑って!?
「ベランダの柵も、ちょうど修理中で低くなっていて、それで下界に落ちてしまったんです」
言い訳のオンパレード。
しかも、全部しょうもない理由。
「……」
怒りを通り越して、呆れた。
私の28年の人生、神様の不注意で終了。
トラックにひかれるとか、病気とか、せめてもっとマシな死に方があったでしょうに。
いや、トラックもいやだけどね。
でも、植木鉢て。
しかも、神様のミスて。
「本当に申し訳ございません! 責任は全て私にあります! どんな罰でも受けます!」
神様が必死に謝っている。
でも、謝られても、命は返ってこない。
「謝罪はいいです。それで、これからどうなるんですか? 天国? 地獄?」
「いえ! そんなところには行かせません! 私のミスですから、特別措置を取らせていただきます!」
神様が勢いよく顔を上げる。
目がキラキラしている。
「特別措置?」
「はい! 異世界転生です!」
異世界転生!?
さっき、冗談で考えていたやつ!?




