第126話 即採用決定! 優秀すぎる二人組を、破格の好条件でスカウトです!
彼女たちが落ち着いたところで、私は改めて姿勢を正し、にっこりと微笑んだ。
「改めまして、ようこそ『ヤマネコ商会』へ。私が店主のヤマネ・コトリです。コトリと呼んでください」
「あ、はい! 私はリア、こっちは双子の妹のミアです。15歳です!」
ピンク髪の子がリアちゃん、水色髪の子がミアちゃんね。覚えた!
15歳。この世界ではもう立派な働き手なのだろう。
「分かりました。では、いくつか質問させてください。……まず、お家はこの近くですか? ご両親は?」
履歴書がない以上、口頭での身元確認は必須だ。
どんなに良い子そうでも、素性の知れない人を雇うわけにはいかないからね。
「はい、職人街に住んでます。父は家具職人で、母はその手伝いをしています」
リアちゃんがハキハキと答える。
職人街ならここから歩いてすぐだ。通勤に問題はないし、地元の子なら逃げられる心配も少ない(はず)。
「お仕事の経験はありますか?」
「実家のお店番を時々手伝うくらいですけど……でも、接客は大好きです! 市場でお買い物をする時も、ついお店の人と話し込んじゃうくらいで」
リアちゃんが胸を張る。
うん、確かに彼女の明るい笑顔と通る声は、接客向きだ。広場での客引きも任せられそう。
「ミアさんはどうですか?」
私が水を向けると、ミアちゃんは少し照れくさそうに口を開いた。
「私は……リアほどお喋りは得意じゃないです。でも、細かい作業とか、計算は嫌いじゃありません」
「計算?」
私はピクリと反応した。
商売において、計算能力は生命線だ。この世界、電卓なんて便利なものはないのだから。
まあ、いざとなったら通販でポチって使ってもらうけど、それでも簡単な暗算ぐらいは出来てほしい。
「じゃあ、ちょっと質問です。ジャムが一つ大銅貨2枚。クッキーが一つ中銅貨5枚。お客さんがジャムを2つとクッキーを3つ買いました。代金はいくら?」
私が即興で問題を出すと、ミアちゃんは一瞬だけ宙を見て、即答した。
「大銅貨5枚と中銅貨5枚です」
「……お釣りは? 銀貨1枚預かりました」
「大銅貨4枚と中銅貨5枚です」
速い。
「すごいわ、ミアさん! 正解です!」
「えへへ……。父の仕事の帳簿付けを手伝ったりしているので、数字には慣れてるんです」
これぞ、求めていた人材だ。
接客が得意なリアちゃんと、正確な事務処理ができるミアちゃん。
凸凹コンビに見えて、これ以上ないほどバランスが取れている。
(……決まりね)
私は、大きく頷いた。
他に応募者もいないし、何よりこの二人は私の店のファンだ。これ以上の人材は望めないだろう。
「合格です!!」
私が高らかに宣言すると、二人は顔を見合わせて、手を取り合って喜んだ。
「やったー! ミア、合格よ!」
「……うん。よかった……」
「ぜひ、ヤマネコ商会に来てください! まずは一ヶ月の試用期間ということで、明日から働けますか?」
「はいっ! もちろんです!」
「条件は貼り紙の通りです。良い仕事には、良い対価を。それが私のポリシーですから」
私は胸を張って答える。
ブラック労働は、私のスローライフの敵だ。従業員には潤沢な給与を払い、高いモチベーションで働いてもらう。それが結果的に、私の安眠に繋がるのだ!
「その代わり、少し忙しくなるかもしれないですよ? 私たちの目標は、このハルモニアで一番愛されるお店になることですから!」
忙し過ぎるのは嫌だけど、スローライフのためには、まずは稼がなければいけないのだ。
私の言葉に、リアちゃんとミアちゃんは真剣な表情になり、そして、キラキラとした笑顔で答えた。
「はいっ! 頑張ります、店長!」
「……ふつつか者ですが、よろしくお願いします」
二人の採用が決まり、ホッと一息ついたところで、私はずっと気になっていた疑問を口にする。
「……ところで、お二人に聞いてもいいですか?」
「何ですか?」
「こんなに条件が良いのに、どうして、これまで誰も来なかったのでしょう? てっきり、何十人も並ぶかと思ったのですが」




