第121話 思い出の家具を全消去! 震える地縛霊「この子魔王なの!?」
寝室用には、これ!
『北欧風 天然木ベッドフレーム(セミダブル・収納付き) 35,000P』
『高級ポケットコイルマットレス(セミダブル) 25,000P』
『最高級羽毛布団セット(掛布団・枕・各カバー付き) 15,000P』
『とろける肌触り ボックスシーツ(セミダブル) 3,000P』
『吸湿発熱 あったか毛布 4,000P』
『遮光カーテン(ミントグリーン) 5,000P』
寝具は完璧。これで安眠は約束されたも同然だ。
続けて、広間用の快適グッズもポチる。
『人をダメにするビーズクッション(特大) 12,000P』
『北欧風 ローテーブル(ウォールナット) 8,000P』
『ふかふかシャギーラグ(アイボリー) 6,000P』
(あ、コロのベッドも忘れずに!)
『最高級ペット用ベッド(低反発・洗えるカバー) 4,000P』
欲しいものを全てカートに放り込み、購入ボタンをポチッ!
『ご購入ありがとうございます。配送を開始します』
ズズズズンッ!
何もない部屋に、巨大な段ボール箱の山が出現する。
普通ならここからの組み立てと配置が地獄だけれど、私には魔法がある。
「開封! 組み立て! 配置!」
私が指揮者のように指を振ると、段ボールが弾けるように開封され、中から現れた家具たちが、するすると所定の位置へと収まっていく。
南側の寝室には、木の温もりを感じるベッドフレームと、ふかふかな布団セット。窓辺には爽やかなミントグリーンのカーテンが揺れる。
広間には素足でも気持ちいいアイボリーのラグが敷かれ、その中央に一度座ったら二度と立ち上がれないビーズクッションと、お洒落なローテーブルが鎮座する。
「かんせーーーい!!」
殺風景だった廃屋の二階が、ものの数分で「現代日本風・お洒落女子の部屋」に生まれ変わった。
異世界情緒? 知らんわそんなの! 自分の家くらい、文明の利器に囲まれて暮らしたいのだ!
『わーい! ふかふか!』
コロが、自分専用のベッド……
……ではなく、私のビーズクッションにダイブして、気持ちよさそうに埋もれている。
まあ、可愛いから許す!
北側の部屋はまだ空っぽのままだ。
在庫置き場にしようかとも思ったけど、いちいち商品を二階まで運ぶのは非効率だしね。
孤児院のみんなが遊びに来た時のゲストルームにするか、あるいは通販で買いまくった服を並べるウォークインクローゼットにするか……。
ま、狭いワンルーム暮らしだった前世からすれば、『使わない部屋がある』ことこそが最高の贅沢よね!
「よし……これなら、今日からでも住めるわね」
私は満足げに頷く。
宿屋は一週間分前払いしてあるけれど、せっかく自分の住居を手に入れたのだ。一日でも早く、このふかふかベッドで眠りたい。
「コロ、一度宿屋に戻るよ。引き払ってこよう!」
◇
時間は少し遡る。
魔法の光と共に、古い家具たちが一瞬で消滅し、全ての部屋が完全な空っぽ状態になり、「よし、スッキリ!」と 満足げに頷くコトリ。
しかし、彼女は気づいていなかった。
その部屋の隅――天井の梁の陰で、半透明の影が、消滅した家具たちを見て絶望の表情を浮かべていたことに。
(あ、ああぁぁぁ……!! 夫との思い出の椅子がぁぁ! 嫁入り道具のタンスがぁぁ!!)
それは、かつてこの店を切り盛りしていた女将の霊だった。
彼女は8年間、この店を守るために(そして侵入者を驚かして追い払うために)、必死にポルターガイスト活動を続けてきた。
それなのに。
今日入ってきたこの小さな侵入者は、驚くどころか、一瞬で彼女の「思い出」であり、怪奇現象ポルターガイストに不可欠な「武器(家具)」を、跡形もなく消し去ってしまったのだ。
(な、なんなのこの子……! 魔王!? 魔王なの!? 怖すぎて近寄れないじゃない!)
女将の霊は震え上がり、さらに小さく縮こまって、気配を消すことに全力を注いだ。
これが、コトリと地縛霊とのしばしの「奇妙な同居生活」の始まりだったのだが――もちろん、コトリは知る由もない。




