第120話 劇的ビフォーアフター! 生活魔法で廃墟を新築同様にしました
コロが大人しくお座りしたのを確認し、私は脳内で最強のイメージを固める。
ターゲットは、視界に入る全ての「汚いもの」。
「まずは、お掃除から! 塵一つ残さず、原子レベルで消え去れ! ……《清浄》ッ!!」
私の手から放たれた光の波が、爆風のように室内を駆け巡る!
その光が触れた端から、積もりに積もった埃が、こびりついたカビが、そして散乱していたゴミの山が、まるでフォトショップの消しゴムツールで消されたかのように、シュワワワ……と光の粒子になって消滅していく。
はい、スッキリ!
でも、驚くのはまだ早い。
汚れが消えても、壊れた家具や割れた窓ガラスはそのままだ。
次は、時間を巻き戻そう!
「新品同様に戻れ! ……《修復》ッ!!」
カシャカシャカシャッ!
室内に、小気味よい音が響き渡る。
床に散らばっていた窓ガラスの破片が、「あ、やべっ、戻らなきゃ!」と意思を持ったかのようにひとりでに舞い上がり、窓枠へと戻ってピタリとくっつく。ヒビ一つ残らない完璧な仕事!
蝶番が外れて傾いていたドアが、ガチャンと音を立てて正常な位置に収まり、腐って穴が開いていたカウンターや床板は、早回しの植物の成長映像みたいに、新しい木材へと再生されていく。
そして、とどめの一撃。
飲食店の天敵、Gを含む全ての害虫への宣戦布告だ。
「この領域への害虫の侵入を禁ず! 結界展開! ……《防虫》ッ!!」
目には見えない波動が、建物を包み込む。
これで、ネズミもゴキブリも、この店には入れない。鉄壁の要塞完成!
所要時間、約1分。
目の前に広がっていた廃墟は、新築……とまではいかないけれど、アンティーク調の味のある、ピッカピカの清潔で美しい建物へと生まれ変わっていた。
「……ふぅ。ミッションコンプリート!」
私は満足げに息を吐き、ドヤ顔で何もない空間に向かってVサインを決める。
まあ、生活魔法レベル99だけどね!
さて、ここからが本番だ。
建物は整った。次は中身を、私好みの快適空間に書き換える作業だ!
まずは、これから私が寝起きする二階の居住スペースから。
階段を上がると、そこには予想以上に広い空間が広がっていた。
「へぇ、結構広いのね。部屋が3つもある」
階段を上がってすぐの場所は、ちょっとした広間のようになっている。
その奥には、通りに面した明るい部屋と、北側の少し小さな部屋。さらに、廊下の天井には収納式の梯子があり、そこから屋根裏部屋にも上がれるようだ。
元々、店主一家がここで暮らしていたのだろう。家族で住むには十分な広さだ。
(ふむ。一番日当たりの良い南側の部屋を私の寝室にして、北側の部屋は在庫置き場か客間にしましょうか。広間は……まあ、くつろぎスペースね)
私は二階の全ての部屋と屋根裏部屋に残された、古びた家具と雑貨に向かって手をかざした。
「悪いけど、さようなら! ……《廃棄》ッ!」
シュンッ!
魔法の光と共に、古い家具たちが一瞬で消滅し、全ての部屋が完全な空っぽ状態になった。
「よし、スッキリ!」
何もない、広々とした木の床。
ここを、私の快適空間にするのだ。
私はウキウキしながら【異世界インターネット接続】のウィンドウを開き、通販サイトの「家具・インテリア」カテゴリをタップする。
(ふふふ……予算はある。妥協はしないのだ!)
私は、前世で憧れていたけれど、狭い賃貸マンションでは置けなかった家具たちを、次々と検索していく。




