森のソロキャンプと運命のもふもふ 6
チュンチュンという鳥の鳴き声で目が覚めた。
「んー……あと5分……」
寝袋の中でもぞもぞと寝返りを打つ。
ふかふか暖かくて、出たくない。
って、待って。
鳥の声?
私の部屋、6階だから鳥の声なんて聞こえないはず……。
「あ、そっか。異世界か」
がばっと起き上がる。
テントの中。
寝袋の中。
夢じゃなかった。
本当に異世界に来たんだ。
「うーん、よく寝た」
伸びをする。
体が軽い。
28歳の時は、肉体労働した翌朝起きると体のあちこちが痛かったのに。
10歳の体、すごい。
回復力が違う。
テントのファスナーを開けて、外に出る。
朝の森は、キラキラしていた。
朝露が葉っぱについていて、朝日に照らされて宝石みたいに光っている。
「きれい……」
深呼吸する。
空気が美味しい。
都会の排気ガス臭い空気とは大違い。
肺の奥まできれいになる感じ。
「さて、朝の準備」
まず、顔を洗いたい。
でも、水がもったいない。
あ、そうだ。
「《清潔》!」
顔がすっきりする。
歯もつるつるになった。
魔法、便利すぎる。
朝ごはんは、パックご飯とレトルトカレー。
朝からカレーは重いかなと思ったけど、他に選択肢があまりない。
缶詰もあるけど、ご飯のおかずにはならないし。
「《調理》!」
今度は、材料を目の前に用意して、出来上がりをイメージしてから唱えてみる。
すると……。
パックご飯が勝手に開封されて、ふっくらと炊き上がった状態になった。
レトルトカレーも、最適な温度に温められている。
「おお! 電子レンジいらず!」
お皿に盛り付けて、いただきます。
朝カレー、意外と悪くない。
スパイスで目が覚める感じ。
食後のコーヒーを飲みながら、今日の予定を考える。
「まず、水源の確保。それから、森の地理を把握して、食べられるものがないか探す」
ペットボトルの水は、あと10本。
大事に使っても、一週間が限度。
川か、湧き水か、何か水源を見つけないと。
「よし、探索開始!」
四次元バッグに必要なものを詰める。
空のペットボトル2本(水を汲めたら用)、10徳ナイフ、救急セット、お菓子(おやつは大事)。
「うーん、森の中は、昼間でも暗い場所があるかもしれないな。洞窟とか」
そう思うと、ランタンだけでは心許ない。
「そうだ、こういう時の通販だ!」
再び【異世界インターネット接続】を開き、通販サイトで『ヘッドライト』を検索。980Pのものを即購入。
目の前にぽん、と小さな箱が現れる。この即時配送、本当に便利すぎる。
ヘッドライトも四次元バッグに詰める。
これで準備万端だ。
「《マーキング》!」
なんとなく唱えてみたら、テントが薄く光った。
おお、これで帰る場所が少しわかりやすくなるかも。
生活魔法、本当に何でもありだな!
◇
森の中を歩き始める。
といっても、完全にあてずっぽう。
水の音がする方に……って、聞こえない。
「うーん、川とか、どうやって探せばいいんだろう」
とりあえず、地形的に低い方に向かってみる。
水は低いところに流れるはずだし。
でも、森の中だと、どっちが低いのかよく分からない。
「あ、そうだ。地図機能があったじゃん」
【異世界インターネット接続】の地図を開く。




