第114話 売上計算でニヤニヤ。三日で銀貨90枚の大勝利!
リックは普段、市場での荷運びや、建築現場の手伝いといった日雇いの仕事をして、孤児院の家計を支えている。
定職ではないけれど、その分融通が利くし、何より彼には、肉体労働で鍛えた体力と根性がある。私の商会にとっても、得難い人材だ。
「……おう、分かった。ま、せいぜい変な物件掴まされないように気をつけるんだな」
「心配性ですねえ。では、またです!」
リックは手をひらりと振ると、夕暮れの街へと消えていった。
その足取りは、来た時よりも少し軽く、誇らしげに見えた。
さあ、私も部屋に帰って、勝利の美酒 (ジュース)で乾杯といきましょうか!
◇
『木漏れ日の宿』に戻った私は、直行で自室へと雪崩れ込んだ。
コロは「仕事は終わった!」とばかりに、部屋の隅にある専用のクッションへダイブし、即座に丸くなる。お疲れ様、営業部長。
私は、鍵をしっかりかけたことを確認してから、ベッドの上で四次元バッグの口を下に向けた。
そして、意識を集中して念じる。
『三日間の売上硬貨、全排出!』
次の瞬間。
ザラララララ……ッ!
バッグの口から、まるで滝のように硬貨が零れ落ち、この世で最も美しい金属音を響かせながら、ベッドの上に銀色と銅色の小山を築き上げた。
「……ふふっ、壮観ね」
私は手早く硬貨を種類別に分け、計算を開始する。
元OLの経理スキルが火を吹く! って数えてノートにメモして足し算するだけだけど!
本日の売上内訳。
『妖精の宝石ジャム』:単価・大銅貨2枚(200リント) × 100個 = 銀貨20枚(20,000リント)。
『森の恵みクッキー』:単価・中銅貨5枚 (50リント)× 100袋 = 銀貨5枚(5,000リント)。
『安らぎのハーブティー』:単価・中銅貨5枚 (50リント)× 100袋 = 銀貨5枚(5,000リント)。
締めて、一日あたりの売上総額――銀貨30枚(30,000リント)。
三日間で、銀貨90枚(90,000リント)。日本円にして、約90万円。
(ふっふっふ……! 三日間で90万! 露店デビュー戦としては、大金星じゃない!?)
そこから経費を引く。
場所代:銀貨1枚×3日=銀貨3枚。
リックへの報酬:銀貨1枚×3日=銀貨3枚。
材料費と資材費:通販と卸問屋での仕入れ値を合わせても、銀貨10枚程度。
純利益――銀貨74枚(74,000リント)。
「たった三日で、これだけの利益……」
私は、山の中から銀貨を1枚つまみ上げ、夕日にかざしてみる。
これが『商売』だ。
付加価値をつけて売る。それができれば、お金はこうやって生まれる。
「さて、と……」
私は、銀貨を四次元バッグにしまいながら、今日、行列の中にいた二人の少女のことを思い出す。
ピンクと水色の髪をした、まるで双子のように顔立ちがそっくりな、可愛らしい二人組のお客さん。
彼女たちは、私の商品の価値を正しく理解し、目を輝かせて喜んでくれた。
礼儀正しくて、品があって、何より華があった。
(……あんな子たちが『看板娘』だったら、お店の雰囲気ももっと明るくなりそうね)
リックも頑張ってくれているけれど、やっぱりお店には「華」が必要だ。
もし、店舗を構えることができたら……あんな素敵な子たちをスカウトできないかな。
ま、まだ店舗も決まってないのに考えても仕方ないか。
「……何はともあれ、今は、勝利の美酒で乾杯しましょ!」
美酒といっても、未成年だからもちろんジュースだけど!
……って、そういえば前世では大人になってもお酒は苦手で、いつも宴会ではウーロン茶かジュースだったっけ! 異世界に転生しても、やることは変わらないわね!
私は通販で買っておいた高級オレンジジュース(果汁100%)を取り出し、コップに注ぐ。
「ヤマネコ商会の未来に、乾杯!」
一人で掲げたコップの中身を、一気に飲み干す。
五臓六腑に染み渡る甘酸っぱさが、今日の疲れを癒やしてくれるようだ。
足元では、部屋に戻ってすぐにクッションで寝てしまっていたコロが、いつの間にか目を覚まして『僕も! 僕も!』と尻尾を振っている。
はいはい、コロには特別に、お肉大盛りディナーを追加であげるからね。
こうして、怒涛の三日間は終わった。
でも、これはまだ始まりに過ぎない。
私の快適なスローライフ(のための資金稼ぎ)は、まだ始まったばかりなのだから!




