リサ、¥9,000,000の覚悟
老竜通信で明らかになった封印の真実。
シルクの犠牲が里を一時的に守ったが――敵の影は迫る。
雨が上がった。だが、空気は死んでいた
——瓦礫の隙間から腐った果実の匂いが、里を侵している。
「前回の偵察と老竜の通信で、里の全貌はほぼ掴めた。
……だが、最悪だ。」
「ナナ、シルクが中央神殿に組み込まれて、
土地の価値はどの程度回復した?」
《土地回復:進行度 38% 》
《竜族 戦闘力:+30%》
「そんなもんか」
「ミチル、新しいスキル」
《スキル解放:土地同調》
「おっ……さすがナナだ。土地を回復できるのか?」
「うん、でも……一時的。
信仰ポイントを消費するから、無限には無理」
「もう一声欲しいな」
俺はスマホでアプリを検索する。
「おっ、アプリで使用できる起爆剤がセール中だ。
リサ、買い占めろ」
「待って、何で私なの??」
ミナは勇者パーティー追放直後で、
価値にデバフがかかってるんだ。
一方、リサは光結晶の欠片持ち帰りで
ギルド評価爆上がり中だぜ」
「うっ、起爆剤ってこれのこと?」
《タイムセール中》
起爆剤 1枚 ¥50,000 → ¥30,000 在庫300枚限り
「そうだ、全部買え! 時間が無い」
「嘘でしょ。借金記録更新しちゃう!」
「300枚で¥9,000,000――
リーズナブルなお買い得価格だ。
里の英雄になれるぞ!!」
「ははっ……」
リサは泣き笑いの表情を浮かべ、
指先を震わせながらスマホを睨む。
「承認ボタンは真ん中をクリックだ」
「知ってるわよ、それぐらい!」
リサは勢いよく指先をタップした。
ミナは隣で堪えきれずげらげら笑いだす。
画面の『承認完了!』が、まるで借金の鎖のように輝いていた。
「聞いたかガルメス、追加で¥9,000,000だ」
「成功報酬だと言っている!!」
(老竜ヴェルザンも食わせ者だと思うが、
こいつはもっと直接的に嫌な奴だな。
ヴェルザンは涙竜のことばかり話して、
こいつのことは“息子”と呼ばなかった――入り婿なんだ。
だから焦って自滅を繰り返す)
「酷なことを言うが、里の構成比を聞くと、
戦闘に回せる竜は200、
動員できて300頭程度だったはずだ。
重傷竜のほとんどは、
戦闘経験のない女子供じゃないのか?」
「ぐっ……里が無くなるかの瀬戸際なのだ。
やむを得なかった」
俺は深く息を付いて、気持ちを切り替える。
「作戦はこうだ。
リュナとリュオは空中監視と対空に回ってくれ。
ナナはテラリンクだ。成功すれば竜族の群れが生き返る」
「任せて。
神獣の信仰値で黙らせてやる」
「ミナ、君は起爆剤を分かりにくく配置してくれ。
雨上がりだ。湿気を避け、被害が集中する場所に罠を仕掛けろ。
リサ、いずれ親玉が現れる。
正面の突破役は任せた。残価剣は空中にも放てるだろう」
「了解っ!」
「俺はこの陣の維持と、
もし“涙の核”が出現したら奪取する」
「どこかに隠しているんじゃないの?」
「俺だったら猪突猛進してくる、ガルメスを尻目に
”涙の核”を持って里を急襲する」
「ああ…」リサはちらりとガルメスを見ると
鬼の形相の語壁竜と目が合ってしまった。
「ヤバっ」
俺は構わず先を進める。
「いいか、通信と索敵を切らすな。
五分でも多く時間を稼げれば、被害は減る」
「わかった。センサーは常時オン。
異常があれば即通報する!」
里の者たちが、手際よく――いや、必死に動き出す。
古い旗を武器代わりに束ね、灯油を入れた壺を瓦礫の陰に配置。
竜たちの息づかいが、里全体を震わせていた
重症の女、子供たちは老竜に預けられ、
その老竜達も地下の洞窟に移される。
「一つだけ忠告だ」
俺は低く告げた。
「“涙の核”が涙竜の遺品で、奪うことは可能だが、
封印の安定を計る力が、逆に暴走する懸念がある」
黙り込む瞬間、空が遠くで鳴る。
風が変わった――敵が集結しつつある。
「私も罠を仕掛けて回るよ!」リサが叫ぶ。
双子の風竜が頷き、
ガルメスの低い唸りが里を震わせる。
斥候が消えたことで少し警戒されたかも知れない。
地上部隊まで集結させるなら少しは余裕があるだろう。
借金9Mで里救う作戦、リサの熱い覚悟(笑)
次回は本格戦闘開始!




