価値審判モード:起動
偽装ダメージでリサの借金倍増!
ナナの咆哮で介入開始
――礼拝堂に重苦しい沈黙が落ちた。
蝋燭の炎が微かに揺れ、剣の鞘から低く響く息遣いが、
俺の鼓動を掻き乱す。――この偽装、絶対に暴く。
ナナが叫ぶ。
「違う! 偽装じゃ価値は築けない! あんたの言葉は嘘ばっかり!」
直後、スマホに通知が走る。
《価値偽装履歴:神獣ナナ → 魔獣登録》
《勇者認定条件:極大魔獣封印/価値制圧成功》
《勇者ジン:価値偽装検出》
真価:−8,000,000 弱点:糾弾恐怖/神獣への偽装
「……お前、ナナを仲間だと思わなかったのか?」
俺の言葉に、勇者の瞳が揺れる――
一瞬の隙に、礼拝堂の空気が、針のように鋭く張り詰める。
勇者は目を伏せ、なお言い張る。
「秩序のためだ。神獣は価値を乱す存在。
魔獣として処理するしかなかった」
ナナが涙を滲ませて叫んだ。
「違う! 私は秩序の神に生み出された!
森羅万象の価値を定義するために!」
「ふん、価値とは秩序だ。 お前らのような“観測者”が
価値を定義し始めれば―― 世界は、また崩れる」
俺は一歩踏み出す。
「なら、ここで“価値審判”をしよう」
《価値審判モード:起動》
《対象:勇者/観測者ミチル》
《審判条件:真価の開示/契約者の証言》
ナナが告げる。
「私はミチルの借金を減らした。シルクは仲間を守ろうとした。
それが価値だよ。数字じゃない」
勇者の剣が震える――審判の光が、柄に微かなひびを入れる。
「……価値は語るものじゃない。示すものだ」
「やってみろよ!」
俺はスマホを掲げた。
刹那、赤い警告が走る。
《偽装ダメージ:2,000,000》
床に亀裂が走り、俺の胸が凍る。
二百万――桁違いの負荷。
勇者ジンは剣を下ろし、今度はリサを見据えた。
閃光の刃が走り、リサは間一髪でかわした様に見えた。
だが次の声に、血の気が引いた。
「どうだ、リサ。一撃でお前の借金が倍になったぞ」
剣先から数字の奔流が迸る
――赤黒い霧のように渦巻き、リサの目の前に“−200万”の文字が浮かぶ。
霧が彼女の肌に染み込み、契約書の端が、ぱちぱちと燃え上がる。
偽装ダメージ。
虚構の斬撃。
だが恐ろしいのは
――それを信じた瞬間、現実へと変わることだった。
「そ、そんな……!」
リサの足元で契約書が燃え上がり、借金の額が膨れあがっていく。
痛みはない。だが、胸を締めつけられるような息苦しさが襲う
――リサの瞳に、偽りの数字が、鏡のように映る。
彼女の息が乱れる。
「これが俺の力だ。戦う必要などない。
ただ“信じさせる”だけで、相手の価値は壊れる」
勇者は冷たい笑みを浮かべた。
「お前の残りの価値は、もう紙切れ同然だ」
ジンの冷笑に、リサは奥歯を噛みしめた。
俺の指先は震えていた。
借金が増えるイメージが頭をよぎるだけで、胸が締めつけられる。
数値は嘘でも、感じた恐怖が本物になってしまう。
ジンの声が重なる。
「お前はもう、立ち上がれまい。
秩序の剣は、お前の価値を灰にする」
再び剣が掲げられた瞬間――ナナが牙を見せ咆哮した。
「違う! 秩序を偽装で語るな!」
スマホから光の帯が伸び、ジンを檻のように囲った
――光が礼拝堂全体に広がり、
蝋燭の炎を飲み込み、影を切り裂く。
《語り介入開始》
偽装値 2,000,000 → 1,650,000
ジンの瞳が揺らぐ。
数字が、わずかにだが削れた。
「こんなものっ」
勇者の剣がきらめき、床に亀裂が走る――
ズズン! と地響きが響き、光の檻が軋む。
「むふぅぅぅ」ナナが苦し気に息を付き、
スマホには血のような赤い数値が浮かんだ。
――《介入反動:ナナ耐久 −500,000》
信じた瞬間、偽装は現実になる
──《価値偽装》《真贋眼》との組み合わせは最強最悪。




